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第160話 悪魔の助け

「だれじゃ! そなたは!」


しかし星熊童子は声を上げる。

どうやら知り合いでは無さそうだ。

鬼の仲間ではない。声の質から邪魔者扱いなのだ。


酒呑童子も茨木童子もその部下たちも身構える。


だが巨人は、この凶悪な鬼たちを雑魚扱いだった。ものも言わず金棒を振るい、鬼たちをなぎ倒し、あっという間に血の塊にしてしまった。あの強敵だった鬼たちを。陽太は訳が分からずそちらの方に顔を向けると、それは被っていたフルヘルムを取る。そこから長い金髪がこぼれる。美形な偉丈夫。耳の上には水牛のような太くて長い角。

その美しき巨人は陽太を指差す。


「牢番。の方を解放せよ」

「い、いひぃぃぃーーー!!」


牢番はその場に平伏した。


「む、無理でございますぅぅぅうう!! 彼のものは特大級の罪人故、熾天使様みずから投獄なされたもの。どうかご容赦を」

「左様であるか」


そう言うと、腰に手を当てたまま陽太に近づき金棒を構える。

まだ油断できないと思った陽太は恐怖に顔を引きつらせた。

巨人の腕が大きく振り上げられ、それが打ち下ろされる。陽太は目を閉じたが、金棒の打撃音は顔の脇から。

目を開けると、陽太の周りの岩を金棒で滅多打ちにしだした。


その間に陽太の下あごは治癒し、なんとか話せるようになっていた。


「あ、あの~」

「難儀でしたな。ヒナタどの」


「え? お、オレの名前……」

「私は、サルガタナスでございます。大公国の大公爵。地獄帝国の旅団長。此の度は主命によりあなた様を捜索しておりました」


聞いたことのある名前。そう。ザムエルとの戦いの時に明日香が言っていた。この指環はサルガタナスに贈ったものだと。と言うことは明日香の部下。ようやく陽太はホッとした。


「ああ、よかった。アスカが……」


牢番は驚いて腰が抜けてしまった。


「えええ!! サルガタナス将軍!? で、では、この方は……」

「うむ。我が君の夫となられるお方である」


余りのことに牢番は泡を吹いて気絶してしまった。

サルガタナスはその牢番を指差し陽太へと尋ねる。


「これは、女ですか?」

「いえ……チガウと思います」


「ふむ。違いましたか。では浮気ではない??」

「う、浮気!?」


「はっはっは。我が君の夫となられる方が不誠実でなくて良かったですわい!」


そう言いながら、また金棒を振るい陽太の周りの岩を破壊しつづけた。そのまま世間話をするように陽太に尋ねる。


「……しかし、なぜ地獄最下層コキュートスに?」

「いやあのぅ。熾天使ラファエルに捕まってしまって……」


「ほ、ほう! これはすごい!」

「前に能天使を倒したことの逆襲だと思います。人間の友人がいたのでそれを異空間から出すのに魔力使いすぎて、ここに堕とされたんです」  


「左様ですか。左様ですか。やはり、生半可な岩ではないはずです」

「え?」


「壊せませんな。はっはっはっは。愉快です。どうです? そこを居住地としたら……」


「い、イヤですよ! な、なんとかなりませんか?」

「はっはっは。そーですな~。大閣下の魔力とネビロス卿の魔力を合わせればなんとかなるやもしれません。ちょっと呼んできましょう」


そう言うと、サルガタナスは一礼すると、黒マントをひるがえして出て行ってしまった。


残ったのは、陽太と牢番の二人。

目を覚ました牢番は、しらけた顔の陽太の目の前に水を差し出してきたが、陽太は顔を背けて冷たい視線を向けた。


「あーあ。アスタロトが来たら殺されちゃうかもな~……」


牢番は焦った表情をしながら懐から布を出し、陽太の体に付着している血や汗を拭き始めた。

陽太は、そうされても大きくため息をつくだけ。吹き終えた牢番を見据えながら明日香の真似をして威厳を持った口調で牢番に話しかけた。


「足下の名はなんという」

「ケ、ケ、ケ、ケビンでございます」


「ケビン。高貴な方のお出ましである。さっさと床を掃除せよ!」

「は! はは!」


牢番の黒小人は、たくさんの仲間を引き連れ鬼たちの遺骸を片付け、鏡のように光るほど床の掃除をした。


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