↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
PR

勇者として召喚されてたのに、ジョブが料理人だった俺は除け者にされたけど、知らぬ間に耐火スキルを得ていた!

作者: Mr.ゴエモン
掲載日:2026/11/01

久々の読み切り作です

王城の広間で食事会が行われている。


「オイ !追加の料理持って来い!」

「モタモタすんなよ!」

「わかってるよ、今持ってくとこだよ!」


そう言って返事した少年は、出来上がった料理を皿に盛り、運んだ。

広間では、高そうな服を身に着けた高校生位の男女、約30人が料理に舌鼓を打っている。

いや、位ではなく、彼等は全員、高校生なのだ。それも日本人だ。しかも、至って庶民的な顔をしており(事実、元は全員が全員、一般庶民だ)、それが身に着けてる服と、不釣り合いに見える。


「おせーよ!」

「トロトロすんな!なり損ない!」

「……」


労いの言葉の一つもなく、逆に口々に文句を吐く少年達。

吐かれた少年は、言い返す事もせず、空の皿やグラスを回収し空いたお盆に乗せ、厨房に戻っていった。

下げた食器を流しに入れ、


「はぁ~…」


と、深いため息を吐いた。

そんな彼に近づく人がいた。


「ゼンさん、お疲れ様です!」

「あぁ、アメリアか…」

「食器、アタシが洗っときますね!」

「すまないね…」

「お気になさらずに!」


そう言って流しの中の食器を洗っている彼女の名前はアメリア。この城のメイドの一人だ。


「さてと…」


ゼンと呼ばれた少年は、近くに置いてあった、水の入ったグラスの中の水(一欠片の氷も入っておらず、めちゃ生ぬるい)を一気に飲み干すと、再び調理場にたった。

調理場の壁に貼り付けられたメモに目を通した。食事会で注文(リクエスト)された料理だ。


「バンバーグステーキ、キッシュにミネストローネ、グラタンか…たく、これまたバラバラだな…」


愚痴りながらも調理を始めた少年。

彼の名前は善国寺(ぜんこくじ) 峰夫(みねお)。父親は料亭の板長を、母がそこで女将をしており、そんな親に影響され、自身も料理人を志している。

高校こそ普通の私立高だが、卒業後は料理学校に進学を希望している。

が、そんな高校生活も3年になり、皆が受験モードに突入しようとしていた矢先、クラスメイト全員、この世界に召喚されてしまったのだ。

そして、お決まりの如く、魔王を倒してくれと、王様達に依頼された。


召喚者達は高いステータスを誇るジョブを授かるらしく、クラス委員長は勇者、副委員長は賢治、といった感じで、皆が皆、高ステータスのジョブだらけの中、彼のジョブは【料理人】だった。

料理人。完全な、非戦闘系のジョブだ。何よりも、コッチの世界に極普通(ざら)にいるジョブだ。


当然ながら彼一人、戦力外扱いだ。

皆が高待遇の中で、彼一人、のけ者となった。お情けで、城の料理人として雇われているが、待遇は皆と比べるとそれは、雲泥の差だ。


皆が高い服を貰ったのに対して、彼は以前勤めていた人が残していった服…早い話が、お下がり(古着)だ。

皆がいい部屋を充てがわれたのに対して、彼は物置の片隅だ。

皆がご馳走を味わうのに対して、彼はその余り物、酷い時は残飯、更に酷い時はそれすらもないときたものだ。

  その扱いは最早、奴隷と遜色がないと言っても過言ではなった…


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「ふぅ~…」


食事会も終わり、ようやく一息入れられる。

片付けの前に、遅めの夕食だ。で、 この日の夕飯はと言うと、


「たく貴村(きむら)のやつ、大盛りって注文しといて、殆ど残してんじゃねーか。これに至っては、手付かずだしよ…」


ぶつぶつと、文句を言いながら食う俺。

そう、食事会の残りだ。つまり、自分で作ったやつだ。これじゃあ、自炊と大して変わらんな…まぁ、残飯よりはましか…

と思っていたら、そんな俺の側に、茶の入ったカップが置かれた。置いたのはアメリアだ。


「ゼンさんお疲れ様です!」

「あぁ、ありがとうアメリア!」

「いえ…」


この城で唯一、俺を気遣ってくれるのが彼女(アメリア)だ。

彼女の入れてくれた茶を一口飲む。すると、


ぐぅ~


と、彼女の腹の虫がなった。


「メシまだなのか?」

「えぇ…」

  

