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6.ここが異世界だと、実感するしか無くなる

先日お休みしました。すみません・・・。

なので、いつもより少し長いです(当社比)

 

 宿泊所の中に入り受付に向かう。エントランスらしき部屋では、かなりの人数の人で溢れている。

「いらっしゃいませ。ご予約はなさっておりますでしょうか?」

 勿論していないので、首を横に振る。

「ご存じとは思いますけど、只今誕生祭前のため予約で既に枠が埋まってしまっているんですよね」

 なんですと・・・。誕生祭? 初耳なんだけど。隣にいるルフに確認してみる。

「え?知らなかったんですか」

 不思議そうに答える。そりゃ、知らないよ。ここかどこかも分からないんだよ。知っているわけがない。


 ちなみに、この領国の領主であるシモン・リモネルの誕生祭らしい。街の中心部で祝祭パレードや屋台が楽しめるそうだ。

 それが理由に、領国内外から貴族のお偉いさんや見物人が続々と訪れるそうだ。


「なので、申し訳ないですがこの町の宿泊所はどこも同じ状態かと・・・」

 受付のお姉さんも困ったような表情で私たちを見ている。このままここに居座っても、何も変わらないので一旦レオンさんの所まで戻ることにする。お礼を言って、建物から外に出る。


 来た道をそのまま戻って、レオンさん家の中にお邪魔する。奥の厨房に行くと、夫婦そろって料理の準備をしていた。

「部屋空いてませんでした・・・」

「そうだと思ったわ」

「だろうな」

 どうやら二人とも気が付いていたみたいだ。だったら、そういう情報は先に伝えて欲しかったと、切実な願いを伝える。

「だから、泊って良いって言ったんだぞ」

「私も泊って良いと言ったでしょ」

 笑いながら言われてしまった。確かに言ってたけどあれは、大人のお世辞としか思えなかった。だって、会ってすぐの人を泊めるってどう考えて危なくない...?


 しかし、今回ばかりはこの言葉に甘えるしかなさそうなので、ここに泊めてもらうことになった。部屋は今使っていない部屋が1つあるらしくそこを使うように言われた。


 まだ、時間はあるので町の探索をする予定だが、一旦ルフに部屋まで案内してもらう。

 部屋の中には、ベッド・本棚・机がある。しかし、机も本棚も何もない空っぽの状態だ。


 何故なのかを聞くと、どうやらこの部屋は今学生寮にいる、長女エレノアの部屋とのことだ。本当に使っても良かったのだろうか。戻ってきた時に怒られないのか。怒って、両親から私の名前を聞き出して・・・。ルフ曰く優しいお姉ちゃんらしいので、変な想像をするのは、やめておこう。

 部屋から一階まで戻って、玄関から出ようとするとレオンさんから声を掛けられた。

「また、町へ行くのか」

 私とルフは頷く。

「なら、牛乳を切らしてしまったからついでに買ってきてくれないか」

 断る理由もなく、2つ返事で了承する。お店自体はルフが知っているようなので、再び案内してもらうことになった。


 ルフと再びお店から出て、今度は宿泊所とは反対の方に進んで行く。この街は、領主の館を中心に円形に街並みが出来ており、1周するとまたレオンさんのお店まで戻ってくることが出来るそうだ。

 そして、円形の街並みから離れた所で、農場や持ち家が並んだ住宅街のようなところがあるらしい。

 10分ほど歩いたところで牛乳を売っているお店の前まで到着した。思っていたよりもお店は近くにあった。ここから、買って折り返しで帰っても良いが、時間がまた余ってしまう。

 かといって買って、町を観光しても鮮度的にあまりよろしくないだろう。なので、ルフに帰りがけに買わないかと提案する。

 レオンさんも急いで買って来るようには言っていなかったので、ルフも納得してくれた。


 どこに行くかの話になったので、領主の館がどのようなものか気になったので、ルフに案内してもらうことになった。

 そのため、レオンさんのお店のある通りから、抜けるための道まで向かう。

「領主の館ってやっぱり大きいの?」

「そうですね。建物自体も大きいですが、庭も建物と同じくらい大きいです。」

 庭が広くて、お花畑が広がっており、そこで領主の奥さんが紅茶を飲んでいる姿が目に浮かぶ。実際に気温によって、お花が違うそうで観光地として有名らしい。もしかして、観光客に見られながら紅茶を飲んでいるのかな。私がしていたら、恥ずかしくて休めたものじゃない。ティータイムは1人優雅にしたい。


 領主の館へのメインストリートには入ると、目の前に大きな岩でできた建物が現れる。あれが領主の館のようだ。

 メインストリートでは、屋台の形をしたものを組み立ている途中の姿があった。

 誕生祭では、このメインストリートに並んだ屋台で、食べ物などが売られるそうだ。どんな食べ物が売っているか気になるので、誕生祭の時には絶対にここに来ることにしよう。

 ちなみに、レオンさんも出店するらしい。夫婦二人で販売するそうなので、ルフは姉のエレノアと一緒に回るそうだ。私は一人でも良いが、2人に混ぜてもらうのもありかもしれない。コミュ障を出さずに喋れるかは謎である。


