Full Service 03
画面からまた連絡が入ってきた。鳴り止むことは一度もないから、好きな曲を絶対に鈴の音楽にしてはいけないほど、鳴りつづく。
「はい、事務課です。はい、『穴埋め』の資料ですね。お疲れ様でした。拝見させて頂きます」
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『穴埋め』
案件番号 #456206850
名前:鈴木彩
年齢:28歳
職業:貿易会社業務(会社から電車1時間のワンルームで一人住み)
犯罪履歴:電車内でのセクハラ行為(証拠あり、立案済み)。ストーキング行為(被害者多数、立案済み)
プロフィール紹介は以下を参照:
中規模の会社に勤める普通のオフィスレディです。幼い頃から、見た目が悪くて太っていることで同年代の子供たちに嘲笑され、排斥されてきました。この経験は彼女の心に深い傷を残し、内向的で自信を失う原因となりました。
大学を卒業後、鈴木彩は優れた成績を持って希望する会社に入社しました。しかし、職場生活は彼女が想像していたほど素晴らしいものではありませんでした。彼女は一生懸命働き、成績も良かったにもかかわらず、同僚たちは彼女の外見と体型を理由に冷笑し、陰でひどいあだ名を付けました。会社の集まりでは、彼女の能力ではなく、外見が話題の中心になり、彼女は苦しみました。
鈴木彩の両親は彼女の変化を見て非常に心配していました。何度も彼女にダイエットを勧め、栄養士やフィットネストレーナーに連れて行きましたが、効果はほとんどありませんでした。体重計の数字を見るたびに、彼女の気持ちはさらに重くなりました。彼女は自分自身を嫌悪し、どんなに努力しても現状を変えることができないと感じました。
このような暗い影の中で生きるうちに、彼女は次第に孤立していきました。会社の集まりに参加せず、同僚との交流も避けるようになりました。仕事が終わると、一人で家にこもり、テレビを見たりインターネットをしたりして現実から逃れようとしました。彼女の自尊心は度重なる打撃で脆くなっていました。鏡に映る自分の肥満した体と疲れた顔を見るたびに、深い絶望を感じました。
ある日、彼女と似た境遇の女性がダイエットに成功し、自信を取り戻したという話をインスタの広告文で見つけました。この話が彼女の心の奥底に希望の火を灯しました。彼女はもう自分を憐れむのをやめ、問題に積極的に取り組む決意をしました。食事を厳しく管理し、毎日運動を続け、心理カウンセリングを受けて自信を取り戻そうとしました。
しかし、変化は非常に困難でした。しばしば空腹感や疲労感に悩まされ、体も様々な不調を経験しました。そして、皮肉なものが、外見を変えるだけではすべてを変えることはできません。彼女は依然として外部からの圧力や挑戦に直面していました。いくつかの同僚はまだ彼女に偏見を持ち、美しさの基準は社会に依然として存在しています。
数ヶ月の努力の末、鈴木彩は最終的に自分の体型と容姿を変えることを諦めました。ダイエットの苦しさや期待外れの結果に疲れ果て、彼女は別の道を選ぶことにしました。彼女は仕事に没頭し、毎日残業をこなし、エナジードリンクで自分を支えながら働き続けました。
稼いだお金で、彼女はホストクラブに通うようになりました。そこで若いホストたちの関心と賞賛を求め、現実の辛さを忘れようとしました。ホストたちとの会話や笑顔に慰められ、彼女は一時的にでも自分の存在価値を感じることができました。
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無駄に長いプロフィール紹介はいつものことだ。そして、その"適合性"もまあまあなほどありふれているのだ。
「はい、こちらの『穴埋め』は問題ありません。適合性は完璧です」
電話を切った後は、紙面作業をしながらの隣席とのおしゃべり時間だ。一見サボりのように聞こえる響きだが、働く指は動きを止まることがないので、職務怠慢とか言われるとマジキレなレベルだ。
「え~先輩~、これ完璧と言えますか?」
「ええ~、そうよ。完璧だ」
「その"空き穴"は聖女枠ですよね?男子中学生を電車内でセクハラして、ホストをストーキングするのが、聖女枠でいいんですか?異世界とは言え、基準がおかしくないですか?」
「うふふ~そこは心配しなくていいよ!聖女転生系の受肉は全般美人で愛され枠なので」
「あ~そうですか!勉強になりました!ありがとうございます!」
資料を確認して、審査を通してから、今度は事務課から執行課に電話する番だ。
「こちら事務課です。只今、案件番号 #456206850を移送しました。『穴埋め』案件ですので、穏便にお"移り"したいのですが、実際の勝手はお任せします。あ~はい、それはいいですね。念のため、"会社で飲ませて"もらえば助かります。はい~よろしくお願いします」
『穴埋め』案件番号 #456206850 結案。