 彼女はとても貧しい家で育ち、家計を助けるため幼い頃から色んな仕事をしてきた苦労人。最近、欠員が出たので、ここで働けることになったのだが、(俺ほどではないが)余り待遇は良くないらしい。


 「…よし、チョイと待ってな!」


 そう言って包丁とフライパンを手にする。

 素早く食材を切り分け、そして、炎で豪快に炒める。安い設備だと、炒め物等に使う火は精々カセットコンロレベルだが、ここは王城なので、設備は一級品。本番の中華料理店並にいい炎が出る。

 炒めている最中、フライパンからも炎が上がるが、それに怯むこと無く、俺は鍋を振った。

 そして、完成したのが…


 「ヘイお待ち!!」


 アメリアの前に、パラパラに出来上がった炒飯をサーブする。


 「わぁ…あっでも…」


 遠慮しがちなアメリアだったが、


 「いいからいいから、どうせ余り物の食材だ。遠慮せず、熱いうちに召し上がれ!」

 「それでは、お言葉に甘えて…」


 そう言って炒飯を食べるアメリア。


 「美味しい!!」


 うっすら涙目になりながら、次々に、炒飯を口に運ぶアメリアだった。

 

 食事が終わると、2人で洗い物だ。

 大人数なので、量があり大変だったが、彼女とおしゃべりしながらしたので、言うほど苦では無かった。

 お陰で彼女とはかなり親しくなった。どうやら彼女、余り物で俺が作ってあげる料理(特に炒飯)が、ここでの唯一の楽しみとなっているようだ。


 そんなある日の事、唐突だが、王城内にモンスターが出現した。


 『ヒヒヒヒヒ!こんな城、消し炭にしてやるぜ!!』


 と、叫びながら炎を吐くモンスター。

 このモンスター、シルエットだけならスライムっぽいが、見た目は火そのものだ。

 火に目と口が付いたフォルムをしている、まんま、火のモンスターだ。


 「おのれ何処から入った!?」 

 「打ち取れ!!」


 城の騎士たちが討伐にかかる。

 が、


 ボオオオ!!


 モンスターは炎を吐く。


 「「アチチチ!!」」

 「ダメだ!熱くて近づけん!」

 

 あっさり撤退する騎士たち。


 「我々ではダメだ。勇者様達を!」


 という訳で、俺以外のクラスメイト達が呼ばれた。

 派手な装備を身に着けた、クラスメイト達が、


 「仕方ないな…」


 的な顔をしながらやって来た。

 あからさまに面倒くさそうだ。


 「そんじゃ、サクッとヤッちまうか!!」

 

 と、なんかフラグっぽいセリフを吐きながら、モンスターに向かっていく。


 結果、あっさりモンスターを討伐…

 とは、いかなかった…


 「アチーー!!」

 「なんで水かけても消えないのよ!?」


クラスメイト達はこぞって返り討ちに遭っていた。水魔法で楽勝と高を括り、水魔法を放つもモンスターは涼しい顔をしている。


 『ヒヒヒ!俺様はな、なんと水に耐性を持ってるんだよ!!』

 「はぁー!」

 「そんなのあり!?」

 『ヒヒヒ、ありと言ったらありなんだよ!!そーれー、燃えろ燃えろ!』


 更に炎を吐くモンスター。


 「ひぃ~!!」

 「熱い熱い!!炎も、鎧もアチー!!」


 逃げ惑うクラスメイト達。炎だけでなく、着込んでいる鎧等の金属部分も、炎の熱気で熱くなり、彼等を苦しませている。


 と、レアなジョブ持ちでありながら、モンスター1体に大苦戦するクラスメイト達。

 俺にはその理由が何となく分かる。

 クラスメイト達は、召喚されてから、それなりに訓練は積んでいた。が、それは全て、城の兵士たち相手の模擬戦の様なものばかりで、本物のモンスター相手の実戦は全くと言っていいほどしていない。

