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†第1話

あれから寝てしまっていた私は肌寒さを覚えて目を覚ました。時刻は午前9時。涙はいつの間にかに止まっていた。今日は12月25日で世間ではクリスマスと呼ばれる日。街中が家族で、カップルで、幸せで満ち溢れるそんな日なのだ。昨日までは私も例にもれず恋人とのデートを楽しみにしてる1人だった。でも今日は違う。恋人との最後のデートを楽しみにしてる稀なケースの1人だ。そもそも殺し屋である私が聖なる夜に幸せを望むこと自体可笑しな話だったのだ。今の状況が私の身分にはピッタリなのかもしれない。任務を行うために私は携帯を手に取りターゲットへ電話をかける。私の仕事の仕方はこうだ。ボスを通して依頼を受け、ターゲットの情報がいろいろ詰まったファイルと弾が3つ入った拳銃を受けとる。作戦を立てて、殺しに行く五時間くらい前に標的に電話をかけて殺人予告を行う。そして夜になると警備の目をかいくぐりターゲットを殺す。死亡を確認してから脱出し、本部へ戻りボスへ報告をする。ざっくりと説明するとこんな感じだ。アーサーは3コール目で電話に出た。

『こんな昼に電話って珍しいね、どうしたんだい?』

「あのねアーサー、今日のデートのことなんだけど、何処にも行かずにいつもの公園でデートしたいの。」

『別に構わないが、突然どうしたんだい?』

「特別な日には特別な場所に行くのが決まりでしょ。」

『ははっ、そうだね、そうしようか。』

「それじゃ、あの公園で待ち合わせね。」

『分かった。また夜に。』

電話ごときに緊張したのは初めての任務以来で久しぶりだ。さぁ、準備は整った。あとは時間がくるのを待つだけだ。ーーーーー覚悟は出来てる。


21時に待ち合わせなのだがじっとしていられずに雪の降る寒い街へ繰り出した。ボスからは任務さえこなせば残りの時間は何をやっても構わないと言われている。待ち合わせ前には一度家に戻る予定なので銃は置いて、財布と携帯だけ持ってきた。どちらも使う予定はないのだけれど念のため。街はクリスマス一色に染まっている。でも明日にはなにもなかったかのように元通りになってしまう。なんか寂しい。毎日がイベントだといいのになど、柄にもないことを思ってしまう。アーサーと出会う前はこんな考え浮かびもしなかった。人って変わるものなのだと驚いた。適当にぶらぶらしてるといつの間にか郊外にでていた。ここら辺は寂れて何もない。裸になった街路樹が数本並んでいるだけで人通りがない。街とは大違いだ。なんか寂しくなってきたし予定より少し早いけどそろそろ家へ戻ろう。この外出が気晴らしになったとは言えないが少しは冷静になれたと思う。きっと今夜は忘れることのできない日になるだろう。終わりでもあり始まりでもあるんだから。

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