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第35話 只今修行中

パシ、パシ、パシ、パシ、パシ。


陽太は、無意識に空中で金貨を掴んだ。何が何だか意味が分からない。だが明日香は気品ある笑みを浮かべていた。


「ふふふ」


「なに?」


「おいおい。もっと驚け」

「なんで?」


「空中で同時に金貨を5つも掴んだではないか」

「うん。遅かったし」


明日香は分かっていない陽太に多少呆れた。


「そのない頭で考えてみよ。空中で自分に投げられた金貨を同時に掴むことが普通できるか?」


明日香の言う通りだ。考えてみればそうだった。


「うん。そうか。普通は無理だよなぁ」

「つまり、そういうことだ。体は仕上がった!」


「そういえば強くなったのかも。こ、これで鬼に勝てるかなぁ?」

「まず無理だな」


ガクりと来た。軽く答えられてしまった。どうやら戦う技術がないので無理らしい。

グラシャラボラスは陽太の肩に手を乗せ、ニンマリと笑った。


「そうです。ですから今から特訓いたしますぞ!」

「と、特訓?」


陽太が驚いていると、明日香が威厳のある声でグラシャラボラスに命じた。


「では、下がって良い」

「は!」


グラシャラボラスが敬礼をすると、凄い勢いで自分の目の前の風景が変わってゆく。まるでエレベーターに乗っているように。気付くと陽太は石造りの牢屋のような場所にいた。


「え?」


しかし、驚く間もない。グラシャラボラスの手には大きな革の鞭が握られていた。


「地獄の私の城の一室です。では、特訓を開始します。基礎体力から」


いつの間にやらの瞬間移動。

明日香の腰に張り付いての瞬間移動とはちょっと違った。超高層ビルのエレベータに乗っている感覚だった。


そんなことを考えていられなかった。特訓は開始されていたのだ。

グラシャラボラスは床を大きく鞭打った。


「はいまずはストレッチ~。はい軽くジャンプして~。手首足首回して~。アキレス腱伸ばして~。はい、ランニングはじめ! イチ、ニ! イチ、ニ!」

「は、はい!」


先生の指導が始まった。


しかし体が作り直されたからなのかグラシャラボラス先生の地獄の(笑)特訓もすんなりと進んだ。

疲れも小さい。走り込んだら体を柔らかくする特訓だった。足も蹴り上げると今までできなかったのに頭の上まで伸ばせることができた。


ダンサーのように足を滑らせて移動したり、つり下がる縄を掴んで天井まで登ったり、ジャンプだけで壁を駆け登ったりと様々な動きを練習した。


「ふむ。なかなか素質がありましたな。私が影響を与えたこともありましょうが、なかなかどうして。久しぶりによき素材に出会いました」

「ハァハァハァ。そーですかねぇ」


「はい。では本日はここまでにしましょう。時間がありませんから、すぐに剣技の特訓にうつります。では、また今晩」


と言われると、陽太の体は自分の部屋にいた。


すでに朝だった。


「え? え? え? も、もう学校の時間? アスカは?」


見ると明日香の姿はない。

しかし学校に行くとは言っていた。


待っていてくれてもいいのにと思いながら、陽太はすぐに制服に着替え、カバンを持って学校に向かって走った。


早い! 早い! 今までとまるで感覚が違う。

景色や体、空気がまるで一つのようだった。

ぜんぜん余裕だ。これなら遅刻なんてしない。


明日香が校門の前でニヤリと笑って待っていた。


「さっそく、その体を使ってみたな? 足下の体はすでに全人類でもトップクラスだ。悪魔の力思い知ったか」

「うん! それはもう!」


陽太は楽し気に答えた。自分の体の能力に感動していたのだ。


「はっはっは。本来であればそれを求めて人間はいろいろな生贄を用意し、呪文を唱え、ようやくグラシャラボラスを呼び出して自分の魂と引き換えにそれを得られるのだ」


「そうだよね。アスカが命令してくれたからこうなったんだよね。感謝してるよ! ありがとう!」

「ふふふ。感謝だな。いいものだ。実に良い」


本来は努力せずに得るというのは悪いことだが、与えられた力。

今回は、緊急事態だ。ありがたく頂戴することにした。


「ほんとにアスカのおかげだよ! もう、神様みたいだ!」

「はぁ? お前たち人獣が悪魔に仕立て上げたくせに」


「あ、そ、そうだった」

「うむ。まぁ、そちら側にも事情もあったろうがのう。まぁ、この国なら、日本なら、どんな悪魔でも鳥居をつけて、神社にしてくれたかもしれんな。はは。まぁ、今更どうでもよい話だ」


陽太にはよく分からなかった。たしかに日本にはいろんな神様がいるぐらいしか感じなかったのだ。



授業中。

陽太は一睡もしていないので爆睡。


だが、明日香の魔法で寝ているけど起きてるていを保てたようだった。

明日香には感謝の嵐だった。


学校が終わって、明日香と一緒に部屋に帰宅。明日香は魔法でイスを二つ出し、陽太にその一つに座るよう促した。


「ふむ。学校は勉学に励む場所だが足下も今のままでは寝ることもままなるまい。余が今日の分を教えてやる。そこに座れ」


二人でテーブルに迎え合わせに座る。

明日香の教え方は要点を抑えていて、流れるように頭に入ってくる。

分からなかった方程式も陽太は完璧に覚えた。

勉強って面白いと思わせるほどだった。


ものの一時間もかからなかった。


「え? もう終わり?」

「うむ。終了だ」


「アスカ、教えるのうめぇー!」

「ん? そうか?」


「そーだよ! これならたしかにアスカは学校にいかなくてもいいはずだよね!」

「そりゃそうであろう。余の叡智は」


「そうだった。神並みだったよね。ゴメンゴメン」


陽太の顔に自然と笑みが浮かぶ。

昨日と今日とで自分の能力が高まったことを感じる。

しかし悪魔の力。

母が知ったらどう思うだろう。

確かにこの力は魅力的だ。

この力を欲しがった古人達の気持ちを分からなくはなかった。

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