表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獅子王の片翼  作者: 青頼花
第一章【獅子王と復讐の剣士】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/21

第二十話 第一章完結 〈現れた悪しき存在〉


『見つけたぞ、お前は、俺の物だ!』


 明らかに春鈴の声ではない。

 風我は涼新に体を支えられながら、何かに取り憑かれたような春鈴を見据える。

 その禍々しさは明らかに異常だと感じた。

 赤い獣のような瞳と視線が交わる。

 胸がドクリと疼く。

 慌てて片手で胸元を押さえつけるが、引きずり出される感覚は消せず、涼新の腕の中で叫んだ。


「アアッああああああっ」

「風我!!」


 異物に取り憑かれた春鈴は、風我に手を伸ばし、現れた蒼く光る勾玉を手中に収める。

 口元を吊り上げると満足そうにうなずいた。


『これで良い。残念だったな、帝王』



 風我は涼新を突き飛ばして奴を止めたかったが、体に力が入らず、崩折れてしまう。

 代わりに雪花が邪悪な存在を止めるべく術を放つが、黒い靄が春鈴から解き放たれ、勾玉と共に消え失せた。

 結界がいともたやすく破られてしまい、陰鬱な空気が支配する。

 春鈴が床に膝をついた瞬間、傍で眠っていた兄の天云が意識を浮上させた。

 異変に気づくと妹を気遣う。


「春鈴、どうした!?」

「大丈夫です。彼女は利用されただけ」

「気を失うような状況なんだぞ? お前達、何があったんだ? 教えろ!!」


 雪花の言葉に天云は憤りを隠せない様子で、風我と涼新にも怒りをぶつけた。

 涼新が冷静な態度で説明すると、天云は妹の様子を注意深く観察する。



「外傷はないな。精神的なものか……く」


 天云は腕をおさえて顔を歪ませた。

 心配になるが、風我は微動だにできず、脂汗が顔を伝う。


 ――なんだこれは。


 急に暗闇が訪れた。


 ――真っ暗だ。


 体を支えるのがだれなのかももう認識できない。


「風我!」


 ――もう、駄目だ。


 風我は父と母、弟に謝りながら意識を失なった。



 その肉体を抱き上げた涼新は、混乱した天云と雪花と言葉をかわす。


「風我までもがこんな有様では、大会に出るのは不可能だ!」

「確かに。彼、怯えていたし。あんな様子じゃ勝てないわ」

「私に任せろ」

「「は?」」


 涼新は、二人に向き直りはっきりと告げた。


「風我の心に入り込む。このまま大会に向かうぞ」


 貴重な獣石を手に入れなければならない。

 そうしなければ、片翼としての役目を担うことなどできないのだ。


 ――守護がなくとも、お前は強いはずだ。


 握りしめた少年の手は震えていた。




 同時刻。

 北の森にて。


「燈実様!」


 呼ばれたのは自分であると、神子の燈実

 は頭を振り、ゆっくりと起き上がった。

 重みを感じて周りを確認すると、すぐ傍らには、黒尽くめの男が倒れている。

 燈実は記憶を巡らせて、彼に猛獣から助けられた事実を思い出した。


「う、うう」

「……意識が! ぼ、僕がわかりますか?」

「……ん、うう」


 彼はうっすらと瞳を開き、燈実を虚ろな目で見据える。


「おまえは」

「僕は燈実と申します、神子です。次は僕が貴方を助けます!」


 抱き起こしながら告げるが、彼は再び気を失ってしまった。

 燈実はかけつけた従者たちに、彼が命の恩人であり、助けなければならないと叫んだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