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LEGNA ~竜ゲノム?~  作者: 宮内桃内
1/7

LEGNA 一夜

獣人たちの夜。

闇。

展示ブースの中で目覚め、ゆっくり目を開けるヒメレグナの視界にブースを覗き込む

緋刈シンジが映る。


ペットショップ「エンジェルハウス」店内。


ブースを覗き込んでいるシンジ。

「あ、起きた?」

「はは、かわいい...」

「あ、毛繕い?」

「はは...かわい。」


シンジは成條大学心理学部生物心理学科、1回生の19歳。

もとより小動物好きで入学以来、ヒメレグナ目当てでここに通っている。


背後で呆れている狩江愛理奈。

「毎日来てくれるのはありがたいんだけど、早く買ってよね。」

銀縁眼鏡、黒のタートルネックに診察衣を羽織っている。

愛理奈は併設されている動物病院の外科医として勤務しているが、時間を見つけて

エンジェルハウスにも顔を出している。

「あ、愛理奈さん。」


ブースに壁ドンの愛理奈に怯えているシンジ。

「ひっT?]

「店長怒ってるよ、1年間通って何も買ってくれなかったって。」

「か、買いましたよ、グッピーと水槽...」

迫る愛理奈の弱り果てているシンジ。

「あのね、この子を買ってほしいのよ私たちは。」

「うう。」

値札を見るシンジ。『ヒメレグナ メス 320,000円』。

「一見の客は断ってるのよ。」

「でも...」

ブースの中から二人のやり取りを見ている後姿のヒメ。

押しの強い愛理奈に弱り果てているシンジ。

「クレジットでもいいのよ。」

「いや、そう言うわけじゃなくて...」


羽田空港。

盲導犬用の胴輪式のハーネスとバイザーを付けた狼犬のロボに引かれて、カーゴを転がす

サングラスのチェイニー。

京急の券売機前で路線図を見ているチェイニーとロボ。

「ケイキュウ乗ってどこで乗換だっけ?」

「シナガワ...」

「よし行こう。」

山手線に乗り換えようとしているチェイニーとロボ。

違和感を感じる二人。

「つけられてる?」

「タブン...」

車内を見渡すロボ。

「早速かよ。」


成條大付近の公園。犬の散歩中の奥様達に道を聞くチェイニー。

チェイニーは公園の前の道路を挟んだところにある、ペットショップ「エンジェルハウス」に

違和感を感じる。

ロボの問いに答えるチェイニー。

「ん、どうした、そこか?」

「カレガ、ネコト...」

「...」


「エンジェルハウス」でヒメレグナについていろいろ会話しているシンジと愛理奈。

店に入ってくるロボとチェイニー。

「コンニチワ。」

二人を出迎える愛理奈。

「ガムヲミセテホシイノデスガ...」

「イングリッシュOKですよ。こちらへどうぞ。」

シンジの肩に手を掛けるチェイニー。

「シンジ君、だよね?」

「え、そうですけど。」


名刺を取り出すチェイニー。名刺には「シャノンメディカルCo. Ltd.」

「これ僕のネームカード。チェイニーです。どうぞよろしく。」

「あ、母さんの会社のヒトなんですね?」

「僕はインターンシップだけどね。」

会話するシンジとチェイニーを鬱陶しそうに見る愛理奈。

「でも、高校生くらいにしか見えないんだけど?」

名刺入れを胸ポケットにしまうチェイニー。驚くシンジ

「君と同じ19歳だよ。飛び級で大学は卒業して、今は大学院だけどね。」

「ええっ!」

商談ブースで会話している3人。器用に椅子に座っているロボ。バイザーを額にあげている。

「立派なオスね。ハスキー?」

「いえ、サーロス・ウルフホンドです。」

触りに来る愛理奈を避けるロボ。苛立つ愛理奈。

「オオカミ犬?」

「そうです。」

「珍しいわね。」


店を出るシンジとチェイニー。

「シンジ君。」

「え?」

「あの女...」

「え?」

シンジに耳打ちするチェイニー。

「危険だ。気を付けろ。」

「何で?」

「普通じゃないんだよ、あの女は。」

「え?」

キャップをかぶっているサングラスの男が店に入ってくる。

声をかける愛理奈。

「いらっしゃいま...」

愛理奈をさりげなく見る男。

「...」

不愉快な表情の愛理奈。

また狼か...


夜道をホテルへ向かう二人の後姿。

「ホテルに荷物置いたら、飯食いに行こう。」

「ア、ボク、ヤキニクガイイナ。」

「ペット同伴できるヤキニクレストランを予約してるよ。」

「ヤッタっ!」

二人の前に立つキャスケットを被ったショーパン姿の女に気付くロボとチェイニー。

「ん、なんだ?」

キャスケットで顔を隠し、長い舌を出して半笑いの女。

「あたしはあんた達裏切り者を、懲らしめないといけないんだって。」

女に反論するチェイニー。

「裏切る?僕たちは一度だって奴らの世話になった憶えはないぜ?」

人狼と化した顔をあげる半笑いの女。

「どうでもいいのよ、そんなことっ!」

「あんた達を殺れば、あたしをもとに戻してくれるってよっ!」

困惑気味のチェイニーを見上げるロボ。

「やれやれ、随分イカレたネーチャンだ。どうする?」

「ウウ...ヤキニク...」


成條大フードコート。

温泉卵を乗せたカレーライスを口に運びながら、テレビを見るているシンジ。

「河崎市の路上で発見された外人女性は肩からみぞおちにかけて...」

「瀬田谷区のコンビニ裏で殺害されていた外人男性は...」


カレーライスを口にしながら、思案するシンジ。

これって、あいつらが...

