表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/189

第6話 興味がある

明日香は腕組みをして考え出した。


「ふむ。この世界を見物するにはそれなりの現在の知識が必要なようじゃのう」


「あれ?」

「なんだ」


「神のような叡智があるのに分からないんだ」


陽太がここぞとばかりに笑ってやろうとバカにした口調をすると


「貴様!」

「わ! 口から火が!」


明日香の口から輝く灼熱が吐き出されたが、持ち前の敏捷性でうまくかわした!


「いくら余が万能といえども、足下たちのような下等な毛虫の如き者どもの気持ちが分かるか!」

「そ、そうか」


普通に恐ろしい力を持っていた。馬鹿にするもんじゃないなぁと陽太は若干震えた。


「そーだ。足下は昼間はどこに行くのだ?」

「え? 学校」


「学校のう。あい分かった! その人獣が集う社交場に行ってみようではないか!」

「え!?」


「フフフ。明日が楽しみじゃ。そーかそーか。そういうところで足下達は求愛して交尾するのか? そういう場所か?」

「何言ってんだよ。勉強だよ。勉強」


「勉強? ほ、ほう。脳を鍛えるのか。感心。感心」


「ついてくるのか」

「うむ。余に万事任せておけい!」


逆に不安がぬぐえない。

だが、魔法で上手く隠れて見学するのかもしれない。

小動物などに化けるのかも。


と考えていると


「しかし、求愛する場所ではないのか? 先ほどの遼太郎と結なぞは、帰り際に唾液の交換をしておったぞ? あれは、足下達にすれば大事な行為なのであろう?」


「え?」


「ふむ。あちらについて行った方が面白かったかもしれん」


「え? あの二人って、唾液の交換ってひょっとして」

「ん? どうした? 知らんかったのか?」


「き、キス?」

「あ~。そうそう。聞いたことがある。下賎な使い魔達は魔女と契約する際は尻にキスをさせる風習もあるなぁ。そういえば」


「いやいやいや。え? あの二人、キスしてたの?」

「なんだ。また狼狽しておるのぉ。今日のヒナタは忙しいな。はっはっは。愉快愉快」


なにが愉快なのか。しかし、あの二人付き合ってたとは知らなかった。遼太郎から聞いていなかったのだ。


そう陽太が考えていると、明日香はニヤリと笑った。


「ふむ。どうだ? 試してみるか?」

「え?」


「人獣が何を好き好んでそのようなことをするのか興味がある。足下も経験があろう」


「そりゃぁ」

「あるのだな」


なかった。赤ちゃんの頃は親がしていたかも知れないが、それは数ではない。

キス。

明日香と。思わず息を飲む。

だが首を振り思い直す。してはいけない。倫理的に。その言い訳を考えた。


自分は貴根がすきなのだ。と。


なにを好き好んで明日香とせねばならないのか。

凶暴な悪魔と。

唇。胸。足。全てイタリアの彫像のように完璧。

こんな人間他にはいない。



「どうした。はようせい!」



言い訳を考えていうと、いつの間にか魅力的なところを探していた。呼び声に明日香を見ると目を閉じている。


息を飲む。

明日香の魅力の波が押し寄せてくる。


陽太の心の中に紫というか茶色が混ざったようなモゾモゾとする感覚を感じた。

魔法だ。明日香の誘惑の魔法だった。

陽太の体が勝手に動く。

もうどうでも良くなってしまった。

この魅力的な明日香とキス出来るならば。


陽太はドキドキしながら、明日香の頬に手を添えた。

つややかなその黒髪が指に振れる。

陽太の息で長いまつげが小さく揺れた。


陽太の興奮は最高潮に達し、明日香の唇に顔を近づけると


「ふおぉぉぉぉ」


陽太はドタン! と音を立てて床に倒れ込んだ。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



目が覚めると朝だった。


陽太は心臓が止まるくらい驚いた。なぜなら青い顔の老人であるネビロスが自分の顔を覗きこんでいたからだった。


「ふむ。目を覚ましましたな。閣下の毒気に当たったようです。通常なら100人は死んでしまいますが、早期発見、早期治療が良かった」


「え? え? 毒って?」


「すまん。すまん。抑えておったが口付近には少々、毒が出ていたようだ。はっはっはっは。愉快痛快だ」


いったいなにが面白いのか?

明日香のいつもの様子を呆けた顔で見ていた。

ネビロスが続けた。


「閣下は人獣にとっては害な毒を吐くのだ。気遣って控えていてくださったようだが、微量出ていたのであろう。これにこりて、閣下を襲おうなど不埒な考えはおこさぬことだな」

「そんな、襲うだなんて」


「この薬を差し上げよう。これで閣下の毒の免疫がつくはず」

「そうですか? すいません」


ネビロスが出した液体の入った薬の小瓶に手を伸ばすと


「副作用として、頭に角が生えますが」

「じゃ、いりません」


「いらない? 仕方ありませんな。人獣とは防衛の本能が薄いのであろう。そもそもそのようなことであるから何万年も同じような争いを続けているのであろう。やれやれである。では儂はこの辺で。あまりそのような地上に長くいたくないのでね」


と言うが早いか、騒がしく静かな音とともに去って行った。

床には青白い光がその痕跡を残していた。


なにが防衛か。クドクドと言われたが。角がいやなだけだと陽太は思った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] まだ読み始めたばかりなんですが、滅茶苦茶面白いですねwwww 正直100話超えなんで萎縮していたのですが、読みやすいし。 週末最新話まで読み終えてからまた感想欄お邪魔します。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