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踊る羊と回る猫  作者: 椎名 園学
パストゥール編
4/114

カルテッド

目が痒い

「よし、じゃぁそのまま抑えてくれよぉ」

「りょうかい」

7時45分。8時の鐘が鳴る前にボブリッチとライネンはある準備をしていた。一方、物置から出てきた頑丈なチェーンでぐるぐるに巻かれているエルミはまだ眠ったままだ

「せーの」の合図に合わせてエルミの頬を叩く。「ばちーん」と大きな音が響くと同時にエルミが飛び起き辺り見渡した。

「んぁ!?何だこれ」

「よっしゃぁ今だぁ。引けぇー」

「アイアイサー」

チェーンを肩に抱え二人反対方向にそれぞれ勢いよく進むと巻き付けられたチェーンはきつく締まりキリキリと音を出し始めた。

「よぉし。坊主これ見ろこれ」

すかさず今まであったことを書き連ねたメモを顔に近づけ読ませた


「ありがとな」

「ったく疲れるんだからなぁ」

前に比べ怪我などせず出来たのはよかったがこの調子じゃ毎日重労働だぜぇ、

「今度からは一日にあったこと日記にして書けばいいんじゃない?。そしたらこんなことしなくてもエルミが自分で納得できそうだし」

「おぉ、確かにそうだな。やっぱかしけぇなぁ。よし今日は時間あるし俺が朝飯つくってやんよぉお」

勢いよく扉を開けボブリッチは部屋を出た。時間があると言ってもあと10分ほど、果たしてご飯食べる時間なんてあるのか。

うるさいやつが消え静かになった部屋。差し込む朝日がライネンの姿を照らす

「多分過去に色々迷惑かけたと思う。ごめんな。」

「エルミには助けてもらってばっかりだよ」

「どうだか」

辺りの小鳥がチュンチュン鳴きすぐに着替え始めた


「はーい。ようやくつきましたねー。じゃあみんなでお昼にしましょー」

「腹減ったぁ~」

「お菓子食べる?」

あの後俺たちは何も食べず出発した。時間がなかったせいもあるがそれより単純にご飯がなかった。一日限りのシェフ、ボブリッチ料理長が言うには火がつかなくなったらしい。ったくアイツ火のつけ方も分かんねぇのか。今日は遠足なので本当はお昼ご飯もいるがシェフが作れないので「弁当は何とかしてくれ」と言わんばかりに500ロアポをお互い受け取りすぐ学校へ向かった。おかげで腹はなるばかりだ

