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獅子王の片翼  作者: 青頼花
第二章【非情なる世の理】

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第一話〈哀れな王太子〉


 新しい帝王が、碧焔大陸の支配者となり二百年余り。

 堕落した態度を示す帝王の権威は揺らいでいた。

 人々の意識から吃蛇の脅威が薄れ、帝王に変わり、世を支配しようと目論む権力者は日に日に増えていった。

 碧焔大陸には無数の大小様々な国が存在するが、碧焔帝国との交流を断ち切った十国が不穏な動きを見せていた。

 その十国は盟約を交わしていたのだが、裏切りの国があった。

 その裏切りの国の王子と従者が、灰家の新たな門弟、雪花以外の二人である。

 身分を隠し、天云に助けを求めようとしたが、皿家にばれてしまい、蛇派の集う武術大会に送られてしまった。


 浪国ランコクイヤオ王子は、檻の中で声を張り上げて怒りで震えていた。


「私は浪国の王太子だぞ!! ここから出せぇ!! 皿房はどこだ!?」

「薬様! お、落ちついて下さい!」


 従者が薬を宥めるが、王子はすっかり頭に血が上り、鉄格子を掴み、叫びつづける。

 薬の暴れる様子を見ていた、監視役の黒尽くめ二人がせせら笑う。


「何が王太子だ、すっかり力が衰えて破滅寸前の癖に」

「わめくな負け犬王子」


 口汚く罵られた薬は、王子としての尊厳を傷つけられ、感情が爆発するのを抑えきれずに怒声を吐き出す。


「民を守る為ならば、いくら馬鹿にされようとも耐えてみせる! だが!! 貴様らのような下賤な輩は生かしておけん!! 必ず息の根をとめてやる!!」

「雄々しいな、薬王太子」

「――っ、お、お前は」


 姿を現した男を見た薬は、急に身体が震えだし驚愕に目を見開いた。

 男は、するどい赤い目を爛々と輝かせており、長い黒髪を揺らしている。

 漆黒の衣服に身を包み、足元を隠す裾を今にも踏みそうな足取りで、薬の檻の前に進み出てきた。


 ――な、なんだこいつは!?


「薬様、奴の姿をこれ以上見てはいけません!」

「な、なんだと」

「そいつの忠告は聞けよ。お前のようはか弱い存在には、俺の“気”は耐えられんだろうからな」

「ふざけたことを言うな! ああっ!?」


 黒煙のような気が、瞬く間に檻の中を満たしていく。

 その黒い気を吸った瞬間、薬は脱力して崩折れてしまう。


「太子!」

「な、なにをした」

「お前の獣気は俺が貰った。あとは、お前がいかに強く在れるかだ……クク」


 薬は呆然とする。


 ――私の中の獣気が、消えかかっている……?


 各国の王族の獣気は、国を守る聖獣が与える特別な力である。

 この特別な獣気で、人々の命を循環させることで国の大地は生命力を養う。

 その役目を果たすからこそ、聖獣は守護する者達が大地を使うのを赦すのだ。 


 その獣気が、王太子たる己の中から消えた。

 その事実に絶望する。


 ――こ、こんな、ことになるなら、帝王との誓約を破り、獣気を使う術を学んでおけば良かった……私の烈気では、到底、この男に敵わない!


 薬は背を向けて去る男に叫ぶ。


「なんという真似を……! ゆ、ゆるさん!! ゆるさないからなあ!!」


 地下の牢屋に悲痛な叫び声が響き渡る。


「吃蛇様」


 “吃蛇”と呼ばれた男は、傍らに跪いた下僕を睨みつけた。


「ここでは構わないが、外では呼ぶなよ」

「は! 申し訳ございません!」

「何かあったか」

「は! 黒翼を見つけました! 蒼い気を放っているようです」


 それを聞いた男は、口元を吊り上げた。


「そうかそうか。俺の翼はとうとう……肉体を得てから……長かったな」


 長い黒髪を払い、腕を組むと肩を揺らした。


 ――後は、いかに奴を支配できるかだ。

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