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第175話 憑いた悪魔

陽太と魔女ジョアは物々しい格好をしながら、その女性宅へ。

母親に挨拶をすると、大変に喜ばれて二人は迎えられた。

母親に促されて女性のいる部屋にいくと、その女性の目の下には大きな黒いクマが出来ており、青白い顔。ブツブツと何かを呟いているようだった。

陽太はジョアの耳に近づき、呟く。


「完全にイッちゃってるよね。ホントに悪魔つき?」


ジョアは頷いて一歩前に出る。そしてその娘に話しかけた。


「ねぇ~アビゲイル? この方は日本からこられた修行を積んだ偉~い悪魔祓屋(エクソシスト)なの。今からあなたの中にいる悪魔を祓うからね?」

「ちょ。そんな、宣伝して大丈夫?」


「大丈夫でしょ。たぶん」

「たぶんって……」


しかし、アビゲイルはツバを吐きながら低い男の声で笑った。


「はははははは! 無駄だ! ワシはこいつの体から出はしない! この街を不幸にしてやるのだ! はははははは!」


ジョアは驚き、引きつった笑いを浮かべて一歩引いた。


「先生、よろしくお願いします」


あっという間に陽太にバトンタッチ。陽太には自信が無かったが、神に祈るように手を合わせてお題目を唱えた。


「あ~。悪魔よ~。このものの体からでたまえ~。かしこみ~かしこみ~、もの申すゥ~」

「なにそれ?」


「いや、雰囲気……」


すると、机から皿が飛んできて陽太の頭に当たった。衝撃に驚いて頭を抑えて叫ぶ。


「痛ァ!」


それにジョアはますます驚いた。


「やだ。誰も何もしてないのに……」


アビゲイルという悪魔憑きの女性は不気味に声を上げて笑う。


「はははははは! さっさと出て行かねば殺すぞ!」


ジョアは驚いているが、陽太にはそれほど驚きを感じない。このくらいなら自分の魔力でも容易にできる。自分が知っている悪魔達はもっと隠された怖ろしさがあるがそれを感じなかったのだ。


「なんなんだ? ホントに悪魔なのかぁ?」

「悪魔でしょ。でなきゃあんなこと」


辺りには部屋中のものが浮遊し、壁にぶつかって壊れてゆく。怪奇映画のワンシーンのようだが、陽太は大して驚きもしなかった。


「小僧! ワシを恐れよ! ワシを崇めるのだ!」

「ひぃぃぃー!」


アビゲイル嬢の言葉に200歳のジョア婆さんは悲鳴を上げる。陽太は一人ため息をついた。


「アンタ大したことなさそうだな。誰が、どんな悪魔が取り憑いているんだい? オレにも分かる名前かな?」


アビゲイル嬢は、口を大きく開けて下品に笑う。窓ガラスは揺れ、家が大きく軋みの音を立てた。


「はははははは! 聞いて驚け。ワシは大悪魔アスタロトさまだ!」

「ま! アスタロトですって? かなわない。地獄の順列第三位と言われる大悪魔だわ!」


それを聞いた陽太は完全に拍子抜け。

──しらけた。

完全にしらけてしまった。

アスタロトがそんなこと出来る分けない。今フランスにいるし、心臓は陽太の胸の中にある。


つまり、アビゲイルは今までの人生を悲観し続けていくうちに、自分の中にもう一人の自分を作ってしまったのであろう。それは災厄をもたらす悪魔。聞いたことのある悪魔の名前をつけてそれらしく振る舞っているだけだ。自分は悪魔になったと思い込んでいるだけ。

その思い込みで念動力が使えるなんて逆に大したもんだと感心さえ憶えた。


「ジョアさん」

「え?」


「二人だけにしてもらえます?」

「え? あなた、一人で大丈夫?」


「オレが部屋から出る頃にはこの娘いい子になってますよ」

「ああ、そう? え? マジで?」


ジョアは部屋から出てドアをしめた。

アビゲイルは一人残った陽太に不気味さを感じたのであろう。ベットの上で威嚇に白い歯を剥き出しにした。

陽太は、木のイスに腰を下ろしてそんな彼女を見つめた。

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