「けっこう長かったね」

小さく息を切らしながら地面に腰を下ろすとさわやかな風が流れライネンの髪を靡く

熱い日差しが地上を照らしそれに合わせるよう草木は揺れ花びらは旅をする。昔の人の楽しみはきっとこんなん感じだったと体が理解しそれを静かに二人は見ていた

「景色綺麗だね」

「だな」

「。。この記憶も消えちゃうのかな」

「たぶんな」

悲しげな表情を浮かべ下を見つめる。見つめたところで症状は変わらないがなんだかそうしたかった。

それを見てエルミは言う

「だから俺とライネンの二人で何度もいっしょに見ような」

その途端悲しい顔からパっと目を開きエルミを見つめた

「今…ライネンって。。」

「変か?」

「うんん。全然」

ライネンはこっそり微笑んだ


そうしていると周りのみんなはもうそれぞれでかたまって敷物を広げお弁当を開けるなど準備を進めていた。遅れをとらぬよう俺たちも近くの木の下に敷物を広げた

「エルミは何買ってきたの?」

「んんーん。リンゴかな。ライネンは何買ったんだ?」

「私はこれ」

エルミとは真逆で丁寧に畳まれた風呂敷を開けると中からいくつかのお菓子やバナナが入っていた

「美味そうだな」

「でしょ。一個いる?」

そう言い一つドーナツを差し出す。申し訳ないから断るとライネンはおいしそうに頬張った。

幸せそうに食べる顔を見ながらエルミもリンゴを食べた


お昼ご飯の時間が過ぎるとつぎは自由時間。鬼ごっこにかくれんぼ、お話いろんなことをしてみんな楽しんでいる。もちろんエルミとライネンはぼっちだが

「遊びにいかないのか?」

そう聞くと死んで魚のような目でライネンは答える

「行きたいよ。うん。行きたい」

「な、なんかごめんな」

ジーと意味ありげに見つめられたので二人で遊び始めようとすると俺の顔面にボールがポンと音を立てぶつかった

「あぁーごめーん。とってー。パスパス」

ほんとは遠くに投げ飛ばしてやりてぇぐらいだががっつりライネンにみられてるのから仕方なくそっと来た方向へ転がす。寄ってきた男の子はそれを掴んだ

「なぁ、お前ぼっちなのか?暇なら来いよ。一緒にやろーぜー」

当ててきやがったくせになかなか生意気だな。俺は首を横に振るとライネンを指さした

「俺は忙しいから無理だ。代わりにライネンと遊んでくれ」

「え?私?」

「おっけー。じゃいこーぜー」

戸惑うライネンの手を掴み男の子はボールを抱え歩き出した

嬉しくそして不安がる顔で振り返るライネンに俺は手を振った


さっ、始めるか。2、いや3か

ポキポキ指を鳴らし近くの木陰に向け話す

「誰だお前ぇーら」

「っち、バレてたのか」

木陰からぞろぞろと男3人が現れた。

「なら獲物こいつにするか」

「かかって来いよ。望むところだぜ」

なぜか朝ポケットに入っていたナイフを構える。それにあわせ男のひとりは何か取り出し俺に向ける

カチャリト引き金を引き「ヴァン‼」という音とともに何かが飛び出してきた。

とっさに頭を傾けると髪の毛すれすれを突き抜けた

「おお。やるなクソガキ。危ねぇ危ねぇ。まだ()には慣れてなくてよ。お前ぇが避けてくれなきゃ(あたっま)貫通してたぜ」

すぐに反撃の姿勢を整え前進すると男は言った

「俺を殺すのは別にいいが大事なお友達も死ぬことになるぜ」

「どういうことだ」

「俺の仲間の一人がガキどもの近くに隠れている。今この瞬間にでも「殺せ」と指示したらすーぐ仲間は撃たれて死んじまうぜ?お前ぇはいいがお友達は果たして避けれるのかな?」

思考を巡らせているとそれを察したように男は言う

「今すぐナイフ捨てたらガキどもには手を出さねえよ。”契約”だ」

「”契約”の意味は分かってるな?」

「はは。物分かりが良くて助かる。じゃついてきてもらうぞ」

「おっさんらは人さらいか?」

「まぁそんなとこだな。正確に言えば人身売買ってやつよ。そう睨むな。安心しろ色々チェックがあっから、一つでも問題ありゃすぐリリースだ」


「レオラ。こりゃぁどういうことなんだぁ」

震える手で渡された紙を読む


エルミ=パルパちゃんがいなくなってしまいました。ただいま職員総動員で遠足地のアマダ山を捜索しています


「一生懸命みんなで探したんだけど、全然見つけられなくて。。。」

「。。。やべぇな。もしこのまま夜が明けちまったらアイツ俺らのこと完全に忘れちまう」

「どうすれば。。。」

「とりあえず俺護衛隊に要請出してみるぜ」

ボブリッチは唇をかみしめることしかできなかった


「なぁおっさん」

「どした?」

縄で拘束されたまま俺は男に話しかける

「なぜか分かんねぇんだけど俺夜寝たら記憶喪失になるんだよ。だから一回家かえっていいか?」

「ぷははは。嘘つくならもうちょいマシな嘘ついてくれよ」

「本当だ!」

「じゃあ頑張って徹夜してくれよぉ」

寒い風が隙間から吹き込むようなぼろい基地。男7人がむさくるしく寝ている。俺はただただ寝ないために目を開け続けた


「ふわぁ。よく寝た」

「誰だお前」

耳に残るようなあくびで周りの男たちも起き始める。はなちょうちんを出しぐっすり眠っていたエルミも目を覚ました

「俺は、てか俺らは悪の組織カルテッド」

「へぇで?なんで俺の前にいるわけ?」


このガキ、口調がちょっと違う。まさかほんとに記憶が。。なら

「お前は俺らの子分てか舎弟」

嘘こけば信じて仲間になるはず!

「おい。あんまり変なこと言いすぎんなよ。おかしらが起きる前に黙らせるぞ」

「ぐわあああ。よく寝たぁ」

ボロ屋が揺れるほど大きなあくびでのっそりとひと際大柄な男が起き上がる

「お前がボスか。ただのもじゃもじゃデブじゃねえか」

「おもしれぇ。作戦変更。小僧は売らねぇで今ここで殺してやんよ」

「まぁいいか。久しぶりな気がするぜ。殺すのは」

赤く光り輝くナイフを手に取り縄を切る。

俺の準備を待たずボスは引き金を引いた

「ち、あったねぇぞぉ」

放たれた弾丸はエルミが括り付けられていた背もたれを綺麗にくり抜いた

「筋が悪ぃな。ホントに賊か?」

「だ、だまれぇっぇ」

すぐに自棄になり腰から剣を抜き振りかぶった

「ぐがぁ。ぁ」

それよりも先に俺のナイフは鼓動する心臓を突き刺した

「さぁ長は死んだわけだ」

「どん」音を立て倒れるボスの上に乗俺は言った

「俺が長だ。従え下っ端ども」













ナイフはステイサムから盗んできたやつ。

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