親友がおかんを攻略にかかりました。
土谷花菜穂三十八才は、バツイチ子持ち、とある介護用品会社の事務部門の事務次長。
容姿は普通よりやや下、身長は168とやや高め。
高校生の時に、十代しか愛せない変態に捕まり身籠るが、別の女(十六才)ができ破局。縁を切られた為、女でひとつで子供を育て上げた。
それが俺、土谷幸一郎二十歳
(婚約者あり)の母である。
そんな母にもうすぐ春が来そうだ。
実の父は今どこで何をしていたのか知らない、寧ろ知りたくないが、親友の情報によると、子女監禁その他の罪に問われて今裁判の真っ最中らしい。
何処からそんな情報を仕入れてきたのか知らないが、親友が言うには
「花菜穂さんのために(あの男を捕まえさせる為に色々)頑張った」
らしい。
この一言で、幼稚園の入園式からかれこれ15年の付き合いの親友...... 幸丸勇一が母を落としにかかる気である、と気づいてしまった自分は遠い目をしてしまった。
一般常識的に考えると、親友が母親と付き合うというのは、あり得ないと言わざるを得ない。
しかし、俺の親友は常識で量れるような人間でなかった。
初めて会った時に
「こーくんのママ、大きくなったらぼくのおよめさんしていい?」
と言い(当時5才)
それから会うたびに
「こーくんのママだあ」
と抱きつき、
小学校に上がってからは、宿題を一緒にするためと言う名目で、家に入り浸り、
中学に上がってからは
、顔がいいので群がれていたが、告白してくるやつに対しては
「僕には花菜穂さんと言う心に決めた人がいるから」
と答え、
高校に上がってからは、「花菜穂さんにふさわしい人になるために」と、英語やフランス語を学ぶために留学し、
「結婚したら花菜穂さんに美味しいものを食べさせたい」と料理を学ぶために専門学校に進んで最短コースで卒業し、小料理屋で働くようなやつである。
「歳の差、外聞なにそれおいしいの?
僕のお父さんやじいちゃん、おじさんおばさん
、知る限りでは皆が歳上と結婚してますが?」
と、開き直るやつでもある。
そんな奴である勇一が始めに行ったのは、俺に嫁をとらせようと、自分の許嫁を焚き付けて、どうしてこうなったかわからないが、婚約者にした。
もう一度言うが、(勇一の)許嫁が(俺の)婚約者になった。
初めて勇一の許嫁に会って僅かに一月のことである。
その娘は紫鳳八恵。セレブ御用達のジュエリーショップの令嬢で二十五才のOL(おかんの会社の営業部所属の)だった。
婚約者になって、実家に縁切られて、うちに転がりこまれるまで一週間しかなかったけれど、うちのおかんが心の広い人で本当に良かったと思える出来事だった。
次に奴がやったのは、自分の本業と実家の仕事の掛け持ちだった。
正確に言えば、実家の会社の新部門である食品部門の立ち上げの為、本業の休みと仕事終わりに数年後自分が責任者としてつくことを考えての準備であったが。
奴の姉が社長を継ぐ予定らしいが奴は奴で将来役職に就くようせっつかれ、妥協案としてらしい。
妥協案にしろなんにしろ社会に出て一年そこら、寧ろ大学に行っていない奴に役職持たせようとする幸丸一族に正直ドン引きした。
因みにこの情報の出所は、婚約者で新部門に移動予定の八恵さん。勇一に俺なら話してもいい(他社に情報流さないだろうし義理の息子になるし)と許可は得たらしい。
許可する人の理由には色々末期過ぎて言葉がでなかったが。
そして奴はおかん自身の攻略にかかった。
おかんと自分の両親に会わせたり、さりげなく親類を事務部に送り込んで貰ったりと親戚一同であの手この手で囲いこみ、外堀をがっちり埋め立てて、寧ろ土手をつくって逃げられ無いようにしてやっと恋愛対象であると自覚させたらしい。
何でもそつなくこなす奴にしては、かなりの難関であったようだ。
結婚までに一波乱あったが、おかんが四十一才勇一二十三才の時、年の差婚を果たした。
因みに付き合いだすまでに一年半、結婚までに半年かかったらしい。
おかんが前の結婚に失敗してトラウマになっていたのとチョロインの因子を持っていたからだと思うが、それ以上に奴が奴だったからだと思う。
おかんが幸せであれば俺は何も言わないが、あえて言うなれば溺れる程の愛は大概にしとけである。
独身者にとっては正しく目の毒であるし、会うたびに痩せていく幸せオーラ満載のおかん(目の下の隈やらうなじのキスマークやら)を見ると、
なんだかなーと息子ながら微妙な気分になってしまう。
最後になるが、ダブルウエディングになって自分の種違いの妹と自分の息子が同じ時期に産まれたのは奴と八恵さんの策略だと思いたくない。
これにて親友によるおかん攻略は完了した。
(ついでに八恵さんによる俺の攻略も)




