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第33話 作戦会議

二人ともゴマかすために、せかせかと頭を掻いたり爪を見たりしていた。


「ホントに一緒に暮らしてるんですね」


と陽太がいうと、前野はバツが悪そうに


「まぁ、ね」


と答える。それが言い終わらないうちに竹丸が頭を抱えて崩れ落ちた。


「ああ! ダメだぁ~!!」


突然の大声。そして床に伏して泣き出す。

みんな訳も分からず成り行きを見守った。


「ヒナタさんを守るって決めたのに、誘惑の術に乗って節度を守れないなんて。ワタクシはまだまだです」

「あれ、効きますよねぇ」


陽太は相づちを打った。誘惑の術に関しては経験者だ。竹丸の自我が効かない気持ちが分かった。

だが前野は慌てて真っ赤な顔をした。


「何言ってんの! タケちゃ……、いやいや、この犬が勝手に襲ったんだって! ウチの魅力に勝てなくて!」


明日香はその狼狽ぶりをまた笑って


「もういいよぉ。好きなんでしょ?」


と言うと、前野は下を向いて、髪の毛で顔を隠した。


「……ハイ」


陽太は普段の前野からは想像できないので


「す、素直になればいいのに」


と言うしかなかった。

竹丸の顔は神妙だ。前野に深々と頭を下げた。


「タマモさん。ワタクシにもっと精神を犯す術をかけて下さい! ワタクシはもっともっと自分を鍛えたいです!」

「あっそ。分かった。二人っきりの時、ね」


「は、ハイ!」


プププと笑っている明日香。

竹丸は悔しそうな顔をしながら


「なんとか跳ね返そうとしたんですがダメでした。でも、もう少しだったんですけど」


「あっそぉ? まだ、10%ぐらいの力しか出してないけど?」

「マジ、すか?」


「だって、最高の力でやったらもう目を覚ませなくなるよ?」

「マジか」


陽太はじゃぁ自分の時は1%も出していないのでは?と思った。

やはりこの前野も明日香の様な力を持っている。

あっという間に鬼を焼き殺したわけだ。


「誘惑の術に関しては、私もタマちゃんには敵わないわぁ」


と明日香も前野を褒めた。


「でっしょ~?」


陽太はなかなか会話に入り込めなかった。

だが、そろそろ本題に入らなくてはいけない。


「と、ところで」


三人の人ではない者たちは陽太の方に首を向けた。


「今日、鬼に襲われましたが、何が気付いた人〜。って人はオレだけか」

「そんなの、ウチが魅力的だからに決まってるでしょ?」


といって、前野はポーズをとった。

明日香はそれを流して竹丸に聞いた。


「タケは? 何か気付いた?」


「ハイ。おそらく、ヒナタさんが目的かと思いました」

「どうして?」


「視線です。それに、紙を見てました。見つけた! って感じでしたもの」


陽太はひどく狼狽した。


「な、なんで?」

「ふーん。わけ分かんないね。タマちゃんか、タケを見つけるんなら分かるけど」


明日香が考え込むと、竹丸は拳を握りながら


「ハイ。ということで、より守備を固めようと思いました」


とやる気を見せた。明日香は軽く鼻で笑いながら


「まぁ、部屋にいる間は私がいるから大丈夫だと思うけど」


という明日香に竹丸は頭を下げた。


「アッちゃんさんにそういって頂ければ、ワタクシは安心です」


陽太は思った。なぜ自分なのか?

鬼なんて縁もゆかりもない怪物に狙われるなんて信じられないがこれは現実。

事実、前野や竹丸がバイト帰りにいなかったら殺されていただろう。

それが明日香も竹丸も守ってくれると言うことに安心し、ホッと息をついた。


「しっかし、やってくる敵を待ってるってのは正直面倒だよね〜」


陽太の安心も束の間、明日香が面倒くさそうにそう言った。

それに合わせて前野も竹丸も相づちを打ったものだから陽太は慌てた。


なにしろ自分の命がかかっていることだ。明日香も前野も普段から人間に興味がないことは分かっているが、袖触れあうは他生の縁。ましてや明日香とは同棲しているのに、もう少し気持ちがあっても良いのではないか?

と陽太が思っていると明日香が立ち上がった。


「こちらから攻め入っちゃいましょ!」


それに前野も楽しそうに


「面白そう。うんうん。そーだよ。やられる前にやっちゃおう!」


竹丸の眼鏡が怪しく光る。


「敵の拠点を潰してしまえば、そうそうに再起はできませんものね。ワタクシも賛成です」


陽太が思っていたのと逆の反応。敵地に攻め入ると決まった!

明日香はクルリと一回転すると陽太の姿になっていた。


それにあわせて前野もこれまた一回転。

三人目の陽太がご登場。


竹丸は二人のようにはいかないがスッと顔をなでると陽太の顔。

その後、二三回ジャンプすると、高い背丈が陽太と同じ身長になっていた。


「こんな感じですかね?」


と陽太に扮した竹丸が明日香に向かって顔を見せながら微笑むと


「ふふ。やるじゃん」


と明日香は竹丸を褒めた。

前野はすでにストレッチをしている。腕を伸ばし、足を伸ばして拳法の構えをした。


「アッちゃん、一気に何匹くらいいける?ウチは地理的状況によるけど10匹くらいかなぁ…」

「あん!ゴメン!こういうの得意だから100万くらい?」


100万。桁が違う。

やはり明日香はすごいかった。


「タケちゃんは?」


と前野が竹丸に聞くと、竹丸は笑いながら


「ふふふ。よくぞ聞いてくれました!」


そう言って、またゴソゴソと天狗の道具袋から何やら取り出したものは、短刀。

明日香はそれに気付いたようで


殺鬼刀オーガスレイヤー?」

「その通りです。安綱やすつなという名刀!」


そういいながらギラリとむき身をさらす。

見事な刀身だった。妖しい魅力に吸い込まれそうになるほど。

さすがの前野も驚いて聞いた。


「なんでそんなのタケちゃんが持ってるの?それに短くない?」

「……のレプリカなんです」


三人まとめてずっこけた。しかし竹丸は続ける。


「でも、かなり本物に近く作ってありますから。きっと同じ効果があるかと」


明日香の柳眉が凛々しく上がった。両手の拳をパンと打って合わせた。


「うん、それでいいね。じゃぁ、今からさっき、鬼達と出会った場所に四方向に別れて、見つけたやつから片っ端から叩き潰す! っていう作戦で行こう!」


前野も竹丸もノリノリだった。

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