勇者として召喚されてたのに、ジョブが料理人だった俺は除け者にされたけど、知らぬ間に耐火スキルを得ていた!
久々の読み切り作です
王城の広間で食事会が行われている。
「オイ !追加の料理持って来い!」
「モタモタすんなよ!」
「わかってるよ、今持ってくとこだよ!」
そう言って返事した少年は、出来上がった料理を皿に盛り、運んだ。
広間では、高そうな服を身に着けた高校生位の男女、約30人が料理に舌鼓を打っている。
いや、位ではなく、彼等は全員、高校生なのだ。それも日本人だ。しかも、至って庶民的な顔をしており(事実、元は全員が全員、一般庶民だ)、それが身に着けてる服と、不釣り合いに見える。
「おせーよ!」
「トロトロすんな!なり損ない!」
「……」
労いの言葉の一つもなく、逆に口々に文句を吐く少年達。
吐かれた少年は、言い返す事もせず、空の皿やグラスを回収し空いたお盆に乗せ、厨房に戻っていった。
下げた食器を流しに入れ、
「はぁ~…」
と、深いため息を吐いた。
そんな彼に近づく人がいた。
「ゼンさん、お疲れ様です!」
「あぁ、アメリアか…」
「食器、アタシが洗っときますね!」
「すまないね…」
「お気になさらずに!」
そう言って流しの中の食器を洗っている彼女の名前はアメリア。この城のメイドの一人だ。
「さてと…」
ゼンと呼ばれた少年は、近くに置いてあった、水の入ったグラスの中の水(一欠片の氷も入っておらず、めちゃ生ぬるい)を一気に飲み干すと、再び調理場にたった。
調理場の壁に貼り付けられたメモに目を通した。食事会で注文された料理だ。
「バンバーグステーキ、キッシュにミネストローネ、グラタンか…たく、これまたバラバラだな…」
愚痴りながらも調理を始めた少年。
彼の名前は善国寺 峰夫。父親は料亭の板長を、母がそこで女将をしており、そんな親に影響され、自身も料理人を志している。
高校こそ普通の私立高だが、卒業後は料理学校に進学を希望している。
が、そんな高校生活も3年になり、皆が受験モードに突入しようとしていた矢先、クラスメイト全員、この世界に召喚されてしまったのだ。
そして、お決まりの如く、魔王を倒してくれと、王様達に依頼された。
召喚者達は高いステータスを誇るジョブを授かるらしく、クラス委員長は勇者、副委員長は賢治、といった感じで、皆が皆、高ステータスのジョブだらけの中、彼のジョブは【料理人】だった。
料理人。完全な、非戦闘系のジョブだ。何よりも、コッチの世界に極普通にいるジョブだ。
当然ながら彼一人、戦力外扱いだ。
皆が高待遇の中で、彼一人、のけ者となった。お情けで、城の料理人として雇われているが、待遇は皆と比べるとそれは、雲泥の差だ。
皆が高い服を貰ったのに対して、彼は以前勤めていた人が残していった服…早い話が、お下がりだ。
皆がいい部屋を充てがわれたのに対して、彼は物置の片隅だ。
皆がご馳走を味わうのに対して、彼はその余り物、酷い時は残飯、更に酷い時はそれすらもないときたものだ。
その扱いは最早、奴隷と遜色がないと言っても過言ではなった…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ふぅ~…」
食事会も終わり、ようやく一息入れられる。
片付けの前に、遅めの夕食だ。で、 この日の夕飯はと言うと、
「たく貴村のやつ、大盛りって注文しといて、殆ど残してんじゃねーか。これに至っては、手付かずだしよ…」
ぶつぶつと、文句を言いながら食う俺。
そう、食事会の残りだ。つまり、自分で作ったやつだ。これじゃあ、自炊と大して変わらんな…まぁ、残飯よりはましか…
と思っていたら、そんな俺の側に、茶の入ったカップが置かれた。置いたのはアメリアだ。
「ゼンさんお疲れ様です!」
「あぁ、ありがとうアメリア!」
「いえ…」
この城で唯一、俺を気遣ってくれるのが彼女だ。
彼女の入れてくれた茶を一口飲む。すると、
ぐぅ~
と、彼女の腹の虫がなった。
「メシまだなのか?」
「えぇ…」
彼女はとても貧しい家で育ち、家計を助けるため幼い頃から色んな仕事をしてきた苦労人。最近、欠員が出たので、ここで働けることになったのだが、(俺ほどではないが)余り待遇は良くないらしい。
「…よし、チョイと待ってな!」
そう言って包丁とフライパンを手にする。