 どんなお店があるのかを聞いていると、館の前まで到着した。

「ここが領主のシモン様のお屋敷です」

 第一印象でかい。とにかくでかい。土地も建物も流石と言わんばかりの大きさをしていた。今は誕生祭の影響からか、通常よりも人が集まっているそうで、囲いの前までは近寄ることはできなかった。でも、館の外周は回ることが出来そうなので、ぐるっと一周する。


 建物の左手に回った時に気になるものを発見する。

「なにあれ?」

門のような場所から、中は鏡のようで反射はしていない物がある。そしてその中に人が入ったり、出たりしている。

「転移門ですよ。知らないんですか」

 テンイモン・・・? 聞き間違いじゃないよね。

「テンイモンって移動したりする?」

「そうだよ!」

 えっ・・・? いつの間にそんな転移門なんてあったの。

 現実の世界じゃ、青いキャラクターが出している印象しかないよ。でもあれって、ファンタジーの世界だから現実にはないよね・・・。えっ・・・。戸惑いを隠せない。

「そ、そうなんだー」

 ダメだ。返答にも困ってしまう。


「ここから、隣の町や学園都市まで行くことが出来るよ」

 実際に人が門から出てきているのを見ていると、納得するしかないのだろう。でも、気持ちの折り合いが上手くいかない。これはしばらく考える必要がありそうだ。


 ちなみに、ここから王都と言われる場所まで行くこともできるそうだが、一定の役職や許可がない人間以外は使えないそうだ。

「お姉ちゃんも明後日ぐらいにここから帰ってくるよ!」

 ここから帰ってくるの・・・。こんな便利なものがあったら、寮に住む必要なんてないじゃないのかと思う。でも、どうやら通行料が高いらしく寮生活の方が安いらしい。

 確かにこれが無料で使えるとなった場合、とても混雑するだろう。門自体は、人が5人ぐらい並んでも平気な大きさはあるが、行き帰りで仕切りわけされており、ワープしてぶつかる心配は無いようだ。


「そもそも学園都市ってどんなのなの」

「んーとね、小中高で分けられていて、剣術・魔術だったりして戦う訓練をするコースもあったり、料理を勉強できるところもあるみたいだよ!」


 剣術か。騎士団とかかっこいいよね。でも、鍛えるのは嫌だし。毎日筋トレとか、剣を振り回す訓練をすると考えると億劫だ。絶対にしたくない。


 その点魔術は、遠くからのサポート重視なところがあって鍛える心配はなくていいよね。でも、魔術書の暗記とかしないといけないのかな。ゲームの中では、本を持ってるキャラとかいたけど実際どうなんだろう。

 私も詠唱を唱えてみたら、炎とか出せるのかな。って、あれ・・・?魔術・・・。


「どうしたの・・・?」

 ルフが心配して声をかけてくれる。

「ちょっと考え事をしてただけだよ」

 全然、ちょっとじゃないけど・・・。


「ちなみになんだけどさ。ルフって魔法が使えるの?」

「少しなら・・・」

 左手を私の方に伸ばして、広げると水が噴水のようにあげる。私はその光景を見て唖然としてしまう。


「僕はそんなに魔力がまだ高くないので、このくらいにしておきますね」

 そう言うと、手から水を出すのをやめる。

 魔力って、ゲームで言う『MP』のことだよね。ファンタジーの世界でも、使いすぎると体力が奪われるみたいなのがあるから理解はできる。

 でも、いざそれが目の前で起きているとなると、理解が出来ていない。


 どう考えても、現実的じゃないからだ。


 正直、転移門だけでも信じられなかったのに、魔術まで目の前で起きてしまうと現実が分からなくなる。

 目が覚めた時のことから、薄々感づいていたけど。やっぱり・・・。


 異世界・・・なのかな・・・。ここって・・・。


 そんなことをルフに聞くわけにはいかないので、ここは平然と接するようにしよう。

「すごいね。水出せるんだ・・・」

「大丈夫? さっきから様子が変だよ・・・?」

 ダメだったみたいだ。

 そりゃ、人間誰しもこんな状態になれば平常心なんて保ってられないよ・・・。

「大丈夫だよ! 私でもできるかな・・・?」

 とりあえず、ここで考えてもルフに心配されるだけなので、一旦話を戻す。

「できると思うなぁ。僕も、出来るのはこれだけなんだ。

 もし火事が起きた時のために、お父さんに教えてもらったよ」

 実際どうなのかな。この世界の住民だけが使える可能性がある。それに個人差もあるようだから、出来ないタイプの人間の可能性もあるかもしれない。

 というか、水の魔法を教えた理由が火事なのね。現実だと、消火器置くとかさ・・・。でも、ここは異世界だから仕方ないのかもしれない。もう受け入れるしかなくってきている。


 頭の中を必死に整理しながら、外周を再び回り始める。


ようやく異世界だという気が付きました

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