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第31話 鬼の襲撃

鬼たちはニタニタと笑いながら陽太と前野に近づいて来た。


「まぁまぁ、そう構えなさんな。ウチの親分に会いに来てくださいよ」

「ホントホント。二三聞きたいことがあるだけっすから」


前野は陽太の前に立って鬼たちを睨み倒した。


「なんだよ。じゃぁ、こういう方法じゃなくてキチンとあいさつするのが礼儀だろうが」

「これがオレたち流のあいさつっすから」


そう言って三人はもろ手を上げて襲い掛かって来た!


その時!


一番最後尾にいた鬼が吹っ飛んで壁に激突した。目を白黒させてバッタリと倒れ込んだ。


「なに!?」


ともう一人の鬼がうろたえ叫んだ瞬間、ピカッ! という音と共に落雷。

それが叫んだ鬼に直撃! そいつもバッタリと倒れた。


陽太までオロオロとしていると前野は陽太の横からピョーンと飛び上がった。


妖艶。


前野の細い体が体操選手のように空中で弧を描いて回転する。

その途端に“フォ〜”という尺八の音とともに“ジャラジャラ”と激しい三味線の音。

そこに雅な丸い月があり、回りにススキが揺れるような風景が見える。


チョーーーン!


高い拍子木の音とともに前野は最後の鬼の一人の頭を掴んで逆立ちの体勢をした。

前野得意の幻術が和の雅な風景を作り上げていた。


「か、勘弁してくれ。命令なんだ」

「もう遅い」


前野は妖しくニタリと笑うや否や、そいつの目、鼻、耳、口から炎がゴウッ!と出て黒焦げになってその場に倒れ込んだ。

前野は、空中で回転してまた陽太の横に立って


「証拠が残ると嫌だから」


といって、手をブンブンと大きく振るって団扇の様にあおぐと、黒焦げの鬼は灰だけになってしまった。


「こ、殺しちゃったの?」

「ウチの方はね。アイツは優しいから」


いつの間にか、陽太の隣には竹丸が立っていた。


「タマモさん、ナイスコンビネーション。慌てた演技メチャクチャ上手でした」

「ハイハイ。んで? ケンカ買っといてコイツら生かしといてどうすんの? 厄介ごとは嫌だから」


「ま、敵いませんでしたって大将に言いに行くでしょう。ワタクシとタマモさんのタッグにはそうは勝てませんよ」

「あのさぁ。ウチは静かに暮らしたいの。面倒はゴメン」


そう言いながら、前野は陽太たちの前をまた歩き出した。


「タマモさぁ~ん。一人は危険ですよ~。一緒に帰りましょーよー」


竹丸がそう声掛けすると、前野は振り返りもせず


「うるさいなぁ。黙ってついてきなよ」

「あ。はぁーい」


竹丸は見えない尻尾を振ってるようだった。陽太は思わず吹き出してしまった。


「ねぇ竹丸さん。どうやってあの大男を倒したの?」

「ああ、葉団扇ですよ。一仰ぎすると大風を呼ぶ!」


「あ~。前に見せてもらった天狗の道具かぁ。雷は? それも道具?」

「ああ、あれは術です。雷鳴の術。こうやって祈ると雷を落とせるんです」


といって、忍者がよくやるような手つきをした。


明日香も前野もだが、竹丸も頼りになる。ましてや、女二人は気まぐれで人間に興味がない。陽太は竹丸に肉親のような感情がなぜか湧き上がってきていた。


竹丸は、陽太を部屋まで送った。住まいはホントに近所らしい。

陽太が住まいの場所を聞くと、指さしたアパートの部屋の前には前野が腕を組んでこちらを見てた。


どうやら本当に同棲しているようだ。気取った前野の様子を見て陽太は一人噴き出していた。


陽太が自分の部屋のカギを開けると、すでにアスカが例のイスに腰かけていた。


「遅かったな」

「うん。今まで前野さんと竹丸さんと一緒だった」


「左様か。余は今日はマンガ喫茶に行って居ったぞ」

「そうですか。閣下」


そう言いながら、陽太は二人分の食事の準備を始めた。

明日香はもともと食べなくてもいいから分量は適当だ。


少量の塩なら食べれるようになったし、入れないと「味がしない!」と口から炎を出す。

完全に順応してしまった。


今日は軽く野菜炒めを作って出した。


「ほうほう。うまそうな匂いじゃ」


「閣下のお口に合いますかどうか」

「苦しゅうない。苦しゅうない」


こんな毎日がどのくらい続いたろう? 二人は家族のようだ。

明日香は何もしないが陽太は毎日が楽しかった。


たまに、明日香がネビロスも召喚し三人で食事する時もある。

無口だし、明日香の振る舞いとかに注意をするが、父が生きていればこんな感じなんだろうな。と思ったりする。相手は悪魔なのに。陽太は自分が変だと思い、思わず笑ってしまった。


今日は二人の団らんだ。仲良く話をしていた。


「学校は?」

「うむ。明日行ってみようかな?」


「休んでばっかりでダメじゃん」

「そうだな」


「今日さぁ、鬼に襲われた」


明日香は身を乗り出した。


「まことか?」

「うん。でも竹丸さんと前野さんが倒してくれた。三体いたんだ」


「なんともったいない! 余も遊びたかったぞ! 余もバイトに行けばよかった!」


遊び。あの死闘すら遊び感覚か。と陽太は思った。


「最近、現実離れしてるなぁ」

「まぁ、足下にとってはそうだろうな」


「ところで、竹丸さんと前野さんが同棲してるって知ってた?」

「うむ。タマちゃんはしょっちゅう竹丸の悪口をラインで送ってくる。ツンデレであるな。タマちゃんは」


「ププ。じゃ、前野さん竹丸さんのこと好きなんだ」

「好きなんてもんじゃない。もうありゃとりこだな。しかし、数千年生きてて、あーゆーのと付き合ったことないからどうしていいか分からんのであろう。暖かく見守ってやれ」


「ははー。閣下の仰せの通りに」


「ふふ」

「はは」


陽太は、少ない塩加減の野菜炒めに改めて塩コショウを振って食事を続けた。


「それで、なぜ鬼どもとやりあったのだ? 目的は?」

「分からないよ。急に襲ってきたんだ。でも人間の世界でも何もしてなくても因縁をつけるってのがあるから、それかも」


「ふむ。多少気になるな」

「そう?」


「タケならなにか気付いてるのやもしれん。聞きに参ろう」

「うん。分かった」


「では余の腰を持て」

「え? あ。はい」


陽太はこの瞬間移動好きだ。

明日香の柔らかい体に触れられる。


「ん? 足下はなにか邪念をもってるな?」

「も、持ってないよ!」


「はっはっは。ムキになるな。よいではないか。邪念。生きている証拠だ」

「あっそ。じゃ、じゃぁ、よかった」


陽太がそう言い終わると、二人の姿が部屋からフッと消えた。

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