素早く食材を切り分け、そして、炎で豪快に炒める。安い設備だと、炒め物等に使う火は精々カセットコンロレベルだが、ここは王城なので、設備は一級品。本番の中華料理店並にいい炎が出る。
炒めている最中、フライパンからも炎が上がるが、それに怯むこと無く、俺は鍋を振った。
そして、完成したのが…
「ヘイお待ち!!」
アメリアの前に、パラパラに出来上がった炒飯をサーブする。
「わぁ…あっでも…」
遠慮しがちなアメリアだったが、
「いいからいいから、どうせ余り物の食材だ。遠慮せず、熱いうちに召し上がれ!」
「それでは、お言葉に甘えて…」
そう言って炒飯を食べるアメリア。
「美味しい!!」
うっすら涙目になりながら、次々に、炒飯を口に運ぶアメリアだった。
食事が終わると、2人で洗い物だ。
大人数なので、量があり大変だったが、彼女とおしゃべりしながらしたので、言うほど苦では無かった。
お陰で彼女とはかなり親しくなった。どうやら彼女、余り物で俺が作ってあげる料理(特に炒飯)が、ここでの唯一の楽しみとなっているようだ。
そんなある日の事、唐突だが、王城内にモンスターが出現した。
『ヒヒヒヒヒ!こんな城、消し炭にしてやるぜ!!』
と、叫びながら炎を吐くモンスター。
このモンスター、シルエットだけならスライムっぽいが、見た目は火そのものだ。
火に目と口が付いたフォルムをしている、まんま、火のモンスターだ。
「おのれ何処から入った!?」
「打ち取れ!!」
城の騎士たちが討伐にかかる。
が、
ボオオオ!!
モンスターは炎を吐く。
「「アチチチ!!」」
「ダメだ!熱くて近づけん!」
あっさり撤退する騎士たち。
「我々ではダメだ。勇者様達を!」
という訳で、俺以外のクラスメイト達が呼ばれた。
派手な装備を身に着けた、クラスメイト達が、
「仕方ないな…」
的な顔をしながらやって来た。
あからさまに面倒くさそうだ。
「そんじゃ、サクッとヤッちまうか!!」
と、なんかフラグっぽいセリフを吐きながら、モンスターに向かっていく。
結果、あっさりモンスターを討伐…
とは、いかなかった…
「アチーー!!」
「なんで水かけても消えないのよ!?」
クラスメイト達はこぞって返り討ちに遭っていた。水魔法で楽勝と高を括り、水魔法を放つもモンスターは涼しい顔をしている。
『ヒヒヒ!俺様はな、なんと水に耐性を持ってるんだよ!!』
「はぁー!」
「そんなのあり!?」
『ヒヒヒ、ありと言ったらありなんだよ!!そーれー、燃えろ燃えろ!』
更に炎を吐くモンスター。
「ひぃ~!!」
「熱い熱い!!炎も、鎧もアチー!!」
逃げ惑うクラスメイト達。炎だけでなく、着込んでいる鎧等の金属部分も、炎の熱気で熱くなり、彼等を苦しませている。
と、レアなジョブ持ちでありながら、モンスター1体に大苦戦するクラスメイト達。
俺にはその理由が何となく分かる。
クラスメイト達は、召喚されてから、それなりに訓練は積んでいた。が、それは全て、城の兵士たち相手の模擬戦の様なものばかりで、本物のモンスター相手の実戦は全くと言っていいほどしていない。
人間相手とモンスター相手では、勝手が違ってくる。つまり皆が皆、自身のジョブに自惚れて、訓練を疎かにしていたのだ。
なので、こうなって当然と言える。
「(はてさて、どうしたものかな…)」
と、少し考える俺。
同郷のクラスメイト達だが、調子に乗り、揃いも揃って俺を除け者にしてくれやがった。
まぁその事を恨んではいない。
実は俺、3年になってから転校してきた転校生なのだ。親父が板長の料亭が、訳あって遠く離れた場所に移転することとなり、その都合で転校したのだ。転校してから日が浅く、クラスに全く馴染めずにいたのだ。
なのでクラスメイト達からは元々、余所者扱いに近かったのだ。コッチでのクラスメイト達の態度も、それが影響したのだろう。
元々そんな間柄なので、連中を恨んではいないが、薄情かもしれないが、かといって助ける義理も殆どない。
そもそも、ジョブが料理人の俺に助ける力なんて皆無だろうが…
なんて思っていたら、
「きゃ~!!」
と、覚えのある声が聞こえてきた。
アメリアだった。手には、ほうき・バケツを持っている。掃除の途中、騒ぎに気付かず、やって来てしまったらしい。
実は彼女、うっかり者な何処があるのだ…って、今はそれどころじゃない!!
