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第45話 新たな力

朝。前野が陽太と竹丸を起こした。

テーブルの上にはすでに朝食を作られている。


「うわ! すっごい美味しい!」


「でしょ? バイトだってホントは厨房希望だったんだから。ま、世界一を自負してるけどね。はっはっは。伊達に長生きしてないよ」

「すごいなぁ。前野さんはいいお嫁さんになれるって」


「あのねぇ。今までも何回もいいお嫁さんだったの。ダンナが先に死んじゃうだけで」

「ああ、そっかぁ」


前野は今までの人生数人、いや数十人の夫がいたのだろう。すべてが玉の輿だ。しかし相手は人間なので全て先立たれていたのだ。

そんな話の中、竹丸はもくもくと朝食を食べ箸をコトリと置いた。


「ごちそうさまでした」

「あれ? 竹丸さんテンション低いね」


「ありゃ! どうしたのかな?」


前の夫の話をしたからだろ? と陽太が思っていると、突然、スッと明日香が姿を現した。


「いつもの自己嫌悪でしょ? まったく人の部屋で」


「あ、アッちゃんさん?」

「キャア! アッちゃん! いつからいたの!」


「いやぁ、コウモリで帰ってきたらなんかしてたから気まずいから消えてた」

「やだ! じゃ消えてないでちょっとその辺飛んでてくれたら良かったじゃん!」


「いやぁ、興味もあったもんだからさ。見てた」


まさか、この二人? 陽太は前野の顔を見ると、真っ赤な顔をして怒り出した。


「もう! アッちゃんのバカ!」

「ありゃ? 怒った?」


「怒るよ! 普通は人の秘め事は見ちゃダメなの!」

「あ……。そうなんだ……。ゴメン……ね?」


「……ウン……。ウチもアッちゃんの部屋でしたの悪かった……」

「あーん。タマちゃんごめーーん。キライにならないでぇ~」


前野に泣きながら抱きすがる明日香。前野はその頭をなでながら


「うん。いーよ。ゴメン。ゴメン」


グスグスと泣きしずる明日香。それを黙って見ている男子二人。竹丸は自分の頬を掻きながら、


「スイマセンでした」

「ハイ」


それで、竹丸はテンション低かったのだ。非常識な振る舞い。自分の節度が守れなかったこと。それが常識家である彼の身を苦しめるのだ。

でも、陽太は全然気付かなかった。それもそのはず。精神を侵す術が得意な前野の催眠の術を掛けられていたためだ。


竹丸と明日香が登校の準備を整えた。


「じゃ、学校に行ってきます。」

「あ! 私も!」


「じゃぁ、行ってらっしゃーい!」


竹丸は玄関で足を止めて陽太を見た。


「いいですか? ドアは外からは開かないように術をかけておきます。ワタクシたち以外来ても決してドアを開けてはいけません。鬼が化けてる場合がありますからね。ワタクシとアッちゃんさんは同時に帰宅しません。同時の場合はニセモノだと思って下さい。」


「は、はい。了解です」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 



明日香と竹丸が二人で学校まで並んで歩く。明日香はどんな時も楽しそうだ。

カバンを大きく前後に振りながら竹丸に話かけた。


「手首は? 大丈夫なの?」

「ええ、まぁ。天狗の秘薬で痛みはありません」


「チョークとか握れる?」

「大丈夫です。ワタクシ、両効きなので」


「ふーん。そりゃ良かった」


竹丸は申し訳なさそうに


「あの。ありがとうございました」

「ん? なにが?」


「タマモさんと……一緒に行って頂いて」


それを聞いて明日香はプッと吹き出した。


「ホントだよ。私とヒナタ。タケとタマちゃんの方がバランス取れてたんじゃない?」

「そうですよね」


「ホントは、そうしたかったんでしょ?」

「え? ……いや」


「ん?」

「アッちゃんさんと一緒なら、絶対に安全だと思って」


「はぁ? アンタの仕事はヒナタを守ることじゃないの?」

「ハイ」


「呆れた」

「スイマセン」


明日香は竹丸の背中をパシッと叩いた。


「でも、見上げたヤツ!」

「え?」


「愛する人を絶対安全なところに置くなんて」

「そうでしょうか? 自己嫌悪です」


「その気持ちに免じて」


明日香は竹丸の額に人差し指を押し付けた。


「な、なにを」

「動くな」


「は、はい」

「はい、終了!」


そう言って指を離した。


「え? 何がですか?」


「タケは、印を結んで祈ってから雷鳴の術を使うんでしょ? それじゃ、待ち時間が多すぎる。これからは念じたところにすぐ雷鳴を使えるようにしてあげた。しかも数段パワーアップして」

「え? え? え? な、何も変わってませんけど」


「まぁ、タケは悪魔の力を借りるとか嫌いだと思うけどさ。私は元々女神だったんだよ? だから神からの恵みだと思ってありがたく受け取りな」

「ホントですか? ちょ、ちょっと念じてみます」


と言って辺りを見回すと、空き地に廃車が積まれている。

横には廃タイヤが10段ほど重なっていた。


「ゴムなら……」


と言って、念じてみると


カッ!! ゴゴンオーーーン!!!


という音ともに、大落雷が積み重なったタイヤに直撃!

そこらじゅうにタイヤ片が飛び散った。


「マジすか」


「マジだよ~。これならそのナントカっていう鬼にも勝てるでしょ?」

「はい! 勝てます! 楽勝です!」


「はっはっは。早くタマちゃんを自分で守れるくらい強くなりな!」

「ハイ!」


竹丸は大きく頷いた。

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