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私はグルメではない。
好き嫌いは特にないし、食べ物のことでとやかく文句を言った覚えもない。
しかし、今、この場所で私は心に誓った。
「絶対に、ここでうまい物を見つけてやる!!」
ここはソ連、ハバロフスク。
私は、ロシア語研修ツアーメンバーの一人。
ここまでに、モスクワを中心とした二十日あまりの旅程をこなし、新潟へ飛び立つ前に極東の街、ハバロフスクにたち寄ったところだ。
当初の予定では、乗り換えの飛行機ですぐ日本に帰るはずだったが、こういうお国柄、いろいろスケジュールの変更があって、ほんの一泊ではあるがこの地にごやっかいになることになったのだ。
ハバロフスクから新潟までは、飛行機でわずか二時間、意外な近さだ。
しかし、わざわざ来るにはすこしばかり手間がかかる。しかもかつてのソ連のイメージの暗さ、今どき巷でも話題の混乱ぶりなどから、あまり足が向かないのも事実だ。
特に極東、という響き。これがよくない。
私自身いつの間にか、モスクワやレニングラード(2015年現在サンクトペテルブルグ)などのヨーロッパ側のソ連とはまた違った認識を、この『極東』側に持っているような気がする。
しかしあえて私は、ここハバロフスクでの一泊二日をおおいに楽しもうと決心した。
特に、期待をかけている部門は、そう、『食』である。あったりまえでしょ。
同じツアーメンバーの中には
「こんな所でモタモタしてないで、早く日本に帰って、あつーいうどんでも喰いたい」
などのぼやきもちらほら上がっていた。
私も「うどん」だの「しょうゆ味」だのなつかしい語いを聞くたびに胃がきゅう、と鳴るまでにダラクしていた。
しかし、この最後に来て食べ物で何とかいい思いをしたいという一念が、私の旅に対する前向きの姿勢を支えていたのだ。
思えば、長い道中、食べ物ではさんざん苦労をさせられた……