彼女に気付いたモンスターは、彼女に対して攻撃態勢にはいる。
あの炎をまともに喰らったら、彼女は一瞬で消し炭だ。
「アメリア!」
モンスターとアメリアの間に割って入る俺。
料理人の俺が来て何になるって話だが、放っておけなかったか。彼女はコッチの世界で唯一、俺と親しくしてくれた。彼女の優しさと笑顔にどれだけの助けられたものか。
『誰だテメーは…フン、まぁいい、纏めて灰にしてやらー!!』
モンスターは俺ごと、炎で焼くつもり。
口から火炎放射を放った。
俺は咄嗟に身体を大の字に広げ、彼女の盾になった。あの炎の前に、俺なんて木の板…いや、紙の束も同然だろう。
焼け石に水もいいところだろうが、彼女を助けたい一心だった。
ボオオオオ!!
火炎放射が俺に直撃する。
これで俺の人生は終わりか…親父みたいな立派な料理人になりたかった…母さんにも親孝行出来なかった…それが悔いが残る…
等と、思っていた。
が不思議と、熱さを感じなかった。しかし、火炎放射は俺に直撃している。にも関わらず、全く熱くない。それどころか、着ている服さえも無事だ。燃えるどころか、焦げ跡1つ無い。
『なっ…何故テメー燃えないんだ!?』
モンスターも目の前の光景が信じられないらしく、困惑している。だが、それはコッチが聞きたいくらいだ。
が、しめたと感じた俺は、咄嗟に料理人のスキルを発動した。
「来い!大鍋・大蓋!!」
そう言うその場に大鍋とそれ用の大蓋が現れた。 料理人のスキルの一つで、必要な調理道具・食材・調味料を手元に呼び寄せられるのだ。今回はそれで、この2つを呼び寄せた。何方も、大人数分を纏めて調理出来る、巨体サイズのものだ。
そして、これらを使って…
『な、何をす…あっ…』
モンスターを大鍋にいれ、蓋をした。
『やめろ!出せー!!』
鍋の中で暴れるモンスターだが、蓋をガッチリ固めたので出られない。
やがて大人しくなった。恐る恐る蓋を開けるとそこには、親指程の大きさの石炭の様なものがあった。石炭は
『う、うぇ…』
と、声を漏らした。
あの炎のモンスターの声だ。よく見ると、顔の様なものがある。どうやらコレが、あの炎のモンスターの本体の様だ。
俺は料理人スキルで肉叩きハンマーを呼び寄せ、それを石炭な振り落とした。
バキャ!
