第115話 お肉食べたい
次の日。学校。
放課後、陣内は仲間たちと昇降口を出た。
イケメンの集団。陣内は文武両道の上、彼らの影響でお洒落ないい男となっていた。
その友人の一人が口を開く。
「どっかに遊びいかね?」
「いいねー」
「でも、アラタは今日も彼女が迎えに来てんじゃない?」
「いっつも顔隠してるなあの子。何人なの? ご主人様~! とかって言って」
ラティファのことだ。彼女はいつも陣内を校門まで迎えに来ている。ベタベタされるのは嫌いじゃない。むしろ好きな方。
しかし宗教の戒律で肉が食べれない欲求。
これが最近、陣内の大きな悩みとなっていたのだ。
「いいんだよ。たまにはオレにも息抜きが必要だよ。エムドに行かない? パンバーガー食べたい。久しぶりに」
「じゃ、エムドに行くか!」
友人に肩を組まれた陣内はニコリと微笑む。行く場所が決まり、ゾロゾロと校門までくると既にヒジャブで顔を覆ったラティファが待っていた。
「ご主人様」
「わ……」
「おー! やっぱりいた!」
興味深そうな仲間たちの顔。
その隠された顔がどんなものか興味がある。
でている目は大きく、布がかけられない鼻はかなり高い。
とても美しいのだろうと予想された。
「一緒に帰りましょ~」
「お、おう」
人目をはばからす、陣内の腕を組むラティファ。
その大きい胸が陣内の肘に当たり、少し嬉しい。
「ラティファちゃん、たまにはアラタ貸してよ。エムドに行くんだ。今から。一緒にどう?」
キッと陣内を睨むラティファ。
陣内はすかさず目を逸らした。
「いやぁ、付き合い」
「エムド? お肉?」
「いや、ポテトだけ」
「私たちはいーです。晩ご飯食べれなくなるでしょ?」
「そっかぁ。残念だな」
「アラタ。またなー!」
さみしく手を振る陣内。ラティファはそんな陣内の腕をまたしても強く引いて自分の身に押し付けた。
「さ、今日は美味しいですよ~」
「う、うん。今日はなに? おかず」
「お義母さんと協力して作りました。唐揚げですよ」
陣内は思わず飛び上がった。
肉が食える。肉が食える。
「マジ? 大好き! おーおーおーおー!」
「んふ! よかった! 難しいですね。おトーフの唐揚げ。水がはじいてちょっと火傷しそうになっちゃった」
ずっこける陣内。
肉風だった。すでに口の中が肉の脂を欲していた陣内のテンションは大きく下がる。急降下。
「トーフか……」
「ウソですよ。ちゃんと鶏肉です」
「え。えー!? すげぇすげぇ! 肉が食えんの~!?」
「そんなに喜ぶんならもっと早く食べさせて上げればよかった」
「わーい! わーい! ラティファありがと」




