表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
踊る羊と回る猫  作者: 椎名 園学
パストゥール編
9/114

二乗の魅力

あれ美味しいですよね…なんだつまけ…そう!!忍者めし

あっ、ちなみに私はフルッティ推しです

「お買い物には良く行かれますか?」

湯気の出る紅茶に口をつけのすする。小さな声で「っっっつ」と後ろに向かって大量に紅茶を吹きだす。

そして再度すました顔で香りを確かめ始めた。若干天然気味なのライネンは気にもとめずデウスのコップにさらに熱々の紅茶を注いだ

「買い物はたまにパルパちゃんとお使いで行くくらいでほとんど行きません」

「そうですか…例えばこのティーポット。実は私が家から持ってきたのですが、いくらぐらいするか分かります?」

「1000ロアポぐらいですか?」

デウスは溜息まじりにポットに触る。すりすりと擦り始め今にもランプの魔人が出そうになるほど擦った。

「実は1000万ロアポなんです」

「えっ!1000万ロアポ!飲んどかなきゃ」

すぐ入れたばかりのカップに口をつけすする。

熱々で口が真っ赤になりながらもライネンは飲むのを辞めない。飲みきるのを待たずにしてデウスは話し始めた

「ですが、特売品だったのです」

キャソックのポケットを漁り1枚の紙とペンを出す。そしてそこに何やら式を書き始めた


キャンペーン中!!1000万X-10x乗ロアポ!!

「このようなプラカードが書かれていました。意味がわかりますか?」

「いえ。さっぱり」

「流石ですね。では説明します。Xというのは買った数のことです。つまり…」

鉛筆を走らせ式を書く


1個の場合1000万-10=999万9990ロアポ

2個の場合2000万-100=1999万9900ロアポ

3個の場合3000万-1000=2999万9000ロアポ


「このようになっていくのです」

自信満々に紙を書き終えライネンの方へ目をやるがライネンはいまいちよく分かってないようで頭をひねらせるばかりだ

「つまりですね」とまた言い式を書出す

7個の場合7000万-1000万ロアポ

8個場合8000万-1億ロアポ=マイナス2000万ロアポ

「こういうことです。分かりますか?8個以上買った場合、逆に2000万ロアポ貰えるのです。」

「ほ…ほぇ。」と分かったか分かってないのか分からない感じに頷くがデウスは説得を諦め話を次に進める

「つまりたくさん買えば儲かるのです。ちなみに私はこの瞬間億万長者になりました」

「お、おめでとうございます」

「ありがとうございます」

2人に静かな空間が広がる。話が終わったんだろうが、一体何の話をしていたのかライネンは理解することが出来ない。空気を紛らわせるためさっきより冷めた紅茶を飲む。高級品では無いとわかった紅茶の味はなんだか渋く感じた

