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常識のお勉強

初の戦闘シーン。といっても試合ですが。

それと世界観についての説明もあります。

「さて、それでは訓練を始める」


 それを聞いて勇人は気を引き締める。勇人が今いるのは先ほどの手合わせにも使われたアマニウス亭の中庭、その中心に立って木剣を右手に掴んでいる。


「訓練といっても基本的なことはやる必要はないから、今日はとにかく組み手をしながら実践の中で徐々に使い物になるようにしていく。なに、いくつかの欠点さえ直せばすぐに上達できるさ」


 アマニウスが勇人の正面に立って木剣を構える。


「まず第一にお前の剣は正直すぎる。もう少しフェイントに気を使わねば魔物はともかく人と戦うときには大変だぞ? ――そらっ!」


 アマニウスが踏み込みながら勇人に斬撃を叩き込む。勇人はそれを防ごうと、剣を掲げるが、掲げた剣に衝撃はなく、代わりに勇人の体が大きく衝撃を受けることになる。


「ぐっ……」


「今のがフェイントだ。フェイントを使えなければフェイントを予測することもできない。これからフェイントを織り交ぜながらお前に攻撃を当てていくからそれを捌いて見せろ」


 先ほどよりも速度を増した斬撃が勇人に襲い掛かる。勇人は懸命に防ごうとするものの、それを嘲笑うかのように次々と斬撃が体に吸い込まれていく。


(これをすぐに受けられるようにするのは無理だな……。少しでもフェイントを“視”て物にしなければ)


 勇人は首や鳩尾のような急所に対しての攻撃にだけ的を絞って防ぎつつ、全力で攻撃を観察することにした。当然先ほどよりもさらに体に当たる斬撃は増えていくが、痛みは気力で捩じ伏せる。




 そして数十分後。そこには無言で剣を弾き続ける勇人の姿があった。


「ほう、もうフェイントを見切れるようになったか、飲み込みが早いな。だがそろそろ限界か」


 勇人は全身に数え切れないほどの打撲を負っていて、まだ大事に至るほどではないが動きも少しずつ鈍くなってきていた。


「……。……!」


「ふむ。そろそろやめにするか」


 そういってアマニウスは勇人から距離をとり、剣を構えなおした。


「次はお前がフェイントを使ってこちらに打ち込んで来い。一撃でも当てられたら休憩にしてやる」


「…………!」


 勇人が素早く踏み込み、アマニウスに切りかかる。もはや声も出ないほど疲弊してるようだが、動きはほとんど衰えていない、むしろ剣速は最初より上がってきている。


 勇人は見よう見まねで次々とフェイントを入れながら剣を叩きこむ。視線の向きや踏み込み、重心移動、さらには体術まで使って牽制とフェイントを繰り返すが、すべて弾かれ、あるいは避けられて一向にあたらない。


「フェイントというのは我武者羅に放つものではなく、相手の動きを見て間違った動きを誘発させるためのものだ。予測されるようなフェイントでは相手に攻撃を当てることはできんぞ」


 勇人はひたすらに攻撃を放つ。その攻撃は疲れからなのか徐々にすべてが似たようなパターンの繰り返しになってきた。勇人はひたすらに単調な攻撃を繰り返す、牽制、フェイント、そして攻撃。しかし、その速度は徐々に上がってきており、傍から見れば猛攻、と呼んでも差し支えないものだった。


 そしてその攻防がしばらく続いた後、突然勇人の姿が消えた――かのように見えた。


 実際には徐々に速度を上げつつ毎回左から攻撃を叩き込んでいたところを、高速でフェイントを入れつつ右に踏み込んだだけなのだが、その速度と繰り返された攻撃による慣れもあって、アマニウスは一瞬ではあるが勇人の姿を見失っていた。


(――っ!)


 アマニウスがとっさに反応するが、その時にはすでに目の前まで剣閃が迫っていた。アマニウスは必死に回避を試みるが、完全に回避するにはいたらずアマニウスの左腕に木剣が命中し、アマニウスはたたらを踏む。


(――ここまでやってたったのこれだけかよ!)