という音と共に、
『ギャ~!!』
という断末魔が聞こえた。砕けた石炭は、魔石に変わった。この世界では、モンスターは死ぬと魔石という石に変わるのだ。
どうやら、炎のモンスターを倒せたようだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
それから数ヶ月後。城下町の大きな食堂にて、
「料理長、オーダー入ります!」
「おう!」
調理場で腕を振るう俺。振るいつつ、他の料理人達に指示を出す。
そう。俺は今、ここで料理長をしているのだ。
例の炎のモンスターを倒した俺は、王様から礼と今までの無礼を詫びられた。そして、この度の功績に対して褒美とばかりに、願いを聞くと言われた。
その願いにより、ここで働き始めたのだが、自分で言うのもアレだが、料理の腕を買われ、なんと料理長に大抜擢されたのだ。
嘘みたいな話したが、事実だ。今だに自分でも信じられないでいる。
そこに、
「ゼンさ…いえ、料理長、オーダー入ります!」
と、元気な声が。
「あいよ。つか、ゼンでもいいんだぜアメリア!?」
「いえ、そう言う訳には…」
と、少々恥ずかしそうにするアメリア。
そう。俺がここで働き始めると共に、権限で彼女を引き抜いたのだ。
しかも、城で働いて頃よりも高待遇で。
「ほい、出来だぞ!」
「はーい!」
完成した料理を元気に運ぶアメリア。そんな彼女の後ろ姿を見送った後、俺は、
「ステータスオープン!」
と言うと、ロープレばりのウインドウが現れた。
そこには俺のステータスが表示されている。
料理長なのでステータスは軒並み平凡だ。そんな中、スキルの項目に目をやる。
そこには、
【炎耐性(極)】
というものがあった。
【炎耐性(極)】それは読んで字のごとく、炎に対して耐性を得られるスキルだ(しかも極だ)。このスキルのおかげで、俺はどんなに高温の炎に触れてもへっちゃらなのだ。
炎のモンスターの火炎放射を浴びても大丈夫だったのはコレのおかげだ。
説明によると、毎日、高温の炎に接する事で得られるという。どうやら、毎日料理人として、鍋を振るい、炎に触れている内に、知らずわ知らず会得していたようだ。
スキルを会得した際、脳内にアナウンスが流れるようだが、料理に集中している俺は全く気付かなかった様だ…
まぁ、そのおかげで助かった訳だし、こうして今の地位を得られた訳だ。
しかもあのモンスター、「死の炎」という厄介なモンスターだったらしい。なお倒した際に出て来た魔石は、スゴイ値で売れた。
「オーダー入ります!」
と、別のウエイトレスが注文を通す。
「あいよ!」
ウインドウを閉じて、仕事に戻る。
少しすると、新規のお客達が入って来た。その面々と視線が合う。その顔触れは、
「「「…」」」
「…よお!」
それはクラスメイト達だった。
少し前と比べて、シンプルな装備をし、手足には訓練で出来たであろう、擦り傷だらけだ。
あれから皆反省したらしく、以来、全員真面目に訓練をしていると聞いた。
そのクラスメイト達が客として来てのだ。
この世界の一般的な料理は、地球と比べてかなり質素だ。地球で、それも日本で育ち、舌の肥えた彼等の口にはあまり合わない模様。
俺が王城にいた頃は、俺が作っていたが、俺がいなくなり、俺の料理が恋しくなった様だ。
とわいえ、アレだけの仕打ちをした事に負い目があり、来づらかった様子だ。
それでも意を決して、来店して来た。が、やっぱり、合わす顔がないといった感じだ。
「「「…」」」
皆、黙りしている。
見かねて俺が、
「何時までも突っ立てないで、席に座りな!」
と、すると皆は、
「!?」
「いいのか?…」
と聞いてきた。
「良いも悪いもねー!俺は客を選ばない。誰が来よーが、満足させる料理を食わせてやるよ!!」
「…」
「善国寺…」
「泣くなっつーの…さっさと座れって!」
「ああ…」
そう言って空いた席に座り、メニューを見てから口々に注文するクラスメイト達。
注文をメモするアメリア。
色々あったけど、ようやくクラスメイト達と分かり合えたようだ。
やがてクラスメイト達の注文をメモし終えたアメリアが、やって来た。
「オーダー入ります!」
「あいよ!!」
こうして俺は今日も、この異世界の食堂で、腕を振るうのだった。
ー終ー




