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黄昏のきみ(仮)  作者: 鼻クソ王子
2/4

2話 旅立ち

読んで頂けたら幸いです。


召喚神機=AIとオートマのマシーン

仮想神機=マニュアルのマシーン


紛らわしいですよね(笑)

6年前の召喚災害(マキナスタンピード)と呼ばれた災害の爪痕も癒え村は平穏である。


城門から1人の少女が必死に駆けて来る。

歳は幼く綺麗な金髪を髪止めで纏めあげ利発そうなその容姿は将来はさぞかし美しくなるだろう。



「はぁ、はははっ。にっ兄様、まっ待ってくだしゃぃ!」



幼女が追いかける先には誰も見当たらない…………誰もだ。

しかし地面を見れば地表から僅か10センチ程、空中に浮き上がる黄土(カーキ)色の召喚義手(オートバンド)と呼ばれる仮想神機(レンタルマギナ)が彼女の1メートル先を移動する。


幼女にしてみれば自分の腰程しかない、召喚モドキが自分よりも足が速い事を認めたくないのである。



「こっこの、ちんちくりんめっーーー!」



幼女の罵倒も何のその…。

まるで意志がない、いや仮想神機(レンタルマギナ)たちには召喚神機(エクスマキナ)の様に異界(ゲヘナ)から呼び出す事も必要ない魂と呼ばれる様な感情がないため、魔力(マナ)さえ有れば誰も動かす事が出来る。


ただし、ここまで速く操るのにはそれなりの魔力(マナ)量と操縦技術(テクニック)が必要ではある。



※数分後

「や、やっと、追い着いたです。はぁ、はぁはぁ……。」


息もたどたどしく村長宅から城門まで俺が毎日欠かさず召喚師になるための訓練に付き合いたいと言ったのがそもそもの始まりだ。



「はい、お水だよ。ゆっくり飲みなさい。」



幼女は奪う様に、木製のコップを受けとり流し込む。



「んぐ、んぐ……けっほっけっほ!」



勢い良く飲み込だため噎せたようだ。



「ほら、言わこっちゃない。訓練はどうだった?」


「兄様の召喚義手(オートハンド)はズルいです。前に村長が見してくれた時は、歩く早さと同じだったのにです?」



村長と言うのは俺の父、トーマスの事で人口200人の村を預かる村長にして名ばかりではあるが貴族である。父も軍役経験があり自身も召喚師であるが魔力(マナ)量が少ない為、召喚義手(オートハンド)を動かすのがやっとである。



「そりゃ~出来て当たり前だ、俺は父ちゃんの魔力(マナ)量の10倍くらいあるからな。」



魔力(マナ)量は子供に遺伝する。

それが常識である為、身分の高い者ほど召喚師として大成し貴族が大半を占める。


「兄様は、凄いです。早く、ノームも動かせるようになりたいです。後、兄様は言葉使いが悪いです。いつも、ノームが母様に叱られるです。」



ノームは母親は、元々は母様の侍女である。

父の元に嫁いだ時に1人だけでは心配だからと、わざわざ一緒に移り住んだと聞いている。



「いいんだよ、こんな田舎に貴族も身分も関係ない。」


「兄様は、将来ここの村の長になるのです。そして、ノームがお嫁さんになるから心配ないのです。」



えっへんと、真っ平らな胸を張り自慢する。



「お前が俺よりも大きくなれたら結婚してあげるよ。」


「絶対に、ぜーたいに約束ですよ。兄様はいつもノームを子供扱いするのです。次、嘘ついたら本当に怒るです。」



何故、子供がこんな事を言っているのかは簡単だ。

父ちゃんが、貴族なら許嫁か幼なじみが一人や二人居て当たり前だろ?


近所に住んでいた侍女の娘ノームがピックアップさるたと言うだけだ。しかし、問題がある。ノームの母には旦那がいないのだ。噂では父ちゃんがノームの父である可能性が非常に高く、何とも複雑な心境である。