 既に勇人にはアマニウスを追撃するほどの余力は残っておらず、肩で息をしながらその場に立ち尽くす。


「ぜっ……ぜっ……」


 アマニウスは再び剣を構えながら勇人を見て、その後先ほど被弾した自らの左腕を見てから――唐突に笑い出した。


「――ふ、くく、ふははははっ!! まさか本当に一撃を当てるとはな! いや、いいもんを見せてもらった。約束どおり今日の稽古はここで終わりだ。休むなりなんなりして明日に備えとけよ!」


 アマニウスが楽しそうに言う。


「――あ、りが……とう、ご、ざい……ま、した」


 勇人はそれだけ言うと、そのまま木剣を手放して地面に倒れ臥した。




***




「――ん」


 軽く身じろぎして勇人が目を開けた。どうやらベッドに寝かされているようだ。


(――あれ? どうしてこんなとこにいるんだろう? ……たしかアマニウスさんと試合をして、それから……)


 どうも試合が終わったあたりからのことが思い出せない。どうやらアマニウスに一撃入れて訓練が終了したらしいことまでは覚えているのだが。


 と、そのとき。バンっ、という大きな音と共に部屋のドアが開かれた。


 中に入ってきたのはレティリアだ。しかも様子を見る限りなかなかにご立腹のようだ。


「ど・う・し・てあなたは一日に二回もこんなにぼろぼろになるんですか。回復魔法(ヒール)をかける身にもなってください」


 レティリアが嘆息を混ぜながら言う。


 勇人はだいぶたじろぎながらも、どうにか言葉をひねり出す。


「え、ああ……悪い」


 とはいえ、碌な事を言えた訳でもないのだが。ともかく、それで少しは溜飲が下がったようで若干険の取れたような顔つきになって。


「まぁいいんです。どの道訓練に怪我は付き物ですからね。……それにしたってあなたのような人はいませんでしたが」


 どうやら話を聞いたところによると、訓練が終わった後、身体、精神共に疲れきっていた自分はそのまま気絶してしまい、その場で全快するまで(レティリアによって)全力で回復魔法(ハイヒール)を連続で掛けられまくって、その後クラオリさんに部屋まで運び込まれたらしい。


 と、そこまで聞いたところでぐぅ~、と盛大に勇人の腹から音がなった。


「……つかぬ事をお聞きしますが、いったいどれくらいの間気絶してました?」


「8刻くらいですよ? ついでに言えばもうお昼の時間も過ぎてますね」


 8刻の間気絶していたとすると、今は大体……13時半くらいか。


「8刻かー……。あの、その……お昼ご飯って用意されてます?」


「当たり前でしょう。さすがに気絶しててお昼抜きなんてことはしませんよ。とりあえずお腹がすいてるんでしょう? だったら早く食堂に行きましょう」


「あ、まってよレティリア」


 言うや否や、レティリアはすぐに踵を返して部屋から出て行ってしまった。勇人も慌ててそれについていく。もっとも道順は覚えているので無理についていく必要はなかったのだが。




 そして食堂。アマニウスの姿はなく、クラオリと勇人、レティリアの3人の姿だけがあった。


 とりあえず席について昼ごはんを食べることにする。


「そういえば、アマニウスさんっていないけどどうしてるの?」


「多分今頃仕事に追われてると思いますよ?」


「仕事? ……そういえばアマニウスさんって何の仕事してるの?」


「ああ、そういえば言っていませんでしたね。

 師匠はこの町の領主様ですよ」


「……え。領主様ってこの町で一番偉いってことだよね? マジで? リアリー?」


「事実です。まあ一番偉いかといわれると、この町には貴族様なども居られるので一概にはわかりませんが」


「……そんな偉い人だったのか」


 それならこの豪奢な屋敷やクラオリさんのことについても頷けるな、と勇人は思った。



 

 そんな会話を繰り広げながら、しばらくして二人とも食事を終えた。


 食べ終わって食器を片付け終えると、レティリアがニコリ、と笑いながら言った。


「さて、ではお勉強のお時間ですよ?」


「……そういえばそんなこともいってたかなぁ」


「まぁこの世界の常識なんて何も知らないでしょうからね。一から全部教えてあげますよ」


 と、やはりどこか楽しそうに言う。


「さーて、じゃぁ行きましょうか」


 レティリアが軽い足取りで部屋の外へと歩いていく。


 勇人は苦笑いをしながらそれについていった。




***




「ここが今日からあなたが勉強するための部屋です」


 レティリアがおそらく教卓と思わしき大きめの机の横に立ちながら言う。


 部屋の広さはおよそ8畳ほど。壁に世界地図がかかっていたり、棚に筆記用具(ちなみにインクとペンと少しごわっとした紙だった)がしまってあったりと、勉強に必要そうなものが大概そろっていた。


