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第47話 超回復

前野は陽太の足を乱暴につかむと、そのままベッドに投げた。陽太の体はベッドの上でバウンドし壁にぶち当たってまたベッドの上に落ちた。


「あたァ!」

「甘えんじゃないよ。ベッドにおいてもらっただけでも感謝しな」


「つ、強いっすね」

「あっそ」


「オレの武術の先生。悪魔なんですけど、たった四日ですごくちゃんと教えてくれたんです。すごく強くて、かっこ良かった。でも、でも前野さんもすっごく強くてかっこいいです」


「かっこいい? かわいいじゃないの?」

「いえ、かっこよくて、さらにかわいい」


「んふ!」


「竹丸さんがうらやましいです」

「まーねー。でもアンタにもアッちゃんがいるじゃん」


明日香。陽太の胸が一つ高鳴る。


「え? アスカ? だってただの同居人で」


「ん? そーなの?」

「ハイ」


「驚いた」

「なんでですか?」


「アッちゃんは、アンタのこと彼氏だと思ってるよ?」

「な、なんでですかぁ! オレ、好きな人いるし。あ、いた。かな? そのことだってアスカ知ってますよ?」


「ふーん。こりゃ、ドロドロだ」

「ドロドロって」


「そんなこと言ったら、アッちゃん地獄に帰っちゃうよ?」

「え? マジすか? な、なんでっスか?」


「いや。帰るだけじゃあきたらない。アンタを動けないようにして地獄の自分の部屋に飾っちゃうとか」

「ちょーと! ちょーーーっとぉ!」


「んふ。あは。ゴメン。からかった」

「なんだ。やめてくださいよ」


陽太の胸の内はホッとしたような。残念なような。


「でも、彼氏だと思ってるのはホントだよ。聞いてみな」

「え? あ、はい」


話が終わり陽太はベッドで打ち身の療養。

前野は格闘のDVDを見ていた。


「おー。強い強い。コイツ」

「でしょ。でしょ? でも前野がでてたらずっとチャンピオンだろうなぁ。何千年も」


「あは! でも、こうして観戦するのも好き。タケちゃんと、試合会場にいってみたい。一緒に見てぇ。興奮してぇ」


また始まった。


「エロいっすよ?」

「そう?」


「竹丸さんだって、疲れるんじゃないですか?」

「まさか! タケちゃんタフだから。あんたと違って。二回、三回じゃぁ根を上げないよ」


「オレとの試合とは別でしょって。」

「男の体力は財産だよ。タケちゃんなんて、あんたより数百年も年寄りなのに。もうそろそろ回復した?」


「まだっす。人間はこのくらいダメージ受けたら一週間は休まないと」

「だよね~。ホント弱過ぎ。手加減しなきゃすぐ死ぬもんね」


手加減してたことに驚いた。


「スイマセン」


「いいや。タケちゃん帰ってきたら治してもらおう。そして、この一週間はウチの格闘エクササイズに付き合ってもらうよ!」

「マジっすか」


「いーじゃん。練習なんかより実戦! その方が上達する!」

「は、はーい」


「んふふ」


そして、夕方。明日香が帰ってきた。

前野は、交代でバイトにいった。


それはそうだ。メンバーの三人がバイト休んだら店が大変だ。


明日香と二人っきりの空間で陽太は思い出した。

彼。彼氏という言葉。

なんで、女子トークでそんな風になったのか?

なんで自分なのか。狭い空間で二人きり。明日香のことを意識してしまう。


考えて黙っている様子を見た明日香。


「なんだ。タマちゃんとケンカでもしたのか?」

「いやぁ。武術の稽古をつけてやるって。はは。チョー強い。グラシャラボラス先生も負けちゃうかも」


「なんと! 誠か。さすが五千年も生きてると違うのぉ。地上最強だな」


さすがの大妖怪。やっぱりそんなに生きていた。陽太はそりゃ叶うわけがないと納得をした。


「まぁ、タケが戻ってきたら薬かなんかで治してもらえい。それともネビロスを呼ぶか?」


「あ、そうだね。ネビロスさんにも久しくあってないし」

「よし分かった。ネビロスよ! 来たれ!」


明日香が指をパチンと鳴らすと、床がさざなみのように動いた。

騒がしいような静かなような音と共にネビロスが厳かな立ち姿で参上した。


「閣下。いつも変わらぬご尊顔を拝しまして恐悦至極にございます」


そう言いながら、深々と頭を下げる。

同じ悪魔でも軽いノリのグラシャラボラスと全然違う。

悪魔にもそれぞれ個性があるということか。


「おお。ネビロス。ヒナタがケガをしたのだ。治してやってくれ」

「お易い御用にございます」


と、一礼すると胸のポケットから小さな薬を手から出した。陽太はおずおずとそれに手を伸ばす。


「念のために聞きますけど、怪しい薬じゃないですよね?」

「大丈夫です。無味無臭。霊験あらたか」


「角とか、鱗とか生えてこないっすよね?」

「じゃぁ、こっちの薬を」


そう言ってネビロスは最初の薬を胸ポケットにしまい込み、上着の内ポケットから別の薬を出して交換した。


「ちょっと! ちょっと! ネビロスさん!」


明日香は口をおさえて「プフ」と笑った。


「あの、冗談はやめてください」

「儂は冗談はキライです」


と言うことは本気だと言うことだ。紳士であるがやはり悪魔だ。


陽太は瓶の中に入った薬をゴクリと飲んだ。

たちまち体の奥底から力が沸き起こってくる。


「わー! マジか!」


「ふふふふ。数千の薬草を調合して作った万能薬。人獣にはこちらのほうがいいかもしれませんなぁ。さっきのは同族向けかな?」

「すごいっす! 超回復した!」


「そうかそうか。では良かった。ネビロスよ。褒めてつかわす。下がって良いぞ」

「はは。有難き幸せ」


ネビロスは一礼してまた床に消えて行った。


やはり、悪魔の知識はすごい。

キズが全然痛くない。湧き上がってくる力がものすごい。


「さて、タケがくるまでに本日の学習をするとしよう。そこに座れ」

「あ、ハイ」


陽太と、明日香で向かい合わせになって勉強。

明日香の教え方は先生のそれよりも簡単で憶えやすい。

さすが知識の悪魔だ。


「よし。今日はここまでだ。遼太郎と結が心配しておったぞ? わけは話しておいた」

「そうだよな。ありがとう」


「遼太郎なんか、すっごい興奮して聞いてた。あやつも面白いヤツだな」

「そうだよな。あ! 茨木先生と星隈先生は?」


「あ! そーか。そーか。そういや、そういうのも探った方が良かったなぁ。はっはっは。忘れておったわ。まぁ、タケがその辺は調べるだろう」

「ホントに興味ないね。ふふふ」

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