愛理奈さん、何か知ってるんじゃ...

いや、止めよう。わざわざ危ないことに首を突込むなんて...


夕方。公園で帰路に就く奥様達に手を振るチェイニー。

ペットショップのほうを見るチェイニー。

「いよいよかな。」

「ソウダネ。」

ペットショップに入るシンジ。迎える愛理奈。

「あ、いらっしゃい、シンジく...」

愛理奈と視線を切り、ヒメレグナのブースに向かうシンジ。

「っ?」

ヒメレグナを見ているシンジに取り付く愛理奈。

「シンジ君、どうしたの?」

ヒメレグナを見ているシンジ。

「愛理奈さん、今日は何時であがれる?」

「あ、7時、19時かな。」

上目遣いに愛理奈を見るシンジ。シンジに気圧される愛理奈。

「ご飯食べに行かない?」

「え、あ、はい。」


アメリカンステーキ専門店の前の二人。戸惑い気味の愛理奈。

「ここ。」

初デートで行く店じゃないんじゃ...焼肉屋よりましか。

デートかどうかわかんないけど。

フライパンくらいの大きさのTボーンステーキにナイフを入れる愛理奈。

「ヒメレグナはね、他のレグナと違って気性も荒くないし、人懐っこいの。」

切り分けた肉片を器用に2つ重ねてフォークに刺している愛理奈。

豪快さに引いているシンジ。

「きっとあの子もシンジ君のこと気に入ってると思うわ。」

「そ、そうですか...」

450gって...

ステーキを口に運ぶシンジ。。

「愛理奈さんは千代原大学でしょ?なんで成條のペットショップまで来てるんですか?」

ワイングラスを傾ける愛理奈。

「獣医学科がある大学って少ないのよ。全国で17校。」

「動物病院を併設してるペットショップも少ないの。」

ステーキを咀嚼している愛理奈。

「病気の子のお世話だけって言うのも、ちょっと寂しいかなって。」

「元気な子のお相手もしたいかなって、ね。」


Tボーンステーキを切り分ける愛理奈。

「じゃあ、シンジ君はなんで生物心理学なんてやってんの?」

ワイングラスに口をつけるシンジ。

「人間だけじゃなくて、それに接する動物の行動心理を知りたいから。」

Tボーンステーキを口に運ぶ愛理奈。

「行動心理?例えば飼い主に叱られた時に犬や猫はどうするかってこと?」

サーロインステーキを切り分けるシンジ。

「えらくザックリですね。柴犬だったら、ハスキーはどうするかのレベルです。」

ステーキを咀嚼している愛理奈。

「...」

愛理奈の言葉に引きつるシンジ。

「ふふ、ヒメレグナなら、どうなのかしらね?」

「っ!」


店を出て家路につく二人。振らつく愛理奈。

「大丈夫?」

「うん、ちょっとね。」

愛理奈に肩を貸す、気まずそうなシンジ。

「ごめん、調子に乗ってワイン飲ませちゃって。」

「気にしないで、飲んじゃった私が悪いんだから。」

気遣うシンジに妙な期待をする愛理奈。

「ちょっと、休んでいこうか?」

「え、なに?エッチなところ?」

慌てるシンジにしらける愛理奈。

「違うよっ!そこの公園のベンチで休もうよ。」

「なんだ...」

「なんだって言われても...」


公園のベンチで一息つく二人。

「ふう、落ち着くわ。」

「そうだね。」

シンジに寄りかかる愛理奈。

「長い夜になりそうね。」

「え...」

愛理奈を抱き寄せ、体を重ねるシンジ。

「愛理奈さん。」

「え、いや、何?」

何かを感じ取ってたじろぐシンジ。

「っ!」

な、何だこれ?

なんかヤバイっ!?

「何?」

「...いや、何でもないです...」

目を閉じて、舌を少し出してキスを待つ愛理奈に焦るシンジ。

「これでも何にもないの?」

「あ、愛理奈さん...」


チェイニーの声に我に返るシンジ。

「止めろ。」

「え?」

背後に立つロボとチェイニーを振り返るシンジ。

「そのメス猫に取り殺されるぞ。」

二人に気を取られているシンジの腕の中で目をむき、舌を出して獣化していく愛理奈。

「かはあ...」

「な、なんだよ、君たち?」

ロボの言葉で愛理奈を振り返るシンジ。

「食い殺されるぜ、そいつに。」

「え?」

黒豹の愛理奈。長い舌を出し、瞳は金色に輝いている。

「おいで、シンジ君。」

獣人たちの夜はどうなる?

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