第六話〈胆力を振り絞る〉
涼新は風我の背中を軽く押すと語気あらく告げる。
「仲間と共に戦え」
「お前は!?」
「今のお前は、人を信じる意味を知るべきだ」
「おい!」
風我の呼びかけに答えず、涼新は人の波に消えていく。
思わず手を伸ばし追いかけようとするが、怒号が耳に飛び込み竦んで動けない。
涼新の言葉が脳内で反響している。
“仲間を信じる意味を知るべきだ”
「う」
頭痛に襲われて蹲る風我に邪派の剣撃が迫りくる。
「どこの門派の奴だが知らねえが! その首もらったあああああ!!」
「……っ!」
――しまっ、た……!
その時、眼前に影が現れた。
高音と共に呼びかけられる。
「何してるの!」
「危ないから早く立って!」
「春鈴、雪花!?」
女子二人が風我を敵から守るべく、胆力を振り絞っていた。
次々と襲いかかる男の攻撃を、雪花が手刀で捌き、春鈴が呪符の結界で防御する。
風我は、剣を振るって助力をしたいと考えたが、胸の内に恐怖心が渦巻いて身動きができない。
――く、くそ! どうしたんだ!?
しっかりしろと己の顔を殴りつけるが、あまりにもひ弱な拳に憤った。
開いた掌を見つめて身体が震える。
もう、剣の使い方も思い出せない。
周りには助けを求める人々の声、絶叫、高笑い、刃がこすれあう轟音が響いている。
それなのに、己は仲間の女子に守られているだけ。
「邪魔だ!!」
「きゃ!」
「春鈴っ、あ!」
二人は同時に拳で強打され、その場にくずおれてしまう。
風我は顔を上げて二人を庇うように敵に向かって声を張り上げた。
「何しやがる!」
「女に守られてるのは、まさかお前! 烈風の風我か!?」
「……っそれがどうした!」
自分が思いの外目立つ存在なのだと舌打ちをする。
ひょろ長くて目つきの悪い男は、邪派であろう。
二人の少女をどうする気なのかは目に見えている。
「させるか!」
「おっ? その腰にあるガラクタをつかうきになったか?」
「……俺の刀だ!」
抜刀したが切っ先は男の首筋には届かず、風我の方がよろけてぶざまに転がった。
額を強打して悶えている隙に刀を奪われてしまう。
男はゲラゲラ嘲笑いながら春鈴と雪花に手を伸ばす。
「動けねえなら諦めろ! 弱い自分を呪え!」
「さ、さわらないでよ!」
「離して!」
「……春鈴、雪花!」
――ゆるさねえ!!
風我は心の奥から湧き上がる怒りに感情を爆発させた。
身体が熱くなり、碧色の気が四肢から放たれる。
「ヴッっオオオオオオオオ!!」
「な、なんだ!?」
「風我!?」
驚愕しているのは、敵の男だけではない。
春鈴も雪花も目を見開いて、声をあげた。
「「獣気!?」」
碧色の焔と化した凄まじい気が、邪気を燃やし尽くすべく暴れ始める。
誰かの叫び声は遠くなり、風我の意識は憎しみに引きずり込まれ、目の前に金髪碧眼の男が出現した。
「帝王!!」
全てはこいつのせいで――!!




