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獅子王の片翼  作者: 青頼花
第二章【非情なる世の理】

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第四話〈幼子のように〉


 邪派が関わる大会には、正派の武術者達も集まるが、それには理由がある。

 大会で注目を集めれば、門派の名を上げる事となり、邪派への牽制にもなる。

 一方、邪派はよほど不都合な事態にならぬ限り、正派を攻撃はしない。

 世は正派にて成り立ち、恩恵を受けていると理解しているからだ。

 大会での怨恨は引きずらない。

 それが暗黙の了解である。


 転移陣を使って王宮から森を抜けた風我達は、師範天云に指示をされてある宿へと向かう。

 武術大会が行われる度に世話になっている宿だと連れて行かれた。


 武術大会の舞台となる土地の中でも一際だだっ広い通りに、無数の宿が軒を連ねる。

 掘っ立て小屋のような建物から、裕福層が暮らす屋敷のように豪奢な物まで様々だ。

 天云はよく見かける普通の宿の戸口を跨ぐ。

 主人に丁寧に挨拶をした灰兄妹にならい、風我は頭を深々とさげた。

 それを見た主人が顔を綻ばせる。


「東国出身かな? 見かけない顔だが、素直で良い子じゃないか」

「ふふ」


 褒められた事実に風我は満面の笑みを見せた。

 その姿は親に褒められた幼子のようだ。

 春鈴と雪花が顔を見合わせる傍らで、涼新は注意深く風我を見据える。


 主人と天云は近頃の異変について話し込む。

 邪派が絡む大会は数年間隔で気まぐれに開催される為、情勢が大きく変わっていることも多々あるのだ。

 此度の重要な件は、邪派の主が変わった事実であろう。

 出自が不明であり、果たしてどのような能力を持つのかも計れない。

 大会にあわせて開放される一時の街には、大陸中から人が集まるが、特に宿を営む者は、客の素性には敏感にならざるおえないのだ。


 天云が涼新に目配せをして近寄れと指図する。

 素直に従えば、耳打ちされる言葉に集中した。


(風我をあのままにはしておけない)


 頷いて囁き返す。


(考えがある)


「兄さん! 涼新! 風我がいっちゃったから私達追いかけるから!」

「まったくもう!」


 飛び出す二人を天云は追う気はない様子だ。

 涼新は天云に腕を掴まれて、部屋に連れてこまれた。




 露店が連なる大通りに飛び出た風我は、風吹く先を見つめた。


「早く見つけなければ、手遅れになる」

「何が?」


 息を切らせた春鈴が話しかけた。

 追いかけて来たらしい。

 隣には雪花が並ぶ。


「貴方、何がしたいわけ?」


 雪花の問いかけに、風我は戸惑う。

 口に出しておきながら、実は自分でもよくわかっていなかった。

 生暖かい風に身を任せ、空を眺めていたら、遠くで光りが溢れたのを見て指を差す。


「見ろ!」


 青空の先に稲妻が走る。

 碧色の光が空に向かって暴れていた。


 ――こんな光景を見た事がある。



 どこかの国が、封印されている!





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