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第181話 黒の扉

緑はおそらく、安らぎとか、そういうものであろう。


桃色はおそらく、いやらしい欲望ものだ。ジョアが言っていた色欲の部屋。

陽太には分かった。多分に明日香と貴根をどうにかしているのであろう。

本人だからこそその欲望は手に取るほどわかった。

そこを見られたら明日香に殺されるとも。


橙色は、食べ物とかかもしれない。

食欲の部屋。そんな感じがした。


白は正義という感じだ。

陽太の少ない武勇伝がつまっているのかもしれない。

体力に余力があったら行って、優越感に浸るのもいいと思った。


そして一番奥の黒の扉。

邪悪という感じだ。絶対開けたくないと思った。

黄色い扉で懲りた。自分のいやなところ見たくないものだ。


青はなんだ。青も悲しみかもしれない。


ふと陽太の視線が止まる。そこには紫の扉。

これではないだろうか。

魔力という感じがする。感覚で分かった。

紫の扉のドアノブに手をかけて思い切りひねるとそこには。


裸の明日香と貴根が二人の陽太とともに嬌声をあげていた。

陽太は顔を押さえた。


こっちであった。欲望の部屋。色欲の部屋。


「なんで、裸のオレが二人もいるんだよぉ」


その声に部屋のメンバーが全員振り返る。


「あ! ヒナタくんが来た!」

「新しいヒナタも遊ぼうよぉ!」


明日香の艶かしい姿に欲望の頭がもたげるが、そうはいかない。扉を閉めなくては。

閉めなくてはいけない。だが体が重い。それはいいわけかもしれない。

そこに女子二人は追いついて来た。


「なに? どこかいくのぉ?」

「うんゴメン。すぐ来るから」


「あーん。待ってる」

「きっと来てね」


お二人を充分に目に焼き付けて、ドアを閉めた。


「はぁ惜しい。こんなに疲れる空間じゃなければなぁ〜。それに目的も達成してないし」


悔やみごとをいいながら、次のドアを探す。

そうなると次に怪しいのは黒の扉かもしれない。

悪魔の色という感じだ。魔力はそもそも魔の力を借りるわけだから。


「はぁ〜。部屋に何の部屋か書いておいてくれればいいのに」


自分の心の中に文句を言いながら黒い扉のドアノブをひねった。

真っ暗だが、そこには人の気配がある。


「おお。来たか」

「あ、アスタロト大公……」


そう言うと部屋の中がほのかに明るくなる。

そこにいたのはアスタロト大公だった。

召喚したときの姿。

天使の姿に手に毒蛇を持ってドラゴンに座って、紅茶を飲んでいた。


「ここにいたんだ」

「うむ。まぁ、今の余は足下の一部であるからな」


「そうだよね……」


おそらくこれがアスタロトの心臓。

陽太の魔法や生命力を生み出す根源。


「どうだ。本体の方は健勝であるか?」

「うん。ただ、魔力を使い過ぎると眠るようになっちゃった」


「はっはっはっは。まぁそうであろうな。ふふ。興味深い」


アスタロトは微笑んで紅茶をすする。


「ねぇ。こっちの姿はアスカじゃないんだね」

「うむ。そうだな。あの時な。足下が一度死んだ時、本体のアスタロトは心臓を引き抜き、こうがんをかけたのだ」


「願……??」

「余は二度と男の姿にならん。女として、足下の伴侶として生きる。だから生き返れとな」


「え? へぇ……」

「そして、足下の体の中にこの姿と魔力を封じ込めたのだ」


「そ、そうなんだ」

「だから、あやつを守ってやれ」


「え?」

「おそらく、その時、オマエの体の中にたくさんの魔力を分け与えたがために、本体の魔力は有限となり、生命もおそらく天地と同じではあるまい。しかも、傷を負って死ぬこともあるかもしれぬ」


「ええ!?」

「それだけ、膨大な魔力をこうしてこの黒い部屋に入れたのだ。感謝せよ」


「そ、そうなんだ。アスカも 死ぬの か」

「ま、ちょっとやそっとでは死ぬまい。例えラファエルと本気で闘ってもビクともせんだろう」


「そ、そうなのかなぁ……」

「守るとは、男冥利につきるではないか! はっはっはっは!」


「うん。そうだね」

「ま、足下が出来るだけ長生きしてやれば、魔力の心配も死ぬ心配もない。足下はあやつのスペアパーツみたいなもんだからな」


「困ったときはオレを体に取り込むってこと?」

「いや、体の一部をつければ大丈夫だ。あの胸を付け合うようにな」


「そっか。ホッとした」

「その桶を魔力の器とするのか?」


「そ、そうなんだ。どの部屋にあるのかわからないんだ。オレの体力も限界だし」

「青だ」


青だった。今までの推理はなんだったのか。

陽太は苦笑した。


「いろいろありがとう。じゃ、行くね」

「うむ。達者で生きろ」


「うん」


自分の心の中のアスタロト大公に別れを告げて扉を閉めた。極度の疲労がまたのしかかってくる。

青い扉を探してみると、果たして入り口に一番近かった。

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