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第5話「アレは、悪魔だ。関わらない方がいい」

担任の先生はたどたどしく、どうも釈然としないというか、言葉を探しながら言っている感じだった。


「朝倉さん、転校することになったと連絡があって・・・。そうそう、お父さんの仕事の都合とか言ってたかな。準備とかあって朝倉さん学校に来れないのかしら・・・ね」


クラスメイトらは転校という急な話でキョトンとしてる。

だけどどこか安堵のため息が聞こえてるように思える。

よく学校を休むやつだし、いつもひとりだしあまりしゃべりもしないし。

なんというか、不気味なんだよね。

変に大人びてるし。 なにしゃべればいいかわかんないし、うん。


「朝倉さんにもう一度確認しなきゃ・・・ね。えっと・・・すぐ引っ越すとか言ってたかしら? あとで職員室で聞いてみようかしら」

最後は独り言のように静かにつぶやき担任の先生が言い、教室を出た。

僕はそれを聞き逃さなかった。


昼休み、職員室へ行った。

昨日雨に打たれて寒気がしてまだ本調子ではないけどなんとか大丈夫。

頭のふらつきも、怒りでなんとかなっていく。

僕が向かったのは担任の先生。

職員室で手帳を開いているけどただ開いているだけって感じ。

花柄のかわいいので、遊びの予定を確認してる感じ。


「先生、ちょっとよろしいでしょうか」


長い髪をくるっとさせ、薄化粧のまだ幼さの残る女性の顔。


「朝倉さんの転校の件ですが、誰から連絡があったのですか?」

「え・・・言わなかったかしら? 家の人から連絡があったって」

「連絡、取ってみましたか? いつ引っ越すのかどうか」

「・・・」


「先生・・・嘘ですよね。家の人からの連絡だなんて。 朝倉さんに親はいません。僕、知っているんです」

「え・・・そうだったの・・・」


生徒のことも知らないのか・・・。


「でもだって・・・、そう言われたから・・・」

「誰にですか? ・・・教頭先生ですね・・・?」

「・・・」


僕は教頭先生の席へ行った。

教頭先生は疲れた様子で僕が近くに行ってもしばらく認識してないようだった。


「教頭先生・・・朝倉さんのことですが・・・」

朝倉さんの言葉に反応して目を大きく開いた。

本当なら怒鳴りつけたい気持ちだったけど抑える。


「ああ来たか・・・いじめの話だっけな?」


周りの先生たちの視線を気にしてか、あえて大きな声で言ってる様子だった。

教頭先生に招かれるまま会議室へ向かう。

中に誰もいない。

教頭先生に催促されるまま席につく。

深く腰をつけ、神妙な顔で僕に言う。


「なんの話だい?」

「朝倉さんの転校の話です。どうしてかなと思いまして」

「どうしてわしに聞くのだい?」

「昨日、朝倉さんの家に行きましたよね。僕もいたんですよ」


教頭先生の顔が青ざめる。

そのあとで、笑い出す。


「ほう、それで?」

「先生が生徒に手を出して・・・なに考えているんですか!」


「あんなことして・・・犯罪行為ですよ! 訴えてやるんだから!」

教頭先生は笑みを崩さない。

「声を抑えることじゃな。騒ぎは君のためにも良くない。 仮にわしが訴えられたとしよう。アレはどうなる? お金の支援がなくなるぞい」


シワを寄せていやな笑みをする。殴りたい。


「ことに君、アレをどう思う?」


アレとはナオコのことか?


「アレは、悪魔だ。関わらない方がいい」

「な・・・」


なにを言い出すんだ。


「手に負えない悪魔だ。はっきり言う。わしは金づるとしてわしの方が利用されているんじゃい。耳元で死ね死ねと残虐なことを続けたわい」


「転校すると言い出したのはアレの方じゃ。ワシからじゃない。ワシは捨てられたのじゃい」

「・・・。それで朝倉さんは?」

「もう家にはいない。学校にも来ないだろう」


教頭からはこれ以上のことが聞き出せなかった。


テスト期間中、帰りにナオコの住んでいた家に何度も行った。

ベルを鳴らしても出ないし、鍵がかかって中に入れない。

網戸が締められ中の様子はみえないが、殺風景な雰囲気は誰も住んでいない感ではあった。

テスト期間が終わったら部活で帰りが遅くなる。

それまでにはけじめをつけたかった


けじめもなにも・・・。 ただ今は、ナオコに会いたかった。

なにを話すとかわからないけど、会って話をしなきゃと思った。


テスト最終日。

ナオコの家で、郵便物を漁った。

そこでのアテは・・・病院からの郵便だった・・・。


宛先は朝倉ナオコ宛。

宛先は・・・同じ朝倉・・・。


お母さんか!?

会いに来てくれとか長々と綴ってる。

病院の住所は・・・ばっちり書いてある。


明日の土曜日、病院の住所を頼りに出かけることにした。

新幹線で2時間。

距離はかなりある。


会えるかわからない。


でも、会えたところで、二度と会うことはない。

そんな予感がした。

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