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僕とラーメン紋郎

作者: 納豆週三回

「いや~目黒寄生虫館、楽しかったね~」

「うん、カイチュウってあんなに白くてカワイイものなんて知らなかった。

なんか名前もピカチュウみたいだし私も飼ってみようかな…」

「…え?」


僕とカレンは結婚を約束しあった幸せいっぱいの恋人同士…だった。

あの悪夢の日までは…


「あれ、この行列は?あ、あの有名なラーメン紋郎かあ。

こんなウチの近くにあったんだあ。知ってる紋郎?

マニアックなラーメン屋でネットで有名みたいなんだよ。

折角だから寄っていこうか」


30分程外で待っただろうか。いよいよ店に入る。


「いらっしゃい、お客さん?」


これだな、このタイミングであの呪文を唱えるのだな…


「あ、え、と、野菜モリモリ..え、と」

「ちっ、いや、それ後で聞くから。大か小か」

「あ…す、すみませ…ん、えーと大で」


ぷ、くくくくく…常連客と思わしき周りから失笑が漏れる


「だっせ…」「これだから素人はよ~…」


なんなんだ。

ラーメン如きを食べるのになんでこんな屈辱的な気持ちに

ならなければならないのだ…


「ちっ、くだらね~なこんな店!誰が食うかこんな豚の餌!」


「おい、今なんて言った?

俺はここの店主の紋郎大五郎だが…

今聞き捨てならねえことを言ったなおい。俺の作品を『豚の餌』だと?!」

「なにが作品だ!豚の餌だろこんなもん!

くだらねえ、カレン、帰ろうぜ!」

「…え…ごめん、田中さん、ちょっと寄らないで…」


「…え?」


「店主が命懸けで作ったこの一杯のラーメンを『豚の餌』...って

…許せない!絶対に許せない!」

「あ、え…?」

「それってここにいる店主だけではなく、

店主のラーメン魂にコールアンドレスポンスで命懸けの戦いを挑んでいる

私達モンロニアンに対する侮辱でもあるわ…価値観が違う…価値観が違う!

婚約破棄。婚約破棄!帰って、もうこの紋郎の敷地から出て行って!!」

「え、あのカレン?ちょっとカレン?」


「かーえれ!かえーれ!かーえーれ!」

モンロニアン達からの帰れコールを浴びせられ、

僕はただただ、独り半泣きで家へと向かった。


あれからカレンに何度メールしても返信がないばかりか

今ではブロックされてしまっている。


僕はカレンを奪ったラーメン紋郎が許せなかった。

僕から幸せの全てを奪ったラーメン紋郎…

納得がいかない。

あんなラーメン如きでなにが命懸けだ。

クソくだらない。


ある日、外出先からの帰りにゲリラ豪雨に見舞われた。

豪雨の中、足早に自宅に向かっていると公園にうずくまった人影を発見…

大柄な男が公園の隅にある箱から何か取り出しているようだ


「よし、よし、怖かっただろう」

にゃーん


…ラーメン紋郎の店主、紋郎大五郎!!

…僕の幸せを奪った紋郎…!!


なんで捨て猫を…!

紋郎大五郎…実は心優しい…?

…その時であった


ピカッ!ドーーーーーン!!!!!


落雷の直撃を受け紋郎大五郎はその場で倒れた


「も、紋郎さん!!」

「こ、子猫は…」

「子猫は無事です!!」

「そ、そうか…じゃあ俺は今日の仕込みがあるから」

「む、無理ですよ紋郎さん!身体がプスプスいってます!無理です!」

「い…や俺の一杯のラーメンを楽しみに待っているモンロニアンを

裏切る訳にはいかねえ…これが俺のモンロー主義…」

「も、紋郎さん!!」


いつの間にか僕の目から涙が溢れ出ていた。

そうかこれが命懸けということか。

紋郎さんは命懸けでラーメンを作っているんだ…


「へい、ヤサイ…モリモリ…カラメ…スプレマシー…」

「も、紋郎さん!いま、今救急車を呼びましたから!

頑張って!僕たちモンロニアンの為にどうか生き延びて下さい!!!」


ザーーーーーー…

ピーポーピーポー…



「ニンニクモリモリアブラスプレマシー

カラメプレジデンシャルヤサイアルティメイタム!!」

「おおお!!」


店主はその後その強靭な肉体によって驚異的な回復をみせ2週間で退院、

僕は紋郎さんに頼まれてあの時の捨て猫の里親探しに奔走した縁もあって、

すっかりラーメン紋郎にはまり、限られた者のみに許されたコールが出来る

モンロニアン四天王の1人に選ばれる程になった。



そして今、人間ドッグで「高コレステロール値」が出て再検査の

通知がされるほどになった。


なのでもう行ってない。

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