第2話「私だけの家」
同じ中学1年なのに、他の誰よりも、先輩たちよりも異質に大人びてるナオコ
授業をサボり他のクラスメイトと絡まないナオコをみて何か楽しみがないのか聞いてみると、彼女はリストカットと応える。
中学1年の冬に入り始めると学校に慣れたのか、髪を染める同級生が出てきた。化粧をしてる人もいる。彼ら、彼女らは大人を気取っているつもりだけど僕と同じ年なんだと思う。隙だらけで考えが浅いからだ。 朝倉ナオコは今日もひとり。髪を染めたり化粧もしない。ただひとり異質に、大人だ。
どう大人なのかはうまく言葉にできない。感情の起伏が極端に少なく、物事に冷めていて、その目つきも、髪をかきわける癖も、細い指も、痩せた背丈も、僕ら中学生とは異なる。 身体も精神も、中学生とは違う。 1つ2つ先輩をみても遥かに年上。
「今日も体育サボってるの?」
4時間目の体育から授業を抜け出し、昼食も姿を現さない。ずっと保険室にて、いつものように小説を読んでいる。
「お腹空かない?」
「食べる気がしない」
「あまり食べる方じゃない?」
「そうね。疲れるだけだし」
ナオコには、なにか楽しいとかそう思えることはないのだろうか?
「ないね。ただそこにいるだけよ」
「なにもないわけはないでしょ? 本当になにもないの?」
ナオコは少し考え……
「じゃあ、リストカット」
えええええ……。
「本当よ? リスカしてるときが嫌なことを忘れられる。感情の昂ぶりを覚える。心中しようと言ったパパのことがわかる気がする」
ふふふ……。
不気味な笑み。
悪趣味。
わからない。
でもなぜか惹かれてる。
「楽しみ・・・そうね、窒死量に挑みたいかな。頭がクラクラして気持ちいいでしょね」
僕は話題を変えることにした。
「部活動はなにしてるの? うちの学校はなにかに属さないといけないから帰宅部ではないよね? 僕? 陸上部だけど毎日大変でね・・・聞いてないか、ははは」
「部活? ・・・美術部」
「入部した理由は?」
「サボっても文句言われない。ふふ」
「でもなにか絵を描いたりはしたでしょ? さすがになにもないことはないよね」
「描きたいのを思いのままに。窓からみえるグラウンドやカッターとか。課題絵描かないから皆相手にされないんだ」
「絵、みてみたいな」
「じゃあ、君、描いてあげる」
そう言ってからナオコはまた学校を休みだし、3日後学校に来たとき絵の話題をしたけどなにも言わない。
マイペースだろうか? 忘れてるのだろうか?
その次の日ナオコは学校を休み、さすがにテストまで一週間で心配になり、全教科のノートと教科書を持ってナオコの家に行った。
ナオコは相変わらず、ああ来たの? ノート? わざわざ気を遣わなくても。
やはり特別調子悪いわけでもなさそうだし、動揺してるわけでもない。 まぁせっかくだしあがっていけば? そう言われ、家にあがる。
……気になることがあった。
「誰か住んでないの?」
「……。私だけよ」