「こんな部屋があったんだ」


 と、少し意外に思いながら勇人が言う。


「あ、ここは昔私が師匠に勉強を教えてもらってた部屋なんですよ。だから――ほら、いろんなとこに物が残ってたりするんです」


 と、棚の中から使い古された感じのするペンを取り出す。おそらく、当時使っていたものなのだろう。


「さて、それじゃあお勉強を始めましょう。そこのいすに座ってくださいね。あ、とりあえず今日はペンとかいらないのでそのままでいいですよ」


 それにしたがって教卓の前にある机につく。しっかりといすに座ると、それを見てレティリアが話し始める。


「さて、それじゃあどこから話しましょうかね? うーん。とりあえずこの世界の歴史から話しましょうか。といっても神話とかには詳しくないので童話のレベルですけどね。

 えっと、こほん。




――遥か昔。まだ世が混沌に満ちていた頃。混沌の中から一柱の神が生まれ、混沌から世界を創り上げました。


 しかし、世界を創っても世は混沌に満ちたままでした。そこでその神は自らの分身として二柱の大神と二十四柱の小神を生み出して、それぞれに一つずつ世界を創り上げさせます。


 こうして創造神の世界と二つの大神の世界、そして二十四の小神の世界の合計二十七の世界が創り上げられて、それと同時に混沌は世界に内包されて消え去りました。


 そして創造神はそれぞれの神にそれぞれの世界を治めさせて、世界は創造神の世界を中心に大神の世界、小神の世界と円を描くように置かれる事になりました。ちょうど同心円を描くような感じですね。




 しかし、世界の中には混沌が閉じ込められていたため、そのままではただ混沌があるだけでした。そこでその混沌に流れを持たせることで混沌を力とし、その力を使って神々はそれぞれの世界を構築していきました。


 あるものは過剰に魔力のある世界を。あるものは無限の広さを持つ世界を。そして創造神はほかのすべての世界の特徴を併せ持つように、すべての世界から力が流れ込んでくるように世界を創りました。


 その「創造神の世界」は名をウェダラスティアといいます。これは神々の言葉で“すべて”を意味する言葉です。そして――私たちが今暮らしている世界の名前でもあります。


 そして全ての世界を創り終えた神々はそれぞれ自らの配下となる聖霊を生み出し、管理を彼らに任せて各々の世界で眠りにつきました。




 ……えっと、ひとまずはここまでです。何か質問とかはありますか?」


「……うーん。とりあえずここまではわかったけど一つ聞いていい?」


「なんでしょう?」


「僕が元いた世界もこのいくつかの世界のうちの一つなのかな?」


「はい。おそらくそうだと思いますよ? これらの世界創造の逸話は遥か昔に“聖霊の巫女”と呼ばれる人が聖霊から直接聞いたものだそうなので間違いないと思います」


「……そうなんだ。じゃぁとりあえずはいいや。続きをお願い」


「はい。では――




――創造神から世界の管理を任された聖霊は、まず自らの配下として八柱の精霊を生み出しました。これは現在魔法の8属性と呼ばれているものを司っているものです。炎、風、雷、水、氷、土、そして光と闇です。


 聖霊は彼らの力を借りてこの世界を形作っていきます。まず混沌を天と地にわけ、それから空と海と陸をつくり、そこに生命を生み出しました。生命は大きく二つの種類に分けられます。知性を持つ者と持たないものの二つです。知性を持たないものは大陸中に広まり、知性を持つものは数が少ない代わりにそれぞれの種族ごとに独自の集落を築いていきました。




 “種族”には8つの種類があります。人族(ヒューマン)、エルフ、巨人族(ジャイアント)、ドワーフ、小人族(ホビット)、獣人族、竜人族、そしてハイエルフです。


 人族(ヒューマン)はこの世界では最も数が多い種族で、例えば師匠とかがそうです。あなたもおそらく人族だと思うので簡単にわかるでしょう。


 エルフは外見はあまり人族と変わりませんが、耳が尖っているのが特徴です。基本的には森の中に独自の集落を築いて暮らしているので人里には滅多に出てきません。まぁ森から出て冒険者として過ごしているエルフもいますし、それほど珍しいわけではありません。この町でもよく見かけるので機会があったら実際に見てみるのもいいかもしれません。

 あとエルフは精霊に愛された種族だといわれていて、ほとんどが大きな魔力を持っています。


 巨人族(ジャイアント)は巨大な体を持ち力も強いですが、知性に乏しく魔力をあまり持ちません。一目でわかるほど大きいので、会えばすぐわかると思います。この町では見たことがないので、実際に会ってもらう事はできませんけどね。


