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第67話 賭け

学校。教室での休み時間。

陣内の机の回りには人だかり。友人のイケメン軍団。

それをさらに取り囲むように女子も数人立っている。


告白されるも全て振ってしまう陣内に、みんなワケを聞いていたのだ。


「へぇ。アラタ、ロドーのことが好きなの?」


ワケを言ったは良いが、すぐに声に出す一人の友人。

陣内は慌てて止めた。


「オイオイ。声デケーよ。……まぁ憧れちゃうよな。頭もいいし、美人だし」


友人にしてみれば、取り柄だらけの男がジッとしているのがもったいなかったのだろう。

手を伸ばせば簡単に手が届くのではないか?

彼らは陣内の為に行動に出た。


「おーいロドー」

「アッちゃーん」


そこには陽太と遼太郎と結と楽しそうに話している路道明日香。

声に気づいて顔を向けてきた。


「なに?」


「ちょっとこっち~」

「キャモ~ン」


「お、おい、止めろ!」


明日香は席から立ち上がり、人を割って呼んだ男達の前に立った。

陣内は息を飲む。


久しぶりで見れば、やはり美しい。近くで見ればなおさら。

彫刻のようなスタイルなのだ。


「ん? どーしたの? お菓子?」


「オイオイ。食いしん坊さんだな。だいぶ」

「ロドー、こいつのこと知ってる?」


と、親指で陣内を指差した。


「うん。知ってるよ。陣内アラタくんでしょ? 学年順位もトップクラスだし、この前の体育でサッカーが凄かったってヒナタが言ってた。空中にバンバン飛ぶし、シュートのキレがハンパ無くて手を痛くしたって。最近変えた髪型もカッコいいと思うよ」


その言葉に陣内は胸が熱くなる思いだった。

自分の事を知っていてくれている。興味を持っていてくれている。

つい満足のため息が漏れてしまう。


仲間たちは、勝ちを確信した。

敵は浅川陽太。彼らにしてみれば吹けば飛ぶような冴えない男。

それが自分たちですら憧れる、全身取り柄を着ているような男に惚れないわけがない。


「そう。けっこうイイ男だろ?」


そう水を向けると、明日香も


「そーだね~」


との返答。友人達はニヤリと笑った。


「浅川なんて忘れてアラタと付き合ったら?」

「え?」


余りにも早急すぎると陣内は慌てた。


「おいおい、ロドーさんになんてこというんだよ。失礼だろ? 急にそんな……。ねぇ……」


「まぁ、ヒナタもイイ男だし。負けてないと思うよ?」


明日香の言葉に、陣内も思わず失笑。


イケメン軍団たちは大爆笑した。

こんな美女が恋は盲目。

ギャップが凄過ぎた。


「ヒーヒー。比べ物になんねーだろ~」

「こっちは頭の出来も違うし、スポーツも万能なんだぜ?」


「ヒナタだってイイ男だもん! 小学生の時、書道で銀賞もらったもん!」


笑いが一時止まる。


「すげぇ! 銀って、金じゃねーのかよ!」

「せめて金だろ~」


男たちの大爆笑に対して火に油。

きったカードがかすりもしない。それを今だすのかといったところ。


明日香もなぜ笑われているのか分からないように怒った。


「うーもう! じゃぁ、勝負だね」

「え?」


「今度のスポーツテストで100m走のタイムが早かった方と付き合う。これでどう?」


条件が提示された。


陽太は書道銀賞の男。陣内は世界トップクラスの運動能力の男だ。

それが100m走で競争。


回りも陣内も呆れると明日香は自信満々な顔をした。


「どーよ」

「はは。いーよ。絶対だよね?」


「うん。絶対」

「じゃぁ」


陣内はサラサラとメモ用紙に書いたものを明日香に見せた。明日香はそれを手に取って読み上げる。


「私、路道アスカは今度のスポーツテストの100m走に於いて、浅川ヒナタと陣内アラタの早かった方と付き合います」


陣内の回りが面白そうにどよむ。

口約束では言った言わないになる。陣内は抜け目なく文章に残す手段に出たのだ。


「はい。これにサインして」


陣内は自分のペンを持ち変えて明日香の方に向けた。明日香はそのペンを取り


「ちょっと待って。文章に付け加える」


そう言って文章に続きを書いた。


「負けた方は非をもらさず、二度と付き合いたいとはいいません」


「私もサインするから陣内くんもサインして」

「お、おう」


二人はお互いにサインをかわした。


「絶対! 勝つから! 見ててね!」


そう言って、彼女は仲間が待つ席に戻って行った。

陣内も友人達も喜んだ。


「よかったな~。勝ったも同然だな」

「わざとじゃね? 別れる口実みてーな」


「うん。そうかもね! みんなありがとう!」

「スポーツ大会終わったら祝賀会やろうぜ。な」


「うん。楽しみだ」


そう言いながら陣内は、陽太と話をしている明日香の後ろ姿を見ていた。


もうじき明日香が自分のものになる。

順風満帆であることに喜びを隠せなかった。

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