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第15話 同類同士

前野は妖しく笑いながら話を続けた。

だが、偉そうで余裕すら感じられる。


「あんた誰? 人じゃないわよね?」

「さーて。なんのことやら」


二人の間で空気が張り詰めた!

陽太には何のことか分からない。ただ、イスから半分だけ立って二人を交互にキョロキョロと見ることしか出来ない。だが前野は明日香に提案する。


「ま、仲良くしましょ。お互いに危害を加えなきゃぁ戦う必要もないしね」


それに明日香はポンと手を叩いた。


「そーだね。そうしよう。友だちになってよ」


「いーよ。今度買い物に行こうか? バイト代入ったら」

「いーね。私、そういうのやったことないからやってみたい」


「へー。最近なの? 人間界に出たの」

「そーね。今週から」


「え? 今週でこんなに溶け込んでるの? へー。ありえない」

「まぁね~」


張り詰めた空気から一気になだらかな友達路線の会話。話がどんどん進んでゆく。

前野からは軽く探りを入れてくるが、それを明日香がうまくかわすと言った感じだ。


「ふーん。天使? なわけないか。上級の魔物。匂いとかも消せるような」

「まぁまぁ、勘ぐりなさんな。そのうち仲良くなったら言うから」


「で? 彼がマスターなの? じゃー、浅川君も実は大魔術師ってわけか」

「ちょ」


「まーいーよ。浅川君も黙っててよ。ウチが人じゃないとか言ったらただじゃおかない」

「全然話が見えないんだけど」


「ふーん。やっぱ普通」

「はい」


「ま、ヒナタはヒナタ。私は私。いーじゃん。友だちになるんでしょ?」

「うん。だね。連絡先は? ラインやってる?」


「いや」

「スマホ持ってないの?」


「ヒナタ、スマホってなに?」


陽太は前野のことがさっぱり分からず、声も出ない感じだが、ポケットからスマホを取り出した。


「こ、これ」


明日香は陽太のスマホを手に取って一瞥した。


「へー。なるほど。ハイハイ」


途端に、ペキペキと音を立てながら空中に漆黒のスマホが出現!銀のドクロの飾りがあるカバーまでついていた。


趣味、悪。陽太はそう思ったが、それには流石に前野も驚いた。


「へー。すっごい魔力。ビックリしちゃった」


「ふっふ~。で? これ、どうすればいいの?」

「あのね~」


前野は、明日香の隣りに来てスマホを手に取ってポチポチとアプリをダウンロードしはじめた。それを覗き込む明日香。

陽太は一人、なぜ電話会社と契約していないのに電波とか来るのが不思議でならなかった。またまた悪魔の怖さを感じたのだった。


前野もダウンロード作業が終わり、微笑みながら明日香にそれを返す。

明日香もそれを笑顔で受け取る。

はたからみれば仲の良い友人同士そのものだった。


「へー。ありがと。いろいろ教えて」

「うんうん。こっちこそ」


そう言って二人は握手を交わした。手を握りながら明日香は


「ヒナタを誘惑しちゃやだよ?」


と言われて、前野はチラリと陽太の方を見た。


「まっさかぁ~。興味ないよぉ~」


ヒドい。興味がないが一番堪える。傷つく陽太に構わず二人は話しを続けた。


「やっぱり、大物?」

「だね。貧乏な身から玉の輿に乗るってのが好きなんだ」


「ふーん。私も興味があるなぁ。でもまいっか」

「そぉ? 面白いのに」


美麗な二人で女子トーク。前野は人ではなかった。

では一体なんなのか? あっちも悪魔なのか?

と、陽太は思っていたがただ二人の様子を見ることしかできなかった。

だいたいにして、死神の宮川。あれは明日香の正体に気づかなかった。明日香は言っていた。魔力の量が違うと。で、あるならば前野はなぜ分かる? 明日香と魔力の量が近いと言うことか? あの死神を一瞬で焼き殺してしまった明日香の魔力に。


休憩も終わり、二人のことを思いながら陽太は仕事を続けた。


夕方。店長が来て、陽太たちは別なシフトのメンバーと交代した。


「じゃーね。アッちゃん。またね!」

「うん。タマちゃんもね~」


前野と別れ、二人は部屋に向かって歩き出した。

陽太はうれしそうな明日香の顔を横目で見る。


アッちゃんにタマちゃん。人じゃない者同士の友達。陽太がそんなこと考えていると、明日香は嬉しそうに陽太の方を向いた。


「やった! 初めて友人ができたぞ。良いもんだなぁ。人間界も」


「あの」

「うむ」


「前野さんって」

「うむ。この日本には馴染みの深い妖怪なのであろうな」


陽太はギョッとした。

会話でだいたいは分かってはいたが、やはり前野は人間ではないのか、と。


「え? 妖怪?」

「うむ。まー。よくぞここまで修行したもんだ。驚いた。神が創造したものとは違う。生まれてからあのように不老長生の術を身につけるとは並ではできまい」


「不老長生って?」

「うむ。キツネだ。九つの尾を持つキツネ」


「え? 九尾の狐?」

「そーだ。ポピュラーなもんなんだろう?」


ポピュラーではない。しかし、九尾の狐と言えば陽太でも名前だけなら知っていた。


「足下たちは生きてせいぜい100年であろう。どんなに医療が充実したといえども。あやつは何千年生きておるのやら。素晴らしい! 尊敬に値するわい」

「そーか。アスカがそういうならそーなんだろうなぁ」


とにかく、明日香と前野は二人は仲良くなった。

二人で出かけることが多くなった。


陽太にとっては自由の時間ができてよくなったが。やはり少しだけ寂しいと感じるのだった。

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