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第118話 水の精霊

その頃のラティファは桜庭のマンションの部屋の中にいた。


桜庭は自分の部屋の中にトレーニングルームを作っていたのだが、そこにラティファとザムエルと三人。

ラティファは相変わらず身を紐で固められてもがいていた。

自由にならないのは腕と上半身。

口と足は動けるので二人と距離を取って叫んでいた。


「なによぉ! この紐! 全然切れない!」

「そうでしょう。悪魔の道具です。切ろうとしても無理無理」


「やっぱりね。あんた大した魔力じゃないもの。道具に頼ってるんでしょ」

「むっ」


ザムエルは桜庭のほうを見た。


「ねぇ。この女に恥辱を与えてもいいでしょ? さっきから腹立つことばっかり言うんだよね」


桜庭は陽太と陣内を待ち受けながらトレーニングをしている。

サンドバッグを打ちながら応えた。


「いいだろう。大事な人質だから殺しさえしなければ」

「ふふ」


ザムエルは指からトランプを一枚出すと二本の指に挟み、ラティファに投げつけた。

それがラティファのヒジャブを切り裂くと、長い髪がハラリと垂れ顔があらわになってしまう。


「くぅ……」


美しい部分は隠さなくてはならないという教えの元、夫となるもの以外に見せられない髪と顔。ザムエルがした行為は彼が思った以上に彼女へ恥辱を与えた。

しかも桜庭はその美しきラティファの顔を見て、驚いた顔をして彼女の顔を覗き込んだ。


「驚いた。すげぇ、かわいいじゃん。アイツになんてもったいねぇよ」

「そうですねぇ。自分のものにしちゃいなさいよ」


悪魔は悪徳の道をささやく。

桜庭はラティファの服を乱暴に脱がそうと近づこうとした。


「ちょっと! ちょっと! いいかげんにしなさいよ! アンタたち!」


ラティファが軽くウインクすると、二人の上からザバーっと水が降り注いだ!


「つめてぇ!」

「うわぁ!!」


今度はラティファの胸の中央から細い水がレーザービームのように二人に直撃する。


「いてぇ! いてぇ!」


桜庭もザムエルも後ろに倒れ込んだ。

手を押さえられても魔法には影響しない。

彼女は水の精霊だ。水を使う魔法はお手の物なのだ。


「な、なんなのこの女!」

「ほほう! これはこれは素晴らしい! 人ではないもの。霊? エレメンタルのウィンディーネ?」


未だに正体をつかめていないザムエルをラティファは鼻で笑う。


「はっ。アンタたちが敵うわけない。さっさとほどいて家に帰しな!」

「そうか! あなた、願いを叶えるジナニアだね? それで、あの男の願いを叶えて身体能力を上げてやった。そうでしょう?」


「だったらどうだって言うの?」


そう言って、細い水を当て続け、二人と距離を取り続ける。

ザムエルは左手に黒いが紫色に輝く宝石がはまっている指輪をはめていた。それをラティファに向けた。


「???」


ラティファは最初何をしているか分からなかったが、力が抜ける。ラティファの体から白亜の色をした煙のようなものが指輪に吸い込まれてゆく。


「うぁ…………」

「うふふふふ」


ラティファは脱力感を覚えその場にガクリと膝をついてしまった。桜庭はこの異常な戦いを参加できずに見守っていたが、どうやらラティファの負けらしいことを悟ってザムエルに聞いてきた。


「なんだ? 何をした?」

「ふふふ。これは魔力を吸い取る指輪。とても貴重なものです。大悪魔から盗んできた。相手の魔力を自分のものにできるのです」


「ほう!」

「ふー。すごい魔力です」


そう言いながら、指をパチンとならすと水浸しの部屋から水が消える。ザムエルはラティファの魔力を自分に取り入れ、格段に強くなってしまったのだ。


「すげぇじゃねーか」


桜庭の言葉にザムエルは嫌らしく笑う。


「さぁ、その女を自分のものにしてしまいなさいな」

「おう!」


桜庭はラティファを抱きかかえ、ベッドに向かおうとした。

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