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第170話 悪魔っ気

到着すると、みんな酒好きなのでビールで乾杯。陽太だけオレンジジュース。

出てくる料理にそれぞれ、ビックリしている。


「おーーー! ヤキトーリー!」

「おーーー! オサシーーーミーー!」

「この豆腐にかかってるのは何ですかぁ? おーーー! カツオブーシー!」


豆腐は分かるのかとイポスに突っ込みたい陽太。

しかし三人の行動がいまいち分からない。観光なのか、明日香に会いに来たのか。

そんな中、天狗の竹丸に興味を持ったグラシャラボラスと竹丸は意気投合。

互いに日本酒を飲み始めていた。


「ほう。竹丸どのは実は天に住う犬だったのですね。しかし私たち同様堕天した?」

「いえいえ。天より堕つるという意味では堕天ですが、懲罰の意味ではありません」


「ではついうっかり?」

「まぁそうですね。いえ私がではありませんよ? 先祖がです。いずれ修行して神仙となれば天に戻れます」


「なるほど。気が遠くなりますね。どうです。そんなこと忘れて我々と楽しく暮らしませんか?」

「そうですねぇ。きっと楽しいでしょうけど一族がおりますので、ご遠慮申し上げます」


「HAHAHAHAHAHA! なんと気持ちのよいお方でしょう。あなたは天の犬。私の姿は魔の犬。遥か昔はつながりがあるのかも知れません。今度、系譜を調べませんか?」

「いいですね。私もグラシャラボラス卿にとても親近感があります」


竹丸の言葉は社交辞令だろうか。それとも本気だろうか。

グラシャラボラスは大変気持ち良くなり、陽太の方を見て満面の笑みを浮かべた。


「竹丸どのの一族とは親戚かも知れませんぞ。ヒナタ公」

「あは。そうなればオレの兄が二人になるようで嬉しいです」


三伯爵は酒もあってか、上機嫌。

竹丸も楽しそうだ。天狗の郷を離れてそれほど娯楽が無い。

こうしてたくさんといるのが元々好きなのだ。

だが一人酔っていない陽太。三人の目的が未だに分からない。そして聞きたいこともあった。


「あの~。お三方?」

「なんです? ヒナタ公」


「最近オレ、天使に狙われてるっつーか。この短い期間に2回襲われてるんですよ。それが、ここにオレを含めて4人もいたらヤバいと思いません?」


陽太のことを良く知る竹丸も知りたかったことだ。

天使たちが警備を強化しているとはおだやかではない。

三伯爵ならばその理由を知っているかもしれない。

だが三人はそれにも陽気に答える。


「そうそう。ですから我々は気配を消してますよ」

「この中で悪魔っ気が出てるのはヒナタ公だけです」


平然と。やはりそういう方法があるのだ。

陽太の中に埋められているアスタロトの心臓。

それが天使にとっては大捕り物なのであろう。

悪魔たちはその気配を消すことも出来る。

明日香なんて全然教われることはない。つまりやり方を知らない陽太だけが狙われても当然なのだ。

一人だけ地上で「ここです」という信号を発信しているのだから。

陽太は、ガックリとうなだれテーブルに頭をぶつけた。


「悪魔っ気……。どのくらいっスか?」


三伯爵は陽太の暗い質問に真顔になって向かい合った。


「いやぁ。まぁ。普段は微弱ですが……」

「わざと挑発してるのかと思いました」

「うん……たまに大閣下に近いのがグンと来ますなぁ」


それは悪魔の波動信号。

天界に向かって敵意むき出しの。

初めて聞いた。誰にも教わっていない。

アスタロトの心臓を埋められてからずっと出っぱなしだったのだ。

それは天界側が動いて当然であろう。

つまり、今でも襲われる可能性は充分にある。陽太はグラシャラボラスの方を向いて震えながら聞いた。


「せ、先生」

「なんでしょう?」


「悪魔っ気がでなくなるやり方教えて下さい」

「うぐお!」


「なにが、うぐお なんですか?」

「いやぁ、我々は堕天したもの。大閣下は元神から信仰によって悪魔化したもの。系列が若干違いますからね。大閣下に直接お聞きした方がよいかと……」


「……そうなんだ」


こちらは真剣なのに、とつぜんイポスとモラクスからの笑い声。

陽太の告白が面白いらしい。


「なるほど、それでラファエルに襲われたと言うわけですか」

「はっはっはっは。こりゃ愉快愉快。浮き世の労苦を忘れますな」


腹を抱えて笑う二人。べつに悪気があってのことではない。

明日香と同じ魔力の持ち主である陽太ならば簡単に危険を避けると思っているからだ。

しかし陽太にはそんな簡単にできることではない。

声を震わしながら凄んだ。


「三伯爵ぅぅぅ。きょうら!」


まさか怒るとは思わなかった三伯爵。

突然の主君の怒りに抱き合いながら答える。


「は、はい!」


だが陽太の顔は泣きそう。

横にいる竹丸の袖を引っ張り三人には懇願し始めた。


「帰り道、ちゃんと護衛してね? 逃げちゃやだよ? あークソ! アスカもいないのにぃぃー!!」


もう恥も外聞も無い。ラファエルなんて避けられる敵じゃないのに、アスタロトの信号はでっぱなし。

この中に人など一人もいないのだが、もはやこの四人だけが陽太の頼みの綱だ。

だが三伯爵は笑い出す。


「大丈夫。大丈夫ですよぉ!」

「そうそう。生半可な雑魚天使だったら気付きませんって」


三伯爵の言葉に安堵のため息。天界だってヒマではない。

三人がいうならばそうなのかもしれない。


陽太がそう思っていると、三伯爵は任務が終わったかのように残った酒をそのままにして立ち上がった。


「どれ、我々は観光してから帰りますか?」

「そーですな」

「ではヒナタ公。これを」


そう言ったのは、モラクス。彼は財布から数万円渡してきた。

日本円だ。悪魔がなぜ? という顔をしているとモラクスはニッコリと笑う。


「我々のしろですよ」


ポカンとしている陽太にグラシャラボラスがその金の出所をこっそりと教えた。


「モラクス卿は世界中の財宝がどこにあるか分かりますから。そのお金も日本で過去に落とされたものを回収しただけのものです」


つまりモラクスに頼めばお金なんて無尽蔵。

ケチな陽太は叫びたいぐらい喜んだ。

だが自分は彼らよりも階級が高いし尊敬もされている。

ここは貴族らしく気品を漂わせてお礼を言おうと決めた。


「さようか。では受け取っておこう」

「プフ……。似合いませんね」


イポスの笑い声。やはり似合っていなかった。

ニセ外国人の三人はほろ酔い気分で出て行く。行く先はどこの観光地か。

富士山とか琵琶湖とかそういうところかもしれない。

残ったのは竹丸と陽太の二人。

竹丸は先ほどの余韻にひたりながら、日本酒を美味しそうに飲んでいた。


「いやぁ、うまい」

「ホントに天狗さんみたいに真っ赤になりますよ?」


「ふふ。しかし先ほどの話しですが」

「ん?」


「雑魚に気付かれないってことは大物には気付かれるってことですよね?」

「ぅおい! そーだよ! アイツらぁぁーーー!!」


やっぱり怖い。大物ってことは能天使とか熾天使の皆さん。

それに襲われたらひとたまりも無い。頼りは竹丸しかいない。

モラクスにもらった金で陽太は早々に勘定をすませた。

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