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第37話 剣術を学ぶ

竹丸は大変申し訳なさそうに頭を下げた。


「スイマセン。また無様なところを。タマモさんが悪いわけじゃありません。術を跳ね返せないワタクシが悪いのです。」


明日香はそんなことどうでもよさそうにテレビのチャンネルを変えながら


「ふーん。でもアンタがムカつくんだって。何したの?」

「やん! それは」


「あ。今日、仕事の終わりが遅くて、心配かけてしまって」

「別居?」


「……うん。一人の時間が長かったから。さ」


明日香はソファーにグィっと寄りかかって


「別居でもなんでもねー」

「プフ」


陽太は少し笑ってしまった。前野がギロリとこちらを見た。


「もう! 先に連絡してよぉ! アッちゃんのバカ!」


「ゴメンゴメン。ヒナタを一人で歩かせて鬼に襲われてもイヤだから、瞬間移動で来たの。でも遠慮して玄関に来たのに」

「プププ」


またまたギロリと陽太を睨む前野。

陽太は震えあがった。実力のある大妖怪だ。ナメていたらとんでもないことになる。


「そ、それでなんのご用事で。作戦は土曜日では」


竹丸の質問に陽太はわけを話した。


グラシャラボラス先生に肉体を人間の中でもトップクラスのレベルにしてもらったこと。

土曜日までに剣術の指導をしてもらうこと。

それには武器が必要なこと。


「へぇ! そうなんですね! では、もう普通の人間ではない?」

「でも、中身は変わってないよ? 普通の人間です」


陽太が自分の胸を親指で指さしている間に、前野は陽太の後ろにそっと回りすばやく手刀を落とした。


陽太はそれを片手で掴んだ。


「ん!」


前野は驚きの声をあげた。


「あ、ごめんなさい」

「へー。やるじゃん」


竹丸も驚いた表情で立ち上がった。


「すごいじゃないですか!」

「だって、全然遅かったよ?」


「ふーん。ムカつくとこは変わってない」

「そんなことは」


竹丸は、道具袋から例の刀を出してきた。


「これは我ら天狗一族の秘術を持った刀匠が鍛冶たんやしたものなんです。本物の安綱には及ばないかもしれませんが、神仏に祈って作ったものです。きっと同じ効果があるとワタクシは信じております」

「ウン。オレも信じるよ。こんなに大事なもの借りてもいいの?」


「もちろんです。当日、ヒナタさんにそれを握っていただいても大丈夫です。ワタクシには葉団扇も雷鳴の術もありますので」


といって、竹丸は忍者みたいな手の握り方をした。印というやつだ。

これで雷鳴を呼ぶのだ。


明日香は満足そうに笑って


「じゃ、刀、借りてくね。夜遅くゴメンね? 続きしていいよ。もう来ないから」


「あ、そう? ウン。じゃぁ、ホントにもう来ないでよ?」

「うん。今日はね」


そういって、明日香はニヤリと笑った。

竹丸は二人を送り出すように頭を下げていた。


「んじゃ、行こうか」

「うん」


陽太は、すばやく明日香の腰に抱きついた。


「もう、何も言わなくても抱きついてくるなぁ」

「だって。置いていかれたらイヤだからさ」


陽太たちの体は自分たちの部屋に移動していた。

明日香は、すぐにいつものイスに寄りかかった。


「では、行ってこい」

「ハイ。閣下!」


陽太はそう言って敬礼のポーズをとる。

陽太の体がエレベータに乗って下がって行くようになる。明日香の笑顔が見えた気がした。


次の瞬間、陽太はグラシャラボラス先生の前にいた。

先生は、陽太の手から刀を取った。


「ほうほう。これは立派な日本刀。鞘もよい作りです。さて、中身は」


といって、ギラリとむき身をさらした。

先生は刃を上に向けて刀身を眺めた。


「これは、かなりの業物わざもの童子切どうじきりいや、そんなはずはない。髭切ひげきり。うーん、まさか。それにしては短すぎる」


「いや、そーゆー、何切とかってやつじゃなくて、ヤスツナのレプリカとかって言ってました」


すると先生は陽太を見て大笑い。


「はーっはっはっはっは! そーですか! そうですか。童子切も髭切も安綱の作品です。ほぉ! やはり! それのレプリカですか。ううむ。素晴らしい!」

「そうなんですか?」


「これは本人作に勝るとも劣らない素晴らしいものです。ただ本物よりも短い。うん。人ではない。そーだ。天狗の秘術。そうではありませんか?」

「すごい! 先生はそんなことも分かるんですね!」


「私は武器の目利きでもありますからね。なるほど! では、これを使った剣技をお教えいたしましょう!」


そこから、グラシャラボラス先生の指導ははじまった。

剣道とも違う。居合道とも違う。

まるっきり見たこともない剣法だ。とにかくクルクルとダンスのように回る。

遠心力で攻撃力が高くなるらしい。


まるで剣の舞だ。


刀が体の一部のようにに扱える。


水のように、空気のように自由自在に使える。


陽太はその剣術に驚いた。

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