第119話 強力? 助っ人
そこに、陽太と陣内が姿を現した。ナイスタイミング!
桜庭とザムエルは突然の来訪者に驚いて目を丸くした。
「え? は? ど、どこから?」
陣内の目にはヒジャブが取れたラティファを抱えている桜庭。
陣内は激高した!
「な、なにしてんだよ! あんた!」
「おう。王子様の登場か」
桜庭はトレーニングルームの端にあるマットの上に力が弱くなったラティファを置くと、筋肉隆々の拳を構えた。
それに合わせて陣内もファイティングポーズをとる。
「こ、こんな感じか? ら、ラティファ! 今、今助けるから!」
ラティファはぐったりとしていたが陣内の声に反応して首を力なくこちらへ向ける。
ラティファにとっては魔力は生命力のようなものだ。それを失ってしまった彼女は弱り切ってその内に死んでしまうのであろう。
桜庭はいくら強くなったと言え、陣内の俊敏な動きは認めていた。完全に勝てるようになるまでもう行って欲しい。
「おい、ザムエル」
「はい?」
「魔力が増したんだろ? オレをもっともっと強くしろ」
ザムエルはニヤリと笑うと指をクルクルと回した。
とたんに桜庭の体がブワブワと筋肉が増量されてゆく。
それに陽太も陣内も驚いたが、桜庭はその筋肉が増えてゆくさまを見て口を大きく開けて笑った。
「はは! すげぇ! すげぇ!」
「な、なんてことだ……」
陽太にも感じられるザムエルの魔力の増量。桜庭の人を超越仕掛けている力。
陣内は拳を握って桜庭に殴りかかったが、ピンと指ではじかれ、壁に吹っ飛んで激突した。
余りの激しい音に痛みを想像して陽太は目をつぶる。
陣内は、壁の下で目を白黒させていた。
陣内は身体能力は人類トップクラスと言えども、なんの武術の心得もない。破れて当然と言えば当然だ。
陽太には感じる。あの悪魔もさっきより魔力が増してることを。
代わりにラティファの魔力がほぼゼロに近い。
つまりラティファの魔力があの悪魔に吸い取られた。
そう言う技を持ってる悪魔なんだと考えた。
「へー。桜庭一至か。アンタ勝てる?」
突然、ここにいるものではないものの声。
それは聞き覚えのある前野の声であった。
見ると陽太の胸ポケットから小さい前野が飛び出してそれがだんだん大きくなる。
「はーい。なんかアンタ見つけたから、小さくなって付いて来た。瞬間移動もものにしちゃって。すごいすごい」
突然でできて、この緊迫した状況をものともせず軽い感じで陽太を褒める。陽太はあっけにとられたが考えてみれば強力な助っ人。途端に気持ちが大きくなった。
「師匠、あざーす」
褒められたことの返礼に陽太は頭を下げる。
そして桜庭。彼の顔から闘志が消え、テンション高めに二人に近づいて来た。
「すげぇ! エムドの女じゃん。オレ、何回も買いに行ってます。覚えてるっすか?」
桜庭は前野の隠れファンだったのだ。
かなり鼻息荒く嬉しそうに自分の顔を指差す桜庭。
その顔は真っ赤。意外と純な男であった。
「えーわかんなかった。変装してるでしょ?」
「はい……」
「それに忙しいからわかんないよ」
「そっすか……そっすか。あの。今度、デートしてくれるっすか?」
その問に前野はニコリと笑った。
それに桜庭は反応する。
「すっげぇスマイル!」
前野は楽しげな顔をしたまま陽太の肩をつかんで前に出して、その背後からひょいと顔を出した。
「弟子に勝ったらね」
「ちょ! 前野さぁ~ん」
「弟子? コイツが? 前野さん空手家なんすか?」
「空手っつーか、武芸百般。まず、この子に勝ってみなよ」
「ちょーと! マジかい」
陽太は別に負ける気もしないが複雑だ。
桜庭は尊敬する相手。敗北感を与えたくない。
しかし陣内もラティファもやられて転がっている。
この窮地を逃れるのにはやはり戦わなくてはならない。
桜庭と後ろに控える悪魔とも。




