†第4話
公園で出会い、惹かれあって晴れて恋人同士となった私達。それからというもの時間はあっという間に過ぎた。初めて行ったデートは水族館。こんな所へ来るのは生まれて初めての私は終始興奮したまんまだった。特にイルカのショーが気に入った。迫力のあるジャンプは本当に凄かった。それから大きな水槽にはしゃぎすぎて転びそうになった私を支えてくれた大きくて優しい手の感触は今でも忘れられない。それから先は二人ずっと手を繋いで館内を歩き回ったっけ。嬉しかった。帰り際にアーサーとお揃いのストラップも買った。今でも二人の携帯電話にぷらさがってる。8月中旬には夏祭りにも行った。アーサーの浴衣姿が格好良すぎてつい見とれてしまった。彼も彼で私を見たまま固まって、二人してぎこちなく会場に向かったよね。懐かしい。はぐれないようにしっかりと手を繋いで屋台を巡った。あの時金魚すくいでとってもらったデメキンは私の部屋の金魚鉢で今でも元気に泳いでいる。そして極めつけが花火。とても感動した。音の大きさに驚いたけど、とてつもなく綺麗だった。また来年も行こうねと約束したんだっけな。それは叶わなくなってしまったけれど。あ、そうそう遊園地にも二人で遊びに行った。彼は意外にも絶叫系が苦手だった。私は普段の訓練で似たようなものに乗ってるから普通だった。あとカップルに人気とされているお化け屋敷に入ってみた。だけど、夜目の効く私に暗がりは無意味で、気配を頼りに神出鬼没な私達を相手にしている彼もまた特別驚くということはなく、正直つまらなかった。なぜ人気なのか不思議に思ったくらいだ。数日後、仲間からお化け屋敷とは驚いた彼女が彼氏に抱きついたりするというラブハプニングを起こすところだと聞いた。我ながら可愛いげがなかったと反省した。だがそんなことよりも最後に乗ったアトラクションの方が一大イベントだったと私は思う。デートの定番の観覧車に乗って頂上で口付けを交わしたのだ。彼も私もロマンチストってわけではないが、どちらからともなくキスをした。夕日に照らされる彼にまた惚れた。10月下旬には初めて彼の家へ遊びに行った。「DVD見る?」「うん。」そんな会話からだったと思う。お互いの仕事の都合上いつもの公園で待ち合わせてどこかへ行くという流れで、互いの家に遊びに行くということがなかったのだ。初めて訪れた彼の家は黒を基調としたシンプルな家具のあるスッキリした空間だった。あまりモノは置いていない。男性の部屋だと一目で分かるといったそんな部屋。まあ、彼がピンクの家具とか使うところなど想像もつかないけれど。それから彼の淹れてくれたココアを飲みながらDVDを見た。アクションとホラーとファンタジーの三本だ。思っていたより時間は経っていて、終電はすでに終わっていた。幸いにもここら辺にはビジネスホテルがたくさんある。そこで夜を過ごそうかと考えていた矢先に彼がここに泊まっていけばいいと提案してきた。私は好意に甘えて彼の家に泊まることにした。私が、恋人の家に泊まるということの意味に気付いたのはもう少しあとになってからのことだった。初めて貫かれる鈍くも甘い痛みに幸せを感じながら夜を過ごした。私のいる世界では決して味わうことのない甘酸っぱい気持ちが胸一杯に広がる。私、アーサーに恋してよかった。愛して愛されて、私は幸せで満たされていった。毎週金曜日に会えるといってもお互い仕事があったりと1、2時間しか会えないこともざらにある。不安に押し潰されそうになったりもした。依頼をこなす度に捕らえられたらどうしよう、アーサーに裏切られたらどうしよう、もし私たちの関係がバレたりしたらなど、尽きることのない悩み。アーサーに出会う前では考えたこともないことまで考えていたりする。でも、そんな不安を掻き消すかのようにアーサーは夜になると毎日電話をくれる。他愛もない会話をして必ず愛を囁いてくれる。それだけで私の中にあるわだかまりがすうっと消えていくのだ。それから優しくおやすみと言って電話を切るのだ。そうしたら不思議と安心して眠れるようになる。仕事柄寝るときも緊張はとけないが、アーサーの一言があるか無いかで心持ちがまったく違うのだ。私がそう感じているように彼もそう感じているのだろうか。そうだと私は嬉しい。
†††
春に出会い、恋に落ちた二人。
夏には抱えきれないほどの想い出を作った。
秋の夜にはひとつになれた。
そして、冬に終わりを告げる。
神の定めた悲しい運命なのか悪魔のイタズラか。
正義と悪により育てられたあたたかくてやさしい愛の芽は無惨にも摘まれるのであった。




