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第172話 解読

「ただいまー。わ! タケちゃん。どーしたの?」


そこには前野の驚いた顔。


「ありゃ? どーした?」


明日香も不思議そうな顔をして部屋の中に入って来た。

仲間の二人。いつもは人の生き死になど関係二人だがこれほど心強いことは無い。

二人とも大きく安堵のため息をついた。

そこに明日香が近づいてくる。


「なにがあったの?」

「実は、三伯爵が来て、さっきまで遊んでたんだけど」


「え、いーなー」

「チガウチガウ。こんな手紙を置いてったんだ!」


陽太は、明日香に手紙を渡す。

そして竹丸に教えられた場所を指差しながら説明をした。


「オレが公爵の器じゃないから三人で力を合わせてオレを殺すって!」

「え?」


明日香はその文字が読めるのであろう。

ぜんぜんそんなこと書いていないというような顔。

陽太はその文字の意味が未だに分からない。


「違うの?」

「そんなこと、全然書いてないけど?」


やはり。書いてはいなかった。

竹丸は自分が間違った翻訳したことを恥じて頭を掻いてもう一度手紙をのぞき込む。


「そうなんですか? 私も簡単な単語しかわからないので」

「もう、二人とも勉強不足だね。こう書いてあるよ」


明日香は二人に向かい、単語を指差しながら手紙を読み出した。


「前略 ヒナタ公爵さま、魔力の器がないという話しでしたので私たち三人力を合わせて死に物狂いで調査をしました」


それを聞いた竹丸はプッと吹きだす。

単語、単語の読み間違えだ。大筋が読めていない。笑って当然であった。


「そう書いてあったんですか。フフ。すいません」


陽太もホッとする。テンションが元に戻って声が大きくなった。


「あー。なんだ! そうかぁ~。おかしいと思ったんだよな〜」

「続きがあるよ」


「うんうん。どんな?」

「人間界にジョアという魔女がいます。それが魔力を貯める方法を伝授出来るらしいです。裏に地図を書いておきますので、ぜひとも訪れて下さい。ただ、何かしら謝礼が必要かもしれません。その辺は大閣下と相談して下さい。早々」


「おー! すごい!」


魔力の器。マジックパワーの底。それはどこにあるか分からない。

しかしそれを貯める方法はこの世界にいる魔女が知っている。謝礼は気になるが、なんとかなりそうだ。

陽太は小さくガッツポーズをとった。これなら天使の奇襲にも耐えられるであろう。

今の自分ではどうにもならないが、人の助けによってどうにかなる。

それに前野も感心の声をあげた。


「へー。アンタもいよいよ本格的か」

「そーですね。アスタロトの眠ってる力ももったいないですし。この前、残虐に殴られ倒して、あ~、治す力だだけじゃなく、防御する力が欲しいと思ってましたもん。魔力の幅が増えればそれも出来ますしね」


明日香も魔力の応用を考えている陽太を讃えた。


「うむ。その意気だ」

「ありがとーございまーす」


そこに前野。

前野は陽太を押しのけて手紙を裏返す。


「どーれ。地図は?」


手紙の裏に地図。

前野がひっくり返したそれを凝視し、驚きの声をあげる。


「わ!」


滅多なことにおどろかない彼女に竹丸が聞き返す。


「どうしました?」

「イギリスだ」


「まぁ、日本人の名前じゃないですもんね」


たしかにジョアの名前は日本人の名前ではない。

イギリスはかなり遠い。アメリカを挟んで隣りといえばそうかもしれないがまるっきり反対方向だ。

しかし三人がいればどうにかなるのかと陽太が思った矢先。


「どうせ外国いくならパリがいいな~」


という前野の声。

これは観光ではない。しかし前野はそれだけで盛り上がっている。

明日香も同調して喜んだ。


「いいね~!」


竹丸はあきれた。


「言葉大丈夫なんですか?」

「大丈夫だよ。少しくらいならしゃべれるし。アっちゃんもいるし~」

「まかせといて~。」


「アッちゃん。フランスはね〜。ワインが美味しいよ〜」

「マジ?」


「料理も、すっごいんだから!」

「んふんふんふ」


盛り上がる女子。だがパリは全然関係ない。

なにを盛り上がっているのだろう。しかし、強くいえばこの二人の機嫌が悪くなる。

そればかりは恐ろしい。大悪魔と大妖怪。

なんとかなだめすかしてイギリスに一緒に行ってもらわないとならない。

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