近親感と言う意味では妹みたいで可愛いいと思っている。



「ほら、行くぞ。今日は麦の収穫を手伝わないといけないのだから急がないと朝飯食べ損ねる、大きくなれないぞ!」


「兄様、待ってです。朝飯いっぱい食べて大きくなるです。」



手を繋ぎ自宅に向かう様は仲の良い兄妹である。



※貴族の朝食風景

「「「「イタダキマス」」」」


両手を合わせて、お祈り言葉を唱える。

食卓には茹でた卵、黒パン、昨日の残りのスープといつもと変わらないラインナップだ。


これでも村で1日3食も食事にありつけるのは貴族である村長宅だけである。


食卓には、俺、父ちゃん、母様、ノーム、ノーム母と以前は祖父が居たのだが……。


「ルーク。今日、夜にお前に話がある時間を空けとけ?」


「はーい。」


好物のゆで卵を一口で方張り咀嚼する。それを見たノームが真似をして口いっぱいに方張る姿は森の子リスを思い出す。


「ノーム、はしたないですよ。」


「はい、ごめんなさいです。」


「いいじゃない、クレア。食事くらい好きさせてあげましょうよ。ルーくんだってその方がいいでしょう?」


緩やにウェーブはする金髪は家事をしていても衰える事はなく、少し垂れ目なおっとり美人が俺の名前を呼ぶ。ルーくんとは呼ぶ女性は俺の姉ではなく母親だ。母様に、その呼び名は辞めて欲しいとお願いしたらマジ泣きされた。「ルーくんはママの事、キライになったの?」と言われたり「ルーくんは天使なのー。」と俺から見ても子煩悩である。


「奥様が言うのであれば……。ノーム、好きに食べなさい。それと将来、ルーク様の奥方になりたいのであればテーブルマナーもしっかり覚えなくてはいけませんよ。」


クレアと言う女性は、ノームの母である。

ノームに似た金髪で母様と違いストレートを後ろ髪でお団子状に束えていて目が細く知性的に見える。母様が嫁いだ際に家事が何も出来ない母に代わり家事全般の指導をしたのは彼女だと言う。


母様は包丁を刃と取っ手を逆さに持って調理場に血だらけ惨状を造り出した経歴がある為、今だに包丁だけは握らせて貰えないらしい。


料理も上手く、美人でいい人ではあるのだが……。

ノームを俺の妻にする為、あの手この手とノームを追い起てるのは正直、どうにかして欲しい。



「はーい。奥様、今日もご飯が美味しいです。」


「あらあら、ノームちゃんは可愛いいわね。早く、ウチの子にならないかしら?」



母様、俺にその話を振るのヤメテ。



「羨ましいなー、許嫁と幼なじみに幼妻まで1人で2度、いや3度美味しい。鈍感系主人公に一直線だなー。」



ニヤニヤと笑いながら黒パンをゴリゴリと噛み砕く父は、村長とし若いながら数年間で村の人口を100人から200人に増やし数々の開拓や特産品など開発した功績で出世したらしい。


「父ちゃんの都会語は何言ってるのか、わからないよ。」


「スマン、スマン癖でなー。」



父は若い頃、祖父と共に都会で暮らしいたらしい。その姓でたまに都会語が出て来るので何となく単語は理解出来る様になった。

例えば、排出率上昇(ピックアップ)本気(マジ)とかである。



「それよりもルーク、何とかならないか?」


「父ちゃん、何が?」


「食事の最中ぐらい鍛練は辞めろ!」


「鍛練辞めたら食事が食べれなくなる。」


「いや、自身の両手を使いなさい。何の為にその両手はあるのか考えなさい。」



彼の言う事は酷く正しい。

ルークことルーカスは鍛練と称し召喚義手(オートハンド)で自身の両手の代わり使い食事を続ける。器用に人差し指と親指でスープを掴み、お皿から自身の口へ汁を運ぶ。これだけでも、都会で見世物として大道芸で食べていけるレベルである。


ルーカスは知らないが仮想神機(レンタルマギナ)は誰でも使えると利点にばかり目が行くが反転、魂、感情がないので操作に補助がない。召喚神機(エクスマキナ)であれば魂、感情があるので操作に神機自体が誘導してくれるので操作は比較的楽である。


例えば、ガラスのコップを持のに召喚神機(エクスマキナ)であればコップを持つてと命じ操作するだけだが、仮想神機(レンタルマギナ)はどこのコップを、どれだけの力で、どうやって持つのかとここまで技術が必要になるのだ。



数年前に確立した新技術である。



「よっし!食事が終わったら村長の仕事をやるぞー。」



父ちゃんは振り切っている。

召喚災害(スタンピード)が去り残ったのは野生神機(ノラマキナ)に荒らされた麦畑と祖父の死だった……。


父ちゃん、母様は祖父の知らせを聞くと一目を憚らず大泣きをした。理由は簡単、一生では返せない大恩があるそうだ。


本人たちが教えてくれないのでクレアに聞きに言ったが教えて貰えず、ノームと今度一緒に野山にデートに行くからと約束したら簡単に教えてくれた。


母様の実家は当主が王国に対して謀叛した為に一族労組、打ち首になるはずだった。当時、父ちゃんと恋仲であった母様を祖父は今での武勲全てと名声を捧げる条件に、母様だけ助命して貰ったとなんともびっくりな内容であった。


