ep.桃1 夢見るスライムとスライム娘
息抜き…させてください(懇願)
私は、産まれたときから辺境に住んでいる。スライムは性別がなくて1匹で子孫を残すから一人しか親がいない。他の種族はみんな2人いるのにどうしてって思ったこともあったけど。私は親のことが大好きだった。いつも物語を聞かせてくれたり。寝るまでなでなでしてくれる、そんな親が大大大好きだったんだ。
でも、死んじゃった。
人に殺されちゃった。
すぐ戻ってくるからって言ってたけど、帰ってこなかった。
人は、悪い人しかいない。現にここにくる人の中には、同族をたくさん殺したりした人がよく来ていた。たまに関係ない人も来たけど、人は悪い人しかいない。
でも、悪い奴がいるのは人だけじゃなかった。
「おい、お前なんで水色じゃねえんだよ!スライムの誇りはどうしたんだよ!」
「こら、こんな劣等種と話すんじゃありません。」
私の種族目はレアスライム、ピンク色で、普通のスライムと比べると劣等種らしい。
その日を境にいじめが増えた。
「おい、劣等種!そのきのみよこせよ!」
「あ、返してよ!」
「お、怒った!劣等種のくせに生意気だぞ!」
「そうだそうだ!」
「こんな奴には、オラっ!」
「痛っ、何?」
「おら!お前なんかは水色きのみお似合いだぜ!」
「これでも食ってろ!」
「その代わり他のきのみはもらってやる。ほら、食える分増えたぞ?感謝しろよ!」
こうやって、いっつもスライム達は私の食事を取っていく。もちろん食べたくないから捨てていた。でも、空腹は満たさないと死んでしまう。だからあるとき。
「もう食べないと死んじゃう。厨房には…」
水色きのみしかなかった。決意を決めた。
「オエッ」
何回も吐きそうになったけど食べた。1つじゃ治るわけもなく5つは食べた。これを毎週続けていたら、
「味が…しない?」
味覚が完全に機能しなくなった。赤色きのみも甘い味がしない。匂いも感じなくなった。
「お前、ムカつくんだよ。」
「やだ!やめて!」
「おお、あったけぇ。」
「冬にはストーブってやつがあるらしいな!」
次は家をスライム達に燃やされた。野宿しようにもできないから、アサシンビーさん達の世話になっていた。
本とかも萌えたので、教養はコボルトさん達に教わった。
たまに、きのみの収穫を手伝ったりもした。
とりあえず今までより良い生活で、少し性格も明るくなった気がした。
そして散歩していたある日。
「こっち来い。」
「えっちょっと。」
「なんでお前だけ良い暮らししてんだよ、俺らの親は死んだのによぉ!」
思いっきりぶつかってくる。
「痛っ」
「その再生力良いよなぁ!痛ぶっても証拠が残らねえんだもんな!」
「やめてっ」
ガサガサ
「お、人が来たぞ、お前もこい」
「えっちょっと」
引っ張られ、着いたところには、12歳ぐらいの男がいた。成人したてで死刑囚だなんて…と思っていると、囚人紋が見つからない。
「あれ、この人死刑囚じゃない?」
「うるせえ!殺せば良いんだよ!」
刹那、その男から手刀が飛んで来た。私は少し離れていたけど、スライムはモロにくらっていた。
「痛えなぁ!でもその先は罠、お前の負けだ!」
そう言ってスライムは跳ねる。男は接近するも、寸前で罠を避けた。
その後スライムは殺された。
「やばい、私も殺される!」
そうやって怯えていたが、私を殺しにくる気配はなかった。
「いじめられている私を助けてくれた?」
その結論に至った。人なのに、私を助けてくれた。この人の仲間になるべきだ。私の直感がそう告げた。
そして無事弟子になった。
これが、私とししょーの出会いだ。
一緒に食べて、一緒に寝る。
こうやってししょーと一緒にいるとなんだか、心がポカポカして、ずっと一緒にいたいと思ってしまう。これを恋だというのだろうか?親がいつも聞かせてくれた、『恋するスライムと白馬の王子』というむかしばなしを思い出した。白馬に乗った王子に一目惚れしたスライムが、最後人間になって、一緒に結婚して幸せになるっていうお話。恋という単語の意味は親も私も分かっていなかったけど今ならわかる。でも、スライム人間になるなんて事例は聞いたことがないとみんなも言っていた。だから、諦めるしかないのである。
「他の魔物みたいに進化したら人間でした!とかないのかなぁ。」
そんな叶いもしないであろう夢を抱いていたら、ベヒ・モース様にししょーの存在がバレた。
ししょーは、勝負を申し込んだけどわたしは怖かったでも、
「今のモモなら大丈夫。」
この言葉を聞くとなぜか行ける気がした。
そしてベヒ・モース様とししょーの勝負で、実際に、
「ぐあああああああああ!…」
ししょーが勝った。
でも、ししょーが魔力切れで倒れてしまった。
「ししょー!」
駆け寄ろうとしたそのとき、急に眠気が来て眠ってしまった。この眠気はなんだろうと思いながら静かに眠りについた。
そして、目が覚めると、
「ん?なんだか違和感が…手?」
人間の姿になっていた。
「ええ!?」
正直驚いた。本当に願いが叶うなんて、夢だと思った。
「本当に、人間だ…」
でもなんだか、恥ずかしい感じがすると思ったら、服を着ていなかった。なぜか急に頭に浮かんだ服装を自分の体でで作ってみる。
「あ、服にはちゃんと痛覚ないし、触覚もない。」
こうやって新しい自分に少し興奮していたところ、師匠を見つけた。どうやら傷は完治しているらしい。
「何かできることはないかな…?」
師匠の頭が岩場で痛そうなので、自分の膝に寝かせてみる。少し恥ずかしいが、これはこれで心がポカポカする。
こうして私の人としての生活、人生が始まった。