表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/189

第38話 いざ出陣!

金曜の夜がきた。先生の最後の指導だ。

陽太が気付くと先生の城の中にいた。


しかし、そこに先生の姿はない。陽太は刀を持って一人きりだった。

先生の城の中には違いない。作りが一緒なのだ。

だが、いつも部屋じゃない。長い長い廊下だった。

左側には中庭があって、噴水がシュウシュウと水を噴き上げていた。


その廊下の奥。

向こうから、赤く光る眼が見えた。


だんだんとそれがこちらに近づいてくる。

灯りに照らされたその姿は、巨大な黒い犬に牛の角。鷲の翼があった。


「え? せ、先生!!」


突然その巨大な犬は襲い掛かって来た。


「うそだろ! え? この魔獣が襲い掛かってきて。先生倒されちゃった!?」


魔獣に、追いかけられながら先生の名前を叫び続けた。


「せんせーい! グラシャラボラスせんせーーーい!」


しかし、城の中にはこの巨大な魔獣と陽太だけのようだ。

まるっきり他にひと気がない。


「どうすりゃいいんだ! 先生の魔法でここに来たんだから。ネビロスさん!? いや、今はここにいない」


大きな爪が背中にかすれる感触!

風圧で吹き飛ばされそうだ。


「くそ! どうすりゃ!」


背中で獣の歯がカチンとなる音が聞こえた。


「え? 食い殺される?? ……そうか。やらなきゃならない。せっかく先生から教えてもらった剣技があるんだ。」


陽太は振り返って獣と対峙した。獣も獣で陽太から離れて間合いをとった。

まるで狩りをする獣。いや、そのものだ。一番捕えやすい角度を狙っている。


巨大だ。巨大な獣。

しかし、これには弱点がある。


そう思った瞬間だった。獣の適正な攻撃範囲だったのだろう。獣は飛び掛かって首を上げて、陽太をかみつこうとして来た!


その大きな首を降ろしてきたとき、陽太はあごの下に入り込み、刀を抜いてその首を刺した。人間であれば喉仏の位置だ。


獣は一声挙げてフラフラとなりながらその巨大な体をバタリと中庭に倒した。


陽太は、刀を獣から引き抜いて血を振り払って鞘に戻した。


その瞬間、獣の体は先生の体になってしまった。

そして背中のバネをつかって、ピョーイと立ち上がり、ニコリと笑ってこちらを見た。


「うぇ! せ、先生!」

「いやはやお見事。急ごしらえとはいえ、ここまでできるとは」


「え? 今のテストだったんですか? あ~。助かったァ」

「いやいや。なかなかどうして。私も本気だったんですよ?」


「刺されたところは大丈夫ですか?」


先生は喉をさすりながら、ぜんぜん大丈夫といった感じで手を振った。


「はい。大丈夫。その刀にはいささか難がありますな。ヒナタどのはすでにお気づきだ。」


その通りだった。この刀には難がある。

先生と戦って初めてわかった。いくら刀がなじむといっても。


「はい。刀が短いので、先生のように巨大な相手には急所を完全に到達するまで突ききれません」

「その通り。いやはや。よい弟子を持ちました。あなたは私の誇りです」


「いやぁ。先生の指導は最高でした」

「はっはっは。刀の弱点ですが、無理して一撃必殺を狙う必要はないと思います。戦闘不能にすればそれだけでよいのかと」


「なるほど。例えば」

「足を切る、武器を持つ手を切るなどがその方法でしょうな」


「そうですか。残酷ですが」

「しかし、そうも言ってられない状況でしょう。では、明日の戦果を楽しみにしております」


「はい! ありがとうございます!」


深々と一礼するとオレの体は、いつの間にか部屋に戻っていた。


「おお。戻ったか」

「うん。先生に褒められた。ファ〜。少し寝るね?」


「ああ。分った。そうか。褒められたか。形になったのならなによりだ」

「うん。おやすみ~」


陽太はベッドに乱雑にゴロリとなって寝た。

明日香は陽太の近くに来て、彼が眠る姿をにこやかに見ていた。


体はやはり疲れていたんだろう。

陽太は明日香に見守られながら、ぐっすりと時間まで寝てしまった。


目を覚ますと、すでに前野と竹丸が来ていた。


「ヒナタ。おはよう。目が覚めたみたいだね」


二人が来てるから明日香の話し方がかわいらしい。それに陽太は微笑んだ。


「うん」


陽太は、上着を脱いで風呂に向かった。

それを見て前野が


「ふーん。やっぱ、体も出来上がってんじゃん」

「そう?」


この特訓中、自分の体など気にして見ていなかったがホントに脂肪が落ちて、筋肉が出ていた。まるで格闘家のような肉体が出来上がっていた。


陽太はシャワーを浴び、動きやすい格好に着替えた。

そして、竹丸から借りた刀を手に取った。


「おー。似合いますね!」

「ありがとうございます」


明日香は、刀の柄を握った。


「これでは、警察に捕まっちゃうんでしょ?」


といって、魔法をかけたようだった。


「これで、他の人には傘にしか見えないから。」


陽太には刀にしか見えないが、他の人間には傘にしか見えない。改めて明日香の魔力に驚いた。


明日香の呼びかけで、4人は手をつなぎあって丸くなった。

すると次の瞬間、繁華街の誰もいない裏路地に立っていた。

明日香は楽しそうに笑う。


「うん。久しぶりに大暴れしたいなぁ。私とタマちゃんで先に行って、敵を集めちゃう。なんだったら本拠も潰しちゃうね~。じゃ、行ってくる」

「うん。いいね」


明日香が一回転すると、制服の陽太の姿に変わった。

そして、女子二人は男子二人にひらひらと手を振りながら繁華街に向かって歩き出した。


「じゃぁ。我々はここでしばらく座っているとしますか」

「うん。そうだね」


陽太たちは近くにあったビールケースの箱を引っ張り出してそこに腰かけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