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第156話 地獄最下層

その頃、陽太は真っ暗闇の中で目を覚ました。

ひんやりとした岩に囲まれているようだ。

辺りは静まりかえり、上から滴る雫が床に落ちる音が鳴り響いていた。


「こ、ここは……?」


辺りを見回そうにも暗闇過ぎて見えない。

しかも陽太の四肢は岩に埋め込まれ身動きがとれない。

腰から上だけが出ている形だ。

どうやら服も着ていない。裸のままで岩に埋められ、棄てられてしまったようだった。


「だ、誰かいませんかーーー!!」


そう叫ぶも物音一つしない。


「はぁ……。どこなんだ? ここ……」

「……ここは、(しゅ)への裏切り者の地獄ですよ」


暗闇から声がした。

それは陽太の腰より下の方からの声。

見えないながらも陽太はそちらに視線を落とした。


「じ、地獄!?」

「……まぁ、日本支部ですけどね。地獄の最深部です」


「え? オレ、生きたまま地獄に堕ちちゃったの? あなたは一体誰ですか……?」

「私は牢番ですよ」


牢番。つまりここは牢屋と言うことなのだろう。

しかし一人ではなかった。幾分ホッとして、牢番に助けを乞う。


「た、助けてくださ~い……。オレ、何もしてないのに……」

「何もしてないのに、ここに堕ちるわけないでしょ? そうやって私を惑わす気ですね。さすが悪魔。怖い怖い」


カチリカチリと石を叩く音が聞こえたと思ったら、揺らめく小さな炎。牢番が、小さなろうそくに火を灯したのだ。


「あ、明るい……」


牢番が見える。それは、黒い小人だった。

とんがり帽子を被り、衣服は粗末な布。ベルトには牢屋のカギのようなものをぶら下げているが、鉄格子の扉の中にいるわけではない。そのカギは自分のものではないのであろう。

何百年、何千年とここで番をしているのであろうか?

人骨に紐をつけたものをクルクル回して暇つぶししていた。


陽太は、自力で脱出しようと魔力を込めて封じている岩を破ろうとする。


「ふぬぬぬぬぬぬぬ!!」


しかし、ダメだった。顔が真っ赤になっただけ。

岩によって完全に手足が固められている。

どうやらこれはただの岩ではないようだ。


これでは、一人ではどうにもならない。

陽太は灯りの下にいる黒小人の牢番に声をかけることにした。


「あの……」

「はい?」


「ここは地獄なんですよね? 後でお礼するんで、地続きになってるかどうか分かりませんがアスタロト大公国のアスタロトか、ネビロスさんをよんで来てもらえません?」


これで安心だ。彼らなら何とかしてくれるだろう。陽太は地獄内で良かったと安心して牢番に頼んだのだ。

しかし牢番はその言葉を鼻で笑って、近くに立てかけてあったこん棒を手に握った。

それをもう片手にポンポンと数度弾ませ、近づいてきたかと思うと、大きく飛び上がって力一杯陽太の頭を殴った。


「いたぁ!」

「オマエ、バカじゃねーの? そんな身分の高い人が会ってくれる分けねーだろ!」


突然の豹変。陽太の頭は何度も何度もこん棒で打ち据えられ血が噴き出してきたからたまらない。

こんなところは早く抜け出なくては。

しかし頼む相手はこの牢番しかいない。


会う、会えないと言うことは知っていると言うこと。

やはり知名度は高い。何とかなだめて分かって貰うしかない。

陽太は動けないまま懇願した。


「ホントです……。本当なんです……。アスタロトに頼んで絶対に謝礼をさせます。オレ、夫になるものなんです……」


しかしやはり、信じてもらえずますます殴られるばかり。


「なんで、男女の別がない大公爵さまが夫をめとるんだ! そんなウソばかりつくからこんな地獄に落とされるのだ!」


暇つぶしなのか、何百年もの溜まりに溜まったストレスなのか。

余りに殴られて、陽太は気を失った。


何を言ってもダメ。

瞬間移動も出来ない。


陽太はここで死んでしまうのだろうか。

彼の脳裏に母と明日香の顔が浮かんだまま目を閉じた。

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