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第139話 困ったことになった

休みの日。目を覚ますと隣に明日香は寝ていない。

それは当然のことなのに、少しだけ部屋を探し苦笑する。

たしかに寂しい。休日だと言うのに何もすることがないのは嫌なので、服を着替えて陽太は一人街の中へ。

ブラブラと当てもなくうろつく街。

普段なら騒々しい明日香が隣りにいてヒヤヒヤしているのにそれがない。

そして目的もないのだ。

二人で安い定食を探しているわけでもない。

悪魔が好きな甘いものを探しているわけでも。


さんざん歩いてたどり着いたのは貴根と共にグリエルに襲われた公園。

一人ベンチに腰かけて空を見て考えていた。


「はぁ。地獄帝国のアスタロト大公国のヒナタ公爵さまか。よく考えたらすごいことだよな。オレの将来どうなっちゃうんだろ? やっぱ、死んだら地獄に行くのかな? 帝国の重役のアスカの……それの夫って」


よく考えたことなどなかった。

考えられないのはよく知らないため。


しかし、明日香のことが好きだ。

ずっと一緒にいれたら楽しいだろう思う。


ネビロスとか、グラシャラボラスとか。

イポスや、ナベリウスも上品で人が良さそうだった。

恐ろしい能天使のグリエルよりも、よほど友好的なのは仲間だと思っているからであろう。


しかし爵位がよくわからない。

陽太はスマホを取り出し、電子辞書で調べ始めた。


すると爵位は公爵が一番上。

その次が侯爵。即ちナベリウスの地位だ。

その次が伯爵。イポスとグラシャラボラス。

その下が子爵で男爵。


つまり、自分の爵位はあの三人より上なのだ。


まだ17歳でで、少し浮気心だした、一歩間違えれば最低男になってたやつがそんなに階級が上。

陽太はその時のことがフラッシュバックし、口をへの字に曲げてため息をついた。


「はぁ~……」


陽太が座っているベンチの横にトスンと誰かが座ったのを感じた。

それに顔を向けると


「なにため息ついてるの? 幸せ逃げちゃうよ?」

「わ、わ~……」


陽太が驚きの声を上げるのも無理はない。

それは渦中の貴根であった。


「なに驚いてるの? 失礼しちゃう」

「いやぁ。急に隣に座られただ誰でもビックリするでしょーよ!」


「ふふ。たしかにそーだね。」

「はー。ビックリした。どうしたの?」


「いやぁ。休みヒマだし。ここに浅川くんいるかな~って思ったらやっぱりいた」

「あ。そう……」


前だったら感激するシチュエーション。

しかし今は前野の言葉もあり後ろめたい。

彼女の身に触れないように少し距離をとるも、貴根はその距離も詰めてしまい、陽太はベンチの縁まで追いやられてしまった。


「ねぇ。今日彼女は?」

「あ、いや~。故郷にちょっと帰ってる」


「へー。どこなの?」

「どこって……。えーとね…。クゴヂ町……?」


「え? どこ。それ?」

「いや、まー。いいじゃん。彼女のことは」


「そーだね。あんまり聞きたくないし」

「え? いや、ちょっと。なに?」


迫ってくる貴根。意味深な言葉。

陽太の顔に赤みがさす。


「あ。今日スバルくんは?」

「さて? どっか行っちゃった。また政治家の先生のとこだよ。……たぶん」


貴根の様子に陽太は頭を抱えた。

これはつまり流辺はまだ貴根へ愛の告白をしていない。

それでいて彼女を置き去り。

だから、彼女の気持ちは宙に浮いているのであろうと察したのだ。


「ねぇ。二人でどこか行かない?」


そう言いながら誘ってくる貴根。

嬉しい気持ちが押し寄せる反面、それは最低男。

前野、竹丸、グリエル、明日香と空中から睨みつけられているようだ。

陽太は首を振ってそれらを振り払うが、その幻想が混じり合って新しく出来た顔はネビロス。陽太は恐ろしくなって震えた。


「ほほう。ヒナタ卿は閣下の他に女性(にょしょう)が入り用ですか」


と言いそうだが、顔は怒っているのが想像できる。

一生頭が上がらなそう。それに明日香がいるのに他の女性などと。



「閻魔様も謝るほどの罰のお時間です」


前野の顔も浮かんでくる。

これは怖い。想像だけで気を失いそうだ。



陽太はようやく彼女の問いに答えた。


「うん。行かない。行かない。彼女いるし。二人っきりはダメ……」


貴根は少し寂しそうな顔をし、うつむいてしまった。


「……じゃぁ、この前は気まぐれに キス したの?」

「いやいやいやいや、ちょっとォ。そうじゃないよ。あの時、炎に囲まれてたから、空気薄くなって窒息しちゃこまるから息をいれたんじゃないか」


そんな陽太の言葉など押し切るように貴根の顔が近づいてくる。

陽太はベンチの縁に追い詰められていたが、更にベンチからはみ出るように身を反らした。


「私、浅川くんのこと……」


貴根の陽太への恋心はくすぶっていたが、本人目の前に燃え上がる。陽太も明日香が来る前だったらその言葉の先を聞いたが、今はもうそれ以上は聞けない。


「ストップ!」

「え……?」


「じゃぁ~……。ちょっとだけ どこか行く?」

「え!? うん! 行く行くぅ~!」


大変可愛らしい様子ではしゃぐ彼女にドキリとしてしまった。

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