第182話 魔法の器 と色欲
重い体を引きずりながら陽太は青い扉へと向かう。
「でもまぁ、アスタロト大公と話せて良かったな」
青の扉を開けるとそこは、ジョアの水晶玉で見た部屋。
陽太のアパートのテーブルに小皿が乗ってるのだ。
小皿を覗き込むと、赤黒い液体が並々と表面張力をおこすほどだった。
「あそっか。さっき大事なものの部屋のアスカと魔力回復したんだった。マジで回復できてんじゃん! すげぇ!」
陽太は小皿を取り、その液体をバケツに注ぎ込むと、小皿の場所へとバケツを置いた。
覗き込むと、ゆっくりだが魔力の液体が湧いて来る感じで少なかった液体は徐々に増えて行き、バケツの底を満たし始めた。
「へぇすごいや。あ、そーだ。手っ取り早く、大事なものの部屋のアスカと魔力回復してこりゃいいんだ! そして、もう一度見にこようっと!」
陽太は重い体を引きずって、青の部屋から出て、廊下に出た。そして赤い部屋に向かう。
だが陽太の生来の小者の部分が頭をもたげ、考える。
「まてよ? 紫の部屋にもアスカはいるわけだし、あれは相当オレに惚れ込んでるぞ。なんでも言うこと聞くに違いない。いつもの怖いアスカとは大違いなわけだから。赤の扉同様、あっちの裸のアスカとも魔力が回復できるわけでしょ? そーすりゃいいじゃん! 裸万歳!」
息継ぎ荒く欲望丸出しで、奥の紫の部屋へ向かい、そのドアを開けた。
「アッちゃ~~~~ん!」
「あ! 来た!」
すると大変喜んで駆け寄って来る裸の二人、明日香と貴根。
「ねぇ、アッちゃん。魔力回復しようよ」
「え? 魔力回復だけぇ? ここで遊んで行かない?」
遊び。それはと想像するというか、いつも心の中で思っていることを現実に出来ると言うことだ。
思った通りだった。陽太は声も出さずに頷く。
しかし、体力も限界に近かった。遊ぶならすぐ遊ばないと、昏倒しそう。
だが、女子二人は揉め出した。
「なによ! アンタばっかりずるい!」
「なに? 私の旦那さんなんだけど?」
「アンタは悪魔でしょ! 私は人間。戸籍上だって結婚できるんだから!」
「別に関係ないよ~。アンタこそすっこんでなよ!」
「言っとくけど、私の方がこの部屋に先にいるんだから! 先輩だよ。先輩」
「ツーーンだ」
「あの〜、二人ともケンカはやめてェ。ハァハァ」
体力が残り少ない。やはり魔力回復だけにすればよかった。それだけならば大事なものの部屋の明日香でもできた。このままだと電池切れとなってしまい心の中で倒れてしまう。だがもう遅い。目の前の二人はケンカするどころか微笑み合っていた。
「ま、別にどっちでもいいよね。二人で押し倒しちゃえ」
「そーだね」
「え? ちょっと……?」
体力が少なくなっていた陽太。いつもならばするりとかわしてドアの外にでれたかもしれない。しかし女子二人はもともとこちらの住人。動きは軽やか。二人に押し倒されて紫の部屋の中へ引きずり込まれてしまった。
心の中の貴根は、ベッドの上にいるこの部屋の住人である二人の陽太に指示をした。
「ちょっと。ヒナタくんたちも手伝って!」
「ああ」
「いーよ」
「おーい! オマエら! 裏切り者!」
都合四人にベッドの上に投げられ、重力に負けて身動きもままならない。
ここは魔法で弾き飛ばそうと念じるも、魔力も重力におされているのか発動しない。
「アッちゃん! 魔力! 回復!」
この部屋の明日香に懇願する。
「いーよ。そんなの」
そんなの。仰向けの陽太の上に股がる明日香。今から起こることの期待があるものの、意識が遠くなり始める。
「想いを遂げたいんでしょ?」
「アッ ちゃ ん……」
目が暗くなる中、二人の自分がジーパンを引きずり下ろし、貴根がシャツをはがそうとしたところで完全に意識を失ってしまった。




