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獅子王の片翼  作者: 青頼花
第二章【非情なる世の理】

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第六話〈胆力を振り絞る〉


 涼新は風我の背中を軽く押すと語気あらく告げる。


「仲間と共に戦え」

「お前は!?」

「今のお前は、人を信じる意味を知るべきだ」

「おい!」


 風我の呼びかけに答えず、涼新は人の波に消えていく。

 思わず手を伸ばし追いかけようとするが、怒号が耳に飛び込み竦んで動けない。

 涼新の言葉が脳内で反響している。


 “仲間を信じる意味を知るべきだ” 


「う」


 頭痛に襲われて蹲る風我に邪派の剣撃が迫りくる。


「どこの門派の奴だが知らねえが! その首もらったあああああ!!」

「……っ!」


 ――しまっ、た……!


 その時、眼前に影が現れた。

 高音と共に呼びかけられる。


「何してるの!」

「危ないから早く立って!」

「春鈴、雪花!?」


 女子二人が風我を敵から守るべく、胆力を振り絞っていた。

 次々と襲いかかる男の攻撃を、雪花が手刀で捌き、春鈴が呪符の結界で防御する。

 風我は、剣を振るって助力をしたいと考えたが、胸の内に恐怖心が渦巻いて身動きができない。


 ――く、くそ! どうしたんだ!? 


 しっかりしろと己の顔を殴りつけるが、あまりにもひ弱な拳に憤った。

 開いた掌を見つめて身体が震える。

 もう、剣の使い方も思い出せない。

 周りには助けを求める人々の声、絶叫、高笑い、刃がこすれあう轟音が響いている。

 それなのに、己は仲間の女子に守られているだけ。


「邪魔だ!!」

「きゃ!」

「春鈴っ、あ!」


 二人は同時に拳で強打され、その場にくずおれてしまう。

 風我は顔を上げて二人を庇うように敵に向かって声を張り上げた。


「何しやがる!」

「女に守られてるのは、まさかお前! 烈風の風我か!?」

「……っそれがどうした!」


 自分が思いの外目立つ存在なのだと舌打ちをする。

 ひょろ長くて目つきの悪い男は、邪派であろう。

 二人の少女をどうする気なのかは目に見えている。


「させるか!」

「おっ? その腰にあるガラクタをつかうきになったか?」

「……俺の刀だ!」


 抜刀したが切っ先は男の首筋には届かず、風我の方がよろけてぶざまに転がった。

 額を強打して悶えている隙に刀を奪われてしまう。

 男はゲラゲラ嘲笑いながら春鈴と雪花に手を伸ばす。


「動けねえなら諦めろ! 弱い自分を呪え!」

「さ、さわらないでよ!」

「離して!」

「……春鈴、雪花!」


 ――ゆるさねえ!!


 風我は心の奥から湧き上がる怒りに感情を爆発させた。

 身体が熱くなり、碧色の気が四肢から放たれる。


「ヴッっオオオオオオオオ!!」

「な、なんだ!?」

「風我!?」


 驚愕しているのは、敵の男だけではない。

 春鈴も雪花も目を見開いて、声をあげた。


「「獣気!?」」



 碧色の焔と化した凄まじい気が、邪気を燃やし尽くすべく暴れ始める。

 誰かの叫び声は遠くなり、風我の意識は憎しみに引きずり込まれ、目の前に金髪碧眼の男が出現した。


「帝王!!」


 全てはこいつのせいで――!!




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