 ドワーフは総じて身長が人族より低く、成人しても人族の10~15歳ほどの身長しかありません。また、男性と女性では見た目が大きく違い、男性はみな髭を生やし、顔つきも人族の成人男性とあまり変わりませんが、女性には髭は生えず、顔つきも身長相応のものであることが多いです。

 それとドワーフは土の精霊王の眷属だといわれていて、土や金属の扱いに長けていることが多いです。また実際に土の精霊の祝福を受けている人もいます。


 小人族(ホビット)はドワーフよりさらに小さく、男女共に10歳程度の姿です。特徴としては膂力はあまりありませんが、身体能力が高くてすばしっこいことと、魔法に対して耐性を持つことが多いことがあります。


 獣人は獣と人族の両方の特徴をもった者で、身体能力が高く魔力の扱いにも優れています。獣人族の中でも元となっている獣の種類で種族が分かれていて、代表的なものは狼人族、猫人族、犬人族、狐人族などです。もちろんほかにもいますが。


 竜人については説明する前にまず“龍”について説明したほうがいいですね。

 この世界の中で私たちのように知性を授けられた“知ある者”のほかにも、聖霊の恩寵などによって知性を獲得した獣や魔獣が存在します。その中で代表的なものが“龍”と呼ばれるものです。

 そして竜人はその眷属といわれていて、強靭な肉体と膨大な魔力を持ち、龍の姿になることができます。竜人は数が少ないのであまり見ることはありませんが、その力は一騎当千と言われています。


 最後にハイエルフについて。ハイエルフというのは少し特殊な存在でエルフの皇族と言われています。ハイエルフは通常のエルフと違い聖霊の祝福を受けているとされています。そのため膨大な魔力をもち、さらに扱い手の少ない光の中でも特殊な聖属性の魔術を扱うことができると言われています。

 まぁ基本的に一生の間に直にハイエルフと接することはまずないのでそんなに気にしなくてもいいと思いますが。




 さて、種族については以上です。何か質問は?」


「……うん、ごめん。やっぱ一回で全部覚えるのは無理。……でも僕の世界にも御伽噺としてだけど似たようなものは聞いたことがあるから大体は大丈夫だと思う」


「大体は、ですか。……まぁいいでしょう。はじめから全部覚えられるとは思っていませんでしたし。とりあえずこういうものがある、ということだけ知っておけば大丈夫ですよ」


「う、そういってくれると助かる」


「じゃあいったん休憩にしましょうか。ついでにお茶でも淹れてきましょうか」

 レティリアが席を立って窓際にあるポットを手にとって手馴れたしぐさで茶葉を入れ、そこにお湯を注ぎ込み蓋をした。


(――あれ?今自分の目が確かなら何もない空間からお湯(・・・・・・・・・・)が出てこなかったか(・・・・・・・・・)?)


「ねぇレティリア。今さ何もないとこからお湯を出したのって……魔法?」


「? ……ああ、ええそうですよ。これは水属性の魔法と火属性の魔法の複合魔術ですね」


「水と火かぁ……なるほど。ありがとう」


「どういたしまして。……っと、そろそろいいですかね」


 レティリアがポットからカップにお茶を注ぐ。湯気を立てているカップを両手に持ってこちらに向かってくる。


「はい勇人さん」


「どうも」


 カップを受け取って中身を見てみる。おそらくは食事のときに出ている紅茶(暫定)と同じものだろう。飲んでみると仄かに果物の香りがする。勇人は少々意外に思いながらカップを置く。


 視線をカップから戻すと、どこかしら嬉しそうにしているレティリアと目が合った。


「ふふふ、驚きました? とっておきの自家製サポロティーです」


 サポロ、というのはこの世界の果物で、地球で言えばプラムに近い果物で、この世界ではメジャーな果物だ。


「……美味しいよ。それとちょっと意外だった。あんまお茶とかは詳しくないからこういうのは初めてだ」


「ふふ、喜んでもらえると出したかいがあったというものです。さて、じゃあお勉強の続きをしましょうか。さっきは世界の成り立ちについてだったので、次は今の世界についてですよ」


いつもよりは少しだけ長いです。といってもだいぶ短いですが。

そして戦闘シーンはぜんぜん書けない……。まぁしばらく戦闘はしない予定です。

あと世界観についてのところはだいぶ読みにくくなってしまいました。だけど次回も説明回です。

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