第2曲:ムツゴロ○王国。
俺、狼森朽葉は電車の揺れに身を任せ夢うつつだった。
『次は-○○駅-○○駅-』
…おぉ!降りなきゃ。
現在の時刻。
AM8時10分。
ちなみに駅から俺の通う五宮中までマジダッシュ10分。
どう考えても遅刻ギリギリ。
俺はいつも、ギリで学校に行く。朝、苦手なんだよね。
駅に付き、とりまダッシュ。
一応ね、一応だけど俺皆勤賞狙ってるワケね。
ボロ臭い学校の門を抜け、これまたボロい下駄箱で靴を書き替えた。
んで、3階まで一気に階段を駆け上がる。
我が教室に入ると金髪が目立つ俺のトモダチ、篠宮睦希が陽気に出迎えてくれた。
「くち坊!おはよ-」
"くち坊"ってのは俺のことね。
睦希だけが俺をくち坊って呼ぶ。専用のアダ名なワケ。
「はよ-」
社交辞令程度の一言挨拶を済ませ席に座る。
睦希も俺の後ろに座った。
俺らの席は窓際だから、外の景色がよく見える。
つっても、見えるのは家だらけのつまらない町並み。
排気っぽい道路。
憔悴した弱い人間。
そして、
…綺麗な空。
それだけだ。
昨夜の激しい雨など忘れさせる穏やかな空だけを、しばらく眺めていた。
30秒くらい経った。
あ…、やべ。飽きた。
そこで丁度良く睦希が肩を叩いてきた。
これは、何か話したいときの合図。
俺は直ぐ様、体ごと後ろに向けた。
「どしたんムツゴロ…、、ゴメンナサイ」
俺が、あの動物王国の大先生の名で呼ぼうとした瞬間…
睦希のにらみつける攻撃!!が俺に大ダメージを与えた。
(キンパの隙間から覗く鋭い眼光に俺は、言葉を失った。)
「どしたん、睦?」
「ん、あぁなんか今日朝礼あるらし-よ」
睦希はいつもの、陽気な表情になり用件を述べた。
…ん?
リプレイ、リプレイ。
"朝礼があるらし-よ。"
"朝礼"があるらし-よ。
…朝礼?
「…は!?なんで!?」
今日は、第2月曜。
朝礼なんて忌まわしく、めんどくさいモノはないはずなのに!!
「昨日、近くで通り魔出たらしい」
ん?昨日?
「どこらへん??」
昨日ってぇと…
「くち坊ニュース見ねぇの…?」
「うん。」
てか、睦希は見るんだ。
金髪のクセに…。
おっと、見た目に偏見を持つな俺…、悪い癖だぞ。
「で、どこ?」
「駅辺りの路地裏だって。やばいグロかったらしい」
―あ。ソレ僕で-す。
―明らか犯人僕で-す。
「怖いね-」
とりま、怖がる俺。
「くち坊…危機感ないっしょ。電車通学だべ?」
「うん」
「今日も出るかもしんないだろ。」
…おぉ。心配してくれるのか心の友よ。
「俺は平気。始まるっぽいし。行こ-」
―…なんで昨日、あんな近場で殺っちゃったんだろ…。
朝礼たる-。ま、自業自得か…。
教室を出る前に、
も一度、窓の外を見る。
駅が、ちら見えた。