プロローグ:天地分け目の戦い3
炎の魔法使いは目を見張った。16年前に戦いお互いに致命傷を負ったはずの傷が、両目を抉り、左手も引きちぎったやったはずなのに、果ては自分自身で噛みきった舌までもが氷の魔法使いの方はというと綺麗さっぱり修復していたからである。
「貴様ァ、何故傷が癒えているゥゥ!?あれほどの傷だったのにぃいいいい!!」
炎の魔法使いは、降り注ぐ氷柱を手のひらから発せられる膨大な熱の放出で全て吹き飛ばし、氷の魔法使いを睨み付けた。
「何を使ったか分からんがぁ、俺だけこんな傷を負ってるんだよぉおおおおおおおおお!!!狡いぞ!!ごろずぅッッ、殺じでやるぅうううう!!!」
氷の魔法使いはというと、ひたすらに笑っていた。
「久しいなぁ炎の魔法使いよ!お前にやられた傷が何故癒えているのか気になって仕方ないみてぇだなぁ?だがそれをお前が聞いた所で意味はねぇ!ここで死ぬ男にそれを言った所でなぁ!!!」
そして発狂する炎の魔法使いの猛撃を全て交わしながら瞬時に炎の魔法使いの両足を凍らせた。無論、それをしたところで炎の魔法使いの熱で1秒も経たずに溶かされてしまうだろうが、1秒もあるなら十分だ。
そうして、空中に展開させた氷柱を再度降り注がせた。今度はさっきより小型で手のひらに乗ってしまうほどのサイズのものだ。当然威力は落ちるが数秒で空を覆い尽くすほどの数を生み出すことができる。
炎の魔法使いが凍りついた両足を溶かすことより先行に氷柱を吹き飛ばす事を考えるのは言うまでもない。手を掲げ十分な力が貯まるまでまた数秒かけ、ようやく熱砲で氷柱を吹き飛ばした。
だが、先ほど凍らせた両足がじわじわと炎の魔法使いの身体を蝕んでいた。
氷柱を吹き飛ばす為に、身体中の熱を一気に手のひらに集中させたためである。
結果、氷の魔法使いは炎の魔法使いが氷柱の対応に追われているその数秒で空中で氷で出来た剣を生み出し、炎の魔法使いの体制の整っていない所に斬りかかることが出来た。