 人間相手とモンスター相手では、勝手が違ってくる。つまり皆が皆、自身のジョブに自惚れて、訓練を疎かにしていたのだ。

 なので、こうなって当然と言える。


「(はてさて、どうしたものかな…)」


と、少し考える俺。

同郷のクラスメイト達だが、調子に乗り、揃いも揃って俺を除け者にしてくれやがった。

まぁその事を恨んではいない。

実は俺、3年になってから転校してきた転校生なのだ。親父(おやじ)が板長の料亭が、訳あって遠く離れた場所に移転することとなり、その都合で転校したのだ。転校してから日が浅く、クラスに全く馴染めずにいたのだ。

なのでクラスメイト達からは元々、余所者扱いに近かったのだ。コッチでのクラスメイト達の態度も、それが影響したのだろう。

元々そんな間柄なので、連中を恨んではいないが、薄情かもしれないが、かといって助ける義理も殆どない。

そもそも、ジョブが料理人の俺に助ける力なんて皆無だろうが…

なんて思っていたら、


「きゃ~!!」


と、覚えのある声が聞こえてきた。

アメリアだった。手には、ほうき・バケツを持っている。掃除の途中、騒ぎに気付かず、やって来てしまったらしい。

実は彼女、うっかり者な何処があるのだ…って、今はそれどころじゃない!!

彼女に気付いたモンスターは、彼女に対して攻撃態勢にはいる。

あの炎をまともに喰らったら、彼女は一瞬で消し炭だ。


「アメリア!」


モンスターとアメリアの間に割って入る俺。

料理人の俺が来て何になるって話だが、放っておけなかったか。彼女はコッチの世界で唯一、俺と親しくしてくれた。彼女の優しさと笑顔にどれだけの助けられたものか。


『誰だテメーは…フン、まぁいい、纏めて灰にしてやらー!!』


モンスターは俺ごと、炎で焼くつもり。

口から火炎放射を放った。

俺は咄嗟に身体を大の字に広げ、彼女(アメリア)の盾になった。あの炎の前に、俺なんて木の板…いや、紙の束も同然だろう。

焼け石に水もいいところだろうが、彼女(アメリア)を助けたい一心だった。


ボオオオオ!!


火炎放射が俺に直撃する。

これで俺の人生は終わりか…親父(おやじ)みたいな立派な料理人になりたかった…母さんにも親孝行出来なかった…それが悔いが残る…


等と、思っていた。

が不思議と、熱さを感じなかった。しかし、火炎放射は俺に直撃している。にも関わらず、全く熱くない。それどころか、着ている服さえも無事だ。燃えるどころか、焦げ跡1つ無い。


『なっ…何故テメー燃えないんだ!?』


モンスターも目の前の光景が信じられないらしく、困惑している。だが、それはコッチが聞きたいくらいだ。

が、しめたと感じた俺は、咄嗟に料理人のスキルを発動した。


「来い!大鍋・大蓋(おおぶた)!!」


そう言うその場に大鍋とそれ用の大蓋が現れた。 料理人のスキルの一つで、必要な調理道具・食材・調味料を手元に呼び寄せられるのだ。今回はそれで、この2つを呼び寄せた。何方(どちら)も、大人数分を纏めて調理出来る、巨体サイズのものだ。

そして、これらを使って…


『な、何をす…あっ…』


モンスターを大鍋にいれ、蓋をした。


『やめろ!出せー!!』


鍋の中で暴れるモンスターだが、蓋をガッチリ固めたので出られない。

やがて大人しくなった。恐る恐る蓋を開けるとそこには、親指程の大きさの石炭の様なものがあった。石炭は


『う、うぇ…』


と、声を漏らした。

あの炎のモンスターの声だ。よく見ると、顔の様なものがある。どうやらコレが、あの炎のモンスターの本体の様だ。

俺は料理人スキルで肉叩きハンマーを呼び寄せ、それを石炭な振り落とした。


バキャ!


