表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/59

第15話 悪逆令嬢、共感する

     ×××


 全てが解決したと思った直後――。

 イザベラは、何かが壊れる音を聞いた。


「な、何ですの? 何かが割れたような音がしましたわ!」

「もう、終わりだあああああ!」


 ゲスマンが叫ぶ。

 その顔は絶望の色に染まっていた。

 そんなゲスマンに王子が詰問する。


「ゲスマン、どういうことだ?」

「ワシは王子を殺すために、直接出向く予定だった。だが、直前になって面倒くさくなる可能性も考えたのだ」

「それを面倒がるな!」


 王子は呆れたように叱責した。


 その傍らで、イザベラはゲスマンの考えに共感していた。

 重要な用事ほど面倒くさくなってしまうものなのだ。

 そして、一度面倒くさくなれば、全力でやらない言い訳を考え始める。

 イザベラはこれまで、数えきれないほどこのパターンを体験して来た。


「それで、面倒くさくなった時のために、何をした?」

「王子とジョージは確実に殺しておく必要がある。だから、一定時間でその魔物除けが壊れるように細工をしておいたのだ!」


 つまり、これからダンジョンの魔物が襲い掛かってくるということだ。

 状況は絶望的としか言いようがない。

 だが、そんな中でもリオンは冷静だった。


「成程。確かにその男が持っていた魔物除けは壊れたようだ。だが、お前たちはどうやってここに来た?」

「それは……」

「別の魔物除けを持っているのだろう? それを素直に差し出すのであれば、ダンジョンを出るまでの間は命の保証をしてやろう」


 魔物除けの効果範囲は限られている。

 だから、ゲスマンがここまで無事に来るためには、別の魔物除けが必要だったはず。


(それですわ! 王子、見直しましたわ!)


 イザベラは心の中で王子を絶賛した。

 だが、その解決策を取ることは出来なかった。


「……壊れた」

「何だと?」

「さっき、地面に倒れた時に身体で押しつぶしてしまった」


 リオンは眉間にしわを寄せた。

 それが事実だとしたら――。


「魔物がやってくるのを止める方法はないということか」

「そうだ。もう、終わりだ! だったら、せめて王子も巻き込んで死んでやるううう!」

「予備はないのか?」

「あるわけないだろおおお! ワシは終わりだ! お前たちも道連れだあああああ!」


 見苦しい事この上なかった。

 だが、ゲスマンの言うことは事実だった。


 その証拠に――。

 通路から無数のゴブリンが姿を現した。


 ゴブリンは小型の魔物であり、一対一であれば然程の脅威ではない。

 だが、ゴブリンの恐ろしいところはその数にある。

 狭いダンジョンの中で、無数のゴブリンが一気に襲い掛かってくるのだ。

 一流の冒険者であろうと、物量にはいつか押し負けることになる。


 まさに絶体絶命だ。

 そんな中、イザベラはというと――。


「これ、ヤバいですわね!」


 ようやく事態に追いついた。

 全部解決したと思ってからの急転直下。しかも三回目。

 脳が一時的にフリーズしていたが、それがようやく正常に戻ったのだ。


「ちょっと、ゲスマンさん! 救援は来ないんですの!?」

「ここはワシの私有地のダンジョンだ! そもそも、発見すらされないだろう!」

「貴方の味方はいないんですの!?」

「この件を知っているのは、ここにいる護衛の二人だけだ!」

「絶体絶命ですわ!」

「逃がしはせん! お前たちは、ワシと共に滅びるのだあああああ!」

「最悪ですわ!?」


 あまりの状況に、イザベラは叫んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