プロローグ:天地分け目の戦い
その魔法使いは炎を扱った。手のひらから噴出される爆発的なエネルギーを炎へと変え見えるもの全てを焼き付くした。
その魔法使いは氷を操った。全身から噴出する冷気で空気さえも凍らせた。
時は、2XXX年―――――――この、全く異なる能力を持つ魔法使いが何の因果かばったり出くわしたことから世界の様相はガラリと変化を遂げる―――――――――――――――――――
二人の魔法使いは初め、お互いを自分と同様のものと認識した。
自分と同等レベルの力を持ち恐れを抱く程の相手は初めてだったのである。
―――――――――だが、やむなくして恐れは敵意に変わる。
全世界を束ねる程の力を持つ自分に匹敵しうる存在。
今、ここで消さなければならない―――――
言葉はいらなかった。お互い持ちうる力全てをぶつけあい、地を引き裂き、雲を吹き飛ばし、海を凍らせ、蒸発させ、炎が空を覆えば、その上を氷の壁が覆った。
そうして二人が戦い初めてから約3年―――――――――――――――――
長き戦いを制したのは炎の魔法使いだった。お互いの全力を尽くしきったギリギリの戦いだった。
負けた氷の魔女はボロボロになった体で敗走した。生まれて初めての敗北。左手を失い両目を潰されながらも、屈辱で舌を噛みきり顔を爪で引き裂きながら復讐を誓った。
他方、炎の魔法使いも無事ではない。片目を潰され右手を失っていた。だが男は空に左手を突き上げ掴んだ勝利の栄光に吠えた―――
「見ているか世界中の神共よぉおお!勝ったぞぉおおおおおおお!!!俺こそがこの世界の支配者だ!!!!!!」
こうして、氷の魔法使いを打ち破り、世界の支配者になった炎の魔法使いは氷の魔法使いとの戦いで荒廃した世界の生き残りの民に残虐な仕打ちを行った。
顔などから判断し、奴隷と人民に生き残った人類を分け、奴隷に対しては家畜同然の扱いをするよう指示した。また自分にとって不愉快にさせるような言動を行うものも次々に処刑した。圧政的な恐怖政治を敷き人類を管理していったのである。当然、奴隷に対してだけでなく人民にも逆らう者がいるようならば容赦はしなかった。
炎の魔法使いが支配者につき、一年が経つころには処刑された人間たちの頭蓋骨で道が築きあげられた。
逆らう者達への見せしめのためである。