カレへ、ふるさとへ
静かな神社。まだ誰も来ていない。
こういうのを見るとやっぱり田舎だなっておもう。誰も参拝客が来ないなんてよっぽどだと思う。そして鳥の声だけが木霊している境内に足を踏み入れるとひんやりとした感じが身体をやさしくつつむ。
「あれ、宮本」
そのどこかで聞いたことあるようななつかしい声に私は反射的に振り向く。
「久しぶりだね」
彼は見違えるほどに大きくなっていた。背も高い、声も若干低くなっている。
「あっ……お久しぶり。明けましておめでとうございます」
私も何か言わなくちゃと必死で言って頭を下げる。余りにも急なので赤面してしまう。
「あけましておめでとう。……この神社に参拝?」
「うん、一昨日こっちに帰ってきた」
「あ、東京の大学に行ってるんだってね。こっちじゃあすごい噂になったよ」
「え……まぁ、東京の大学ってだけで大したことはないんだけどね」
「いやいや、大学に行くってことだけですげえよ。こっちじゃ中学卒業したらそのまま親の仕事を手伝うってのが風習みたいになってるからな」
そう、私はそれができなかった。
親はもういない。おばあちゃんに育てられてきたが、私が中学を卒業する前に死んでしまった。だから私は伯母さんのいる東京へ行き、高校へ進学したのだ。
「今何やってるの?」
彼が問うてくる。
「何って……勉強だよ。あと、バイト……手伝いみたいなことをしながら暮らしているよ」
「はは、さすがにバイトくらいはしってるさ」
「えへへ……そうだよね」
だんだんと田舎の感覚が抜けていっているのがわかる。
「野村くんこそ、何やってるの?」
「んー、農家やってたんだけどさ、やめて役場で働いている。やっぱり肉体労働は向いてないかな」
「なるほどねぇー、確かに中学のころ、ぜんぜん運動できなかったもんね」
「うるさい!」
「あはは」
彼と話していると次第に中学の頃の記憶が蘇ってくる。
同学年は彼一人。
だから自然と彼に意識が向いてしまっていたのかもしれない。
一緒にこの神社でずーっと日が暮れるまで話していたこともあったっけ。
今でもつい昨日のようなことに思い出せる。
「あのさ、宮本。俺、お前に言いたいことがずっと……あったんだ」
「わかってる。だけど、その前にお詣り、しよ?」
新しい春の神社にどこか暖かい風が吹き渡った。
木々が、葉を鳴らしてまるで――
あけましておめでとうございます。
今年もまなつかの小説をよろしくお願いいたします。
今年こそ、ひと夏の記憶を完結!




