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第173話 イギリス組、フランス組

「あの〜。オレのためにイギリスに行くんですよね?」

「あ、陽太はイギリス? じゃ、後で落ち合おう」


すでにパリにと決めている前野。

海に囲まれてるイギリスとフランスでどうやって落ち合うのか。

ここで激昂してはいけない。

心強い仲間。心強い仲間。なんとかなだめなくては。


「旅費とかパスポートとかさぁ、あるじゃないっすかぁ」

「アンタなに言ってんの?」

「瞬間移動すりゃいいじゃん」


ごもっとも。しかし人間の陽太だけはパスポートや入国のことばかり気にかかる。

そんな陽太をよそに女子二人は買い物の話ばかり。


「現地の警察に捕まったらどうするの? 強制送還されちゃうじゃん?」


だが意に介さず。

女子の二人は顔を見合わせて一回転。

とても美しいパリジャンヌに変化。

陽太は明日香の可愛らしさに思わず言葉を失うがそれではいけない。

なんとか食い下がって付いて来てもらおうとすると、竹丸も顔をツルんとなでる。

そこには見事な白人青年がいた。


「フランス語は大学で取っていたので大丈夫です」


陽太は焦った。

頼みの竹丸もパリに行く気まんまん。

修行は? 自分を守ると言う任務は?

前野と遊びに行くことが先攻して後回しになってしまったようだ。


「ちょっとちょっとぉ! イギリスにオレ、一人? げ、言語は? オレ一人でどうするのぉ?」


そんな陽太に女子二人はいつもの冷たい目。


「まただ。鬼のときと一緒」

「泣き言ばっかり」


「そりゃぁ、お二人はいいでしょうよ。長生きしてらっしゃるから他国の言葉もわかるでしょーよ! でもオレはただの不死身ってだけの男。そんなのが現地の魔女とコミュニケーションなんて無理だよ~」


ここはなんとかしてもらわないとならない。

別にイギリスに四人で行くってことでいいじゃねぇかと陽太は主張。

どうにもならないと思ったのか、陽太はいつの間にか土下座の姿勢をとっていた。

前野は知らんぷりだが、明日香はにこやかに陽太の前に立った。


「でもまぁ、カワイイ旦那さんに見限られたくないし」


そう言うと、パチンと指をならす。

そこで明日香が英語で話しかけて来る。

英語だ。陽太は少しばかり学力がある。話すことは出来ないと思ったが、分かる。分かるのだ。

陽太も、すぐに英語で言葉を返した。

明日香の魔法で一気に英語を習得したのだ。

修行を繰り返して来た前野は、安易に能力を得ることは嫌う。すぐさま軽蔑の目をした。


「きた。なーーーい」

「いいじゃないですか〜。だって、オレ悪魔だも〜ん」


悪びれない陽太。英語を習得したことでテンションが上がっている。

明日香も嬉しそうに話す。


「んふ。そーだね。ヒナタもどんどん一族になるようで嬉しい!」


そう。悪魔。自己嫌悪に陥るズルくなる自分。

前野はすぐにツッコミをいれる。


「容姿は? どーすんの?」


容姿は変えられない。日本人のままだ。

他のメンバーとは魔力が違う。


「まぁ、ヒナタにはちょっと無理かな? 例え変わったとしても、それを保ち続ける魔力がないもんね」


そう。明日香の言う通りだった。

魔力の器をもっと深くしたいのはそのためだ。

だからこそのイギリス。だからこその仲間の付き添い。


「まぁ、警察に捕まんないように努力しな。捕まりそうになったら瞬間移動! 頑張れ」


やはり。前野はまったく付いてくる気がさらさらない。


「は、はい。……やっぱり、三人はフランスでオレだけイギリス??」

「まぁ、何かあればすぐに行くから」


前野は完全に突き放す。明日香へ助けを求める目を向ける。


「そーだね。じゃぁ助けは電話かラインで」


こっちも全然その気がなかった。


「ま、魔女への謝礼は?」

「だって、相手の欲しくないもの持っててもしょうがないでしょ? 向こうに行ったら聞いて、自分でなんとかするの。ダメなら私に連絡。それでいいじゃん」


ひどい。異国の知らない人に会いに行くというのに、みんな遊ぶことばかり。

ついこの前まで地獄で死にかけてたというのに陽太に優しくない。

優しくないのだ。

そんな陽太の気持ちも空しく、三人は外国旅行に大変盛り上がっていた。

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