「そういえばなんでここにいるんですか?」

そう聞くとデウスは顔を上げ立ち上がる。私を見つめ、大きく息を吸い言い出した

「革命が…必要なんです」

上げた顔から涙が滴り落ち祈り始める。そのまま倒れるように椅子に座った

朝起きてリビングに行くと知らぬハゲが居て謎にティーポットの話をされ「なぜ居るのか」尋ねると泣き出して「革命が必要」そう訴える。私の頭はパンク寸前だ

「私は誰もが笑い、明るく過ごせるような世界…

bright(ブライ) tonight(トゥナイト)」を作りたいのです…」

涙ながらにそう語る。そのままジリジリと手を合わせ祈り始めながらティーポットの紅茶を自分の頭にかけ始めた

「えっ?えっ?なにしてるんですか?」

「気にしないでください。お清めです」

紅茶は湯気を上げながらデウスのハゲた頭に注がれる。そしてその頭部を赤く染めて言った

「熱っつい!だがこれくらいでちょうどいい。さてここからが本題です」

持っていたポットをテーブルに置く。

そして拳で机を叩きティーポットや皿が地面に落ち割れる。まるでそれが合図だったと言わんばかりに大勢の教徒がザラザラと押し寄せてきた

「少し人質になって頂きます」

ハッと息を飲みすぐに隣の部屋に駆け込むが、そこにも多くの教徒達が居り、何故か皆紅茶を飲みくつろいでいた。

「チャックメイトですな」



「あぐぅ」

握っていたナイフは宙をまい首元の近くに刀が向けられる。これで何度目だろうか。

息を切らしナイフを取りに戻って再び構える。

「今回はもう終わりじゃな」

そんな俺を見てか爺さんは刀を鞘にしまった

「はぁっ、俺はまだ行けるぞ」

悲鳴をあげる足を黙らせながら地面を蹴りやけくそに飛びかかる。だが体が言うことを聞かず俺はその場に倒れ込んだ

「体が限界に達しておる。これ以上やったら逆効果じゃ」

爺さんはそっと俺に手を差し伸べ俺の体を起こす

「爺さん強すぎじゃねぇか」

「ほっほっほ。いきなり素直じゃのぉ」

蓄えた髭をフサフサ触りながら笑う。その笑顔を見ているとこっちまで笑みが上がるような良い笑顔だ

「いいことを教えてやろう」

そう言い立ち上がると俺に向けて構え刀をそばに置いた

「さっき素手で戦った時わかったと思うがわしはこの状態でもお主さんを殺せる。どういう意味か分かるか?」

俺は首を横に振る

「よく勘違いされやすいんじゃが強い武器を持てば持つほど強くなるというのは全くの間違いじゃ。武器というのはかけ算でしかない。基礎がゼロなら何でかけてもゼロ。逆を言えば基礎が強けりゃどんな弱い武器だろうと強くなるのじゃ」

そう言われ、昨日の街中の戦いを思い出す。確かにあのおっさんはナイフやらヌンチャクを使っていたが実質的なものはナイフを盗む技能と真ん中に当てる技能、それよりも俺が対応できるより早く蹴れるあの力だろう。

「簡単に言おう。このナイフ没収じゃ」

「えっ?!?」

爺さんはクルクル俺の前を回す。いつの間に盗ったんだ…

「これはわしの寝室に置いておく必要になったらお前さんの異能で取ればええ」

「そう言われてもいつも必要なんだが」

「本当に必要なタイミングはお前さんが決めるんじゃ」

意味ありげに俺の目を視る。これは絶対なことがない限り使っちゃいけねぇらいしな

ちょうどその時教会から12時を告げる鐘が鳴り響く。

爺さんは「お昼かのぉ」と呑気につぶやきスタスタ歩いていく。

俺は深くため息をついて帰ろうと思うと1つ目聞きたいことがあり爺さんに呼びかける

「爺さん。異能もかけ算なのか?」

爺さんは振り向かずに静かに答えた

「異能はかけ算とは違う、独立した1つの力じゃ。どんな弱いやつも異能が強ければ勝つ。異能は全てをひっくり返すのじゃ。」

そのまま爺さんは出口へ向かう。扉をくぐる瞬間

「忘れとった、2階の会議室へ来いって言っとったぞ」

1人庭にたたずむ俺はそっと体を倒した


「朝から稽古お疲れ様」

お昼を迎える少し前パルパは身体中傷でヘロヘロしながらパールのいる部屋に向かっていた

「爺さんからここに来いと言われた。で要件はなんだ?」

息があがりながらもマレナを睨む。

(俺は隣にいるおっさんに無理やり拉致られたことを根に持っているからな…)

「そんな睨まないでくれ。あんな誘拐犯みたいなことは本当はしたくなかったんだよ。でも君が逃げるから」

にしてもナイフ刺したりヌンチャクでぶったりとやりすぎじゃねぇか…

そんなこと言おうもんならまたこのおっさんがなんかしてきそうなので何とか思考をかき消す

「君をここに連れてきたのはいくつか質問したくてね」

三本の指をあげ俺の方を見る。質問は三つという意味だろうか

「1つ目、君は昔の記憶を取り戻していないのか?」

なんでこいつが記憶をなくしていたことを知っているのかは謎だ。だが下手に質問し状況が悪くなるよりかはサクッと終わらせたいので「あぁ」とひとこと呟いく

「2つ目、なぜ君は昨日あの教会にいた?」

「どういう意味だ?俺を拉致るためにあの教会に行ったんだろ?」

(こいつ俺がいることを知って教会を襲った訳じゃないのか?)

