Full Service 02
ここは出入境管理局。名称通り、"境"を出入りすることを管理する機関である。
俗に言うと、境とは"異世界"のことを指しているが、『君も外国人にとっての外国人だ』という言葉と同じく、"異世界"なんてただの視点に過ぎない。
その正式名称は"境"である。
そして、すべての"境"を管理する《ロビー》の部署は大きく分けて三つある。
視察課:
"境"を見回って、適合する人を選別し、視察するのが仕事である。仕事の一環として、適合だと判断した人が現れたら、その"境"の住民をなりすまして、全方向の資料を集め、事務課へ送る。
通常の選別ルートは二つある。一つは事務課から提供した空き穴から、それに似合う適合性を持ってる人を探す。通称『穴埋め』。もう一つは視察課の判断により、適合性のある人の資料をまとめ、事務課に送る。通称『カード』。
そして、もう一つ、イレギュラーな存在もある。それは『飛ばし』と呼ばれ、各境の偉い存在から指定された人である。
『穴埋め』『カード』『飛ばし』。時に穴埋め枠や飛ばし枠にカード枠の人のほうが適合する場合もあるから、どれも重要な仕事である。
事務課:
同じく"境"を見回るのが仕事だが、ここの職員は主に『穴埋め』の穴を探すのが仕事である。時に各境からの指定の手続きもするが、《ロビー》としての威厳を保つため、基本それらの指定申請を通らない。ただ、仕事量が増やしたくないという説もあるが、そこは、諸説ある。
《ロビー》のシステムを通して、どの"境"に穴が生じたかを探し、その穴に相応しい特性を『穴埋め』の資料としてまとめ、視察課に探すのを依頼する。あるいは、もし既有の『カード』からその穴に適合する者がいれば、そのまま、執行課に移ることも可能である。
そして、その境の穴というのは、2秒ごとに別々の境、もしくは同じ境に多数発生することは、近年非常によく起こることなので、事務課の勤務は一日25時間である。なら、穴を埋めなくてもよろしいでは?という疑問がたまにはあるが、事務課の職員たちは責任を持って言える「そこに需要がありますから」っと。
執行課:
ここは《ロビー》で一番楽な課で、ここの職員たちも《ロビー》で一番頭イカれてる連中だ。執行課の主な仕事は人の"移り"を実行することである。簡単に言えば殺人だが、異世界転生など夢のようなことを殺人だと言われるなんて、風雅でないと感じません?
境が生じる数の穴は2秒ごとに発生することによって、執行課の職員たちも2秒ごとに誰かを"移り"をすることになる。それを毎日するというのは、一日86,400秒あるので、43,200人を殺す……ではなく、"移り"をすることになる。
"移り"方について事務課からもお勧めをするが、基本、要求された"動機"さえ達成すれば、全部執行課にお任せする形である。だが、刺激が足りないと思えば、執行課からも"移り"方の提案をすることも可能で、日々日々過激になったことに、近頃、事務課から注意された。
無差別に2秒ごとに必ず誰かを殺す異世界転生は、どの病患でも遥かに伝染力が強くて、回避不可能のほどの致死性を持っている
ここは、その回避不可能の死に通常運転させるため、管理を励んでいる出入境管理局である。