という音と共に、


『ギャ~!!』


という断末魔が聞こえた。砕けた石炭は、魔石に変わった。この世界では、モンスターは死ぬと魔石という石に変わるのだ。

どうやら、炎のモンスターを倒せたようだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


それから数ヶ月後。城下町の大きな食堂にて、


「料理長、オーダー入ります!」

「おう!」


調理場で腕を振るう俺。振るいつつ、他の料理人達に指示を出す。

そう。俺は今、ここで料理長をしているのだ。

例の炎のモンスターを倒した俺は、王様から礼と今までの無礼を詫びられた。そして、この度の功績に対して褒美とばかりに、願いを聞くと言われた。

その願いにより、ここで働き始めたのだが、自分で言うのもアレだが、料理の腕を買われ、なんと料理長に大抜擢されたのだ。

嘘みたいな話したが、事実だ。今だに自分でも信じられないでいる。

そこに、


「ゼンさ…いえ、料理長、オーダー入ります!」


と、元気な声が。


「あいよ。つか、ゼンでもいいんだぜア(・)メ(・)リ(・)ア(・)!?」

「いえ、そう言う訳には…」


と、少々恥ずかしそうにするアメリア。

そう。俺がここで働き始めると共に、権限で彼女を引き抜い(スカウトし)たのだ。

しかも、城で働いて頃よりも高待遇で。


「ほい、出来だぞ!」

「はーい!」


完成した料理を元気に運ぶアメリア。そんな彼女の後ろ姿を見送った後、俺は、


「ステータスオープン!」


と言うと、ロープレばりのウインドウが現れた。

そこには俺のステータスが表示されている。

料理長なのでステータスは軒並み平凡だ。そんな中、スキルの項目に目をやる。

そこには、


【炎耐性(極)】


というものがあった。

【炎耐性(極)】それは読んで字のごとく、炎に対して耐性を得られるスキルだ(しかも極だ)。このスキルのおかげで、俺はどんなに高温の炎に触れてもへっちゃらなのだ。

炎のモンスターの火炎放射を浴びても大丈夫だったのはコレのおかげだ。

説明によると、毎日、高温の炎に接する事で得られるという。どうやら、毎日料理人として、鍋を振るい、炎に触れている内に、知らずわ知らず会得していたようだ。

スキルを会得した際、脳内にアナウンスが流れるようだが、料理に集中している俺は全く気付かなかった様だ…


まぁ、そのおかげで助かった訳だし、こうして今の地位を得られた訳だ。

しかもあのモンスター、「死の炎(デスフレイム)」という厄介なモンスターだったらしい。なお倒した際に出て来(ドロップし)た魔石は、スゴイ値で売れた。


「オーダー入ります!」


と、別のウエイトレスが注文を通す。


「あいよ!」


ウインドウを閉じて、仕事に戻る。

少しすると、新規のお客達が入って来た。その面々と視線が合う。その顔触れは、


「「「…」」」

「…よお!」


それはクラスメイト達だった。

少し前と比べて、シンプルな装備をし、手足には訓練で出来たであろう、擦り傷だらけだ。

あれから皆反省したらしく、以来、全員真面目に訓練をしていると聞いた。

そのクラスメイト達が客として来てのだ。

この世界の一般的な料理は、地球と比べてかなり質素だ。地球で、それも日本で育ち、舌の肥えた彼等の口にはあまり合わない模様。

俺が王城にいた頃は、俺が作っていたが、俺がいなくなり、俺の料理が恋しくなった様だ。

とわいえ、アレだけの仕打ちをした事に負い目があり、来づらかった様子だ。

それでも意を決して、来店して来た。が、やっぱり、合わす顔がないといった感じだ。


「「「…」」」


皆、黙りしている。

見かねて俺が、


「何時までも突っ立てないで、席に座りな!」


と、すると皆は、


「!?」

「いいのか?…」


と聞いてきた。


「良いも悪いもねー!俺は客を選ばない。誰が来よーが、満足させる料理を食わせてやるよ!!」

「…」

「善国寺…」

「泣くなっつーの…さっさと座れって!」

「ああ…」


そう言って空いた席に座り、メニューを見てから口々に注文するクラスメイト達。

注文をメモするアメリア。


色々あったけど、ようやくクラスメイト達と分かり合えたようだ。

やがてクラスメイト達の注文をメモし終えたアメリアが、やって来た。


「オーダー入ります!」

「あいよ!!」


こうして俺は今日も、この異世界の食堂で、腕を振るうのだった。


ー終ー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。