「それはたまたま教会に奇襲をかけたら君がいたからついでに捕まえただけだよ」

「それじゃなんでおっさんは俺達を襲ったんだ?たまたまならそんな準備なんかできるはずないだろ?」

「アミドリは元々なんかあった時の補助役で外に待機してるだけの予定だったんだよ。だけど君がいたから急いで連絡をとって捕まえさせた」

こいつらの言っていることが本当かどうかは分からない。2人の目を見つめるも嘘かホントかわからない。状況からみて圧倒的俺の方が不利…俺は本当のことを話した

「知り合いに来いと言われたからだ」

そして3つ目の質問が繰り出される

「「カースト」っていう人を知ってるかい?」

昔の記憶はもう消えているし、ライネンと出会ってからはそんな多くの人と喋らずいつもライネンと一緒にいたから分からない。俺は首を横に振った

「どう?嘘あった?」

パールはアミドリに視線を送り疑問を投げる。アミドリは首を横に振り否定した

「なら質問は終わりだよ。ごめんねいきなりこんなこと」

「ふぅ」と肩を伸ばして椅子によしかかる。 部屋からは緊張が消え去り明かりが充満し出す

「クソガキ、帰っていいぞ」

「なんだおっさん、拉致っといたくせに昨日のお返し食らわしてやろうか?」

「ハイハイごめんごめん。うちのガヤがすいません。じゃ送ってくから車乗って。あっそだアミドリ新聞用意しといて」

俺は車に乗り家へ向かった



パルパを家に送り帰ってきてから数十分

「…おはよ…」

水色の寝巻きに黒の眼帯。寝ぼけた顔をゴシゴシ擦りながら1人背の高い女性が部屋から出てきた

彼女の名前はフルッティ。護衛隊の中でありながら国王からも護衛隊からも独立した戦闘特化組織「零」の一員だ!!(ちなみにパールもだ!!)

「おはよ。今日は早かったね」

「…うん。早く寝た…」

ドヤりと眠そうな顔で見てくるが現在時刻は12時30分、そろそろお昼ご飯が始まる時刻だ

「そういえ昨日眼帯つけてなかったでしょ。」

「…大丈夫。毛布で目隠した」

「ならいいけど」と言いパールは読んでいた新聞をテーブルに広げ1つの記事を指さす。新聞の大トリを飾る一面にはデカデカとこう書かれていた

特攻隊長パール。冷酷の女王フルッティ、教会に奇襲!!!

「なんでバレたんだろうね。中にいた人は全員フルッティが殺ってくれたんだよね?」

「…1人逃げられた。頭ツルツルな人…」

ほぼ同じような服と髪型で構成されたあの教徒の中で頭がハゲでいた人と聞けば誰を指すかは簡単なことだろう。

「そういうことね。でもなんでわざわざ新聞屋に情報なんか流したんだろうね」

「簡単だ、こういう風に悪く書けば零の印象が悪くなってうかつに街を歩きづらくなるだろ。」

今まで黙っていたアミドリがそう話すとフルッティはパールの耳に近づき小さな声で話し始めた

「…お姉ちゃん。なんで零じゃないのにアミドリさんいるの?あとおじいちゃんは?…」

「私もわかんない、なんかいた。おじいちゃんは庭でくつろぎながらこの会議を聞いているよ。なんせ地獄耳だからね」

チラリと窓を覗くと紅茶をすすりながら小鳥に餌をやるている爺さんが見えたので見てなかったことにして話を進める

「ちなみにだが爺さんほどでは無いが俺も地獄耳だ」

キャラに合わないジト目で見つめるとフルッティは縮こまりながら頭を小さく下げた。

「デウスの場所は分かってないんでしょ?ならもう手当たり次第にそれっぽいところ探していけばいいんじゃない?」

「…外に出るの疲れる…家でゴロゴロしてたい…」

「そうするしかねぇな。一応後で爺さんにも口頭で伝えておく」

「ありがとうね。じゃあ、一旦解散かな」

終わりを知らせるように外で小鳥たちが鳴き出す。街でいちばん高い位置にあるこの建物で窓を開けると街全体を見渡すことが出来る。

街はお昼ということもあり活気づき賑わいを見せる。それを見守るようにしなしなと雪が舞い散った。窓から雪が漏れ部屋に入るとそっと窓を閉じる

そこにもうアミドリはいなかった

「早いねぇ。もう行っちゃった。じゃあ私達も行こうか」

「……お姉ちゃん……私…体調悪いかも…」

「ハイハイ、嘘つかなの。行ったらお菓子買ってあげるよ」

「…本当に!!……」

目をキラキラ輝かせフルッティは喜んだ



フルネーム公開

マレナ=⭕️パール

アンサン=⭕️フルッティ

⭕️アミドリ=ドルガン

アニス=マッツァ(⭕️爺さん)

2条の話はデウスにとってのただの世間話です。特に意味は無いです

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