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第150話 修羅場手前

家に帰ってきた陽太は大きくため息をつく。


「ふぅ~~……」


そのままソファーベッドにゴロリと転がる。


「あーーー! 魔力結構使った!」


いつも明日香が寝ているベッドの方をチラリと見る。

やはりそこには明日香はいない。


「アッちゃーーーん! 魔力回復しようよーーー!!」


といつものように叫ぶが、返事はない。


「あー……。疲れた。ダメ。アスカぁ。いつ帰って来るんだよぉ」


テーブルの上には貴根からもらったプレゼントの袋が見えた。


「あ、アスカにあんまり見られない方がいいだろうな」


そう。別の女からプレゼントされたものを見られたら咎められるかもしれない。

陽太が手を上げると、袋は吸い込まれるように手元に。


「だから、魔力使うなっつってんだろうがよぉ~。はー。疲れる。ヨレヨレ」


陽太は自分自身に突っ込んだ。

魔力が切れ気味。それは体力にも影響する。今は寝転んでいるからいいが、立ち上がるのも億劫なほど疲れていた。

そんな中、貴根からの袋を開けて改めてキーホルダーを見てみると驚いた。


「あれ? カギが付いてる。……ウソだろ。貴根さん、自分のカギつけて渡したのかよぉ」


カギくれるということは、つまりそういうことなんだろうが、陽太にはそんなつもりはない。

彼女は流辺のもとへと帰るべきなのだ。

しかし心配になる。彼女はもう一つカギ持っているのだろうか。

瞬間移動で帰ってきたものの、もう夕方だ。返しに行くしかない。


魔力が少ない陽太は、フラフラになりながら靴をはいてもう一度歩き出す。

しかししんどい。途中のコンビニでチョコレートと甘ったるい飲み物を買った。

悪魔の好物の甘いもの。これで疲れを取ろうと考えたのだ。

裏路地に入って、大通りに背中を向け甘いものを貪った。


「あ~……。うん」


少しは回復したかもしれない。気だるさが薄らいだ。

帰りの片道分瞬間移動できるかもしれない。

そしたら家で横になればいい。


それなりの足取りで貴根のいるアパートへ到着。

彼女は部屋の前で座り込んでいたので思わず顔を抑える。


「もしもし? カギ一個しか持ってないんですか? あなた」


貴根は顔を上げて嬉しそうに笑った。


「今ね、賭けてたの。合鍵を持ってるスバルが来るのか、ヒナタくんが来るのか。最初に来た方が守護天使だって」


また顔を抑える陽太。裏目裏目だ。

流辺が先に来ていれば、二人で部屋に入りハッピーエンド。やったね。だったにも関わらず、自分の気持とは裏腹に流辺が来なかった。なんてツイてないやつ。

陽太はこれ以上貴根に好かれないように、鍵を彼女のそばへ放った。


「カギを返しに来ただけだよ。じゃ」


だが彼女は立ち上がり、陽太の手をガッシリと握る。


「キーホルダーのお礼、してくれるんでしょ?」

「ああ、うん」


「じゃ、部屋に入って行って」

「なんで?」


「それで諦めるから!」

「ウソでしょ。入っただけじゃすまないでしょ……」


「ねぇ! お願い! 最後のお願いだから!」

「ヤメてくれよ!」


もめる二人。その陽太の肩に温かい手の感触。

誰かが肩に手が置いたのだ。

振り返ると流辺が寂し気に笑って立っていた。


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