おっと、話がそれたな。



「おーし、今度はこっちの畑を耕すぞ?切り株が邪魔だから仮想神機(レンタルマギナ)で終わらしちゃおう。ルーク、準備はいいな?」



おっと、俺の出番が来たようだ。



「いつでも大丈夫だ。行けっ、仮想神機(アーケロン)!」



召喚義手(オートハンド)は切り株の根っ子を掴むと引きずる様に移動する。すると、地中深くまでに根を張っていた切り株はまるで野菜を収穫する様に簡単に取り除いた。



「おー凄い凄いべさ。」

「流石は村長の息子さんだべ。」

「オートハンドがあるだけで仕事が捗るべ。」



村の大人たちは最初、復興支援金の半分でこの仮想神機(レンタルマギナ)を購入した事にもう反対した。


村人の反応は凄まじく、復興支援金は1年だけなら村人の全員が食い繋げれるだけの大金である。それを当時、貴族の玩具と認識されていた召喚義手(オートハンド)を復興支援に利用する計画は直ぐに結果を出した。


力がある、疲れない、それに可愛いいと村からの評判はすこぶるいい。


「ルーク、次は収穫の手伝いだ。行くぞー。」

「はーい。」


引っ張りだこである、忙しいが毎日が楽しい。何時しか、召喚師になると言う目標はあったが何をすれば召喚師になれるのか、わからなくなってたいた。



…俺はどうしたらいいのだろう。





※村長宅

「くーう、この一杯の為に俺は働いてるんだ。」



自宅に帰るなり、父ちゃんは一杯初めていた。村が発展したお陰でお酒が毎日飲める生活になった事を喜んでいた。



「父ちゃん、俺も飲みたい。」


「駄目だ、お酒は20歳になってからだ。子供の頃に飲むと成長に良くないと都会では言われている…駄目、絶対!」


「ズルい。俺も働いているのに……。」


「そう言われると思って、お前にはこれだ。」



渡された小樽には、果汁を絞った水なのか柑橘類の香りがする。



「ちぇっ、また、果物水かよ。」



ーー!?ーー



ぐびっ、ごくごく…プッハぁ~



「父ちゃん、美味い。喉がシュワシュワする。」


「美味いだろ?今、村で作っている名産品だ。」



タっタタタタタ…奴がくる。



「何、なに、兄様だけズルいです。ノームも飲みたいです。」



五月蝿いので小樽からコップにつぎ渡す、幼女は躊躇なく含むが口の中をシュワシュワする味覚が俺とは違ったのだろう。


ぶぇえ~と、口に含んでいた液体を地面に吐き戻す。



「にっ兄様、舌がビリビリして辛いです。」


「「あははははっ~。」」


「こら、ノーム。令嬢(レディ)が口から物を吐き出すんじゃありません。」


「はひ。母様、すみません。」



こうして毎日、楽しく夕食の時間は過ぎていく。





※6年前の王国首都

王国の首都にある城に1人の男性が登城する。

男性の年齢は見た目から30歳にまだ足を踏み入れてはいないのだろう、それほどに若く見える。


黒目黒髪、王国には色んな人種がいるが黒髪は比較的少ない部類である為、宮廷なでは目立つ。



「面を挙げよ、そちがマーカスの息子か?」


「はっ、黄昏の騎士マーカスの嫡子トーマスと申します。陛下に拝謁賜る機会を獲ました事、一生の自慢にさせて頂きます。」


「うむ、大いに自慢せよ!余も決して暇をもて余している訳でもなあか。そなたの陳情を申してみよ。」


「はっ、僭越ながら申し上げます。祖父の黄昏騎士(マーカス)様の礼装を陛下にご返却したく本日はお持ちしました。」


「ほう…。礼装ならそちの家宝なり売り飛ばすなり出来たはずなのにどうして返却するのだ?」



王国近衛騎士団(ロイヤルナイツ)の礼装は材料、技術ともに高度なため量産が出来ないためとても貴重である。だから、目の前の男性の陳情に納得が出来ずにいる。



「私の領地は吹けば飛んでしまう様な小さな領地であり、家宝にする様なら賊に襲われ、売り払おうものなら他の貴族様に買い叩かれ反感を抱かれるでしょう。なら、陛下にご返却し王国に貢献した方が良いと考えた次第でございます。」


「うむ、わかった。建前だけではなく望みも申せ、無欲過ぎても他に警戒されるぞ。」


「では、復興支援金と言う型で王家からお金を頂けないでしょうか?」


「それぐらいなら良かろう。では、以上とする。」



黒目黒髪の貴族が去ると陛下と呼ばれた男は溜息を溢す。

近くにいた、御付き者はいつもと違う反応に驚きを露にする。



「そうか…あやつが死んだか。忠義厚く、平民から貴族に上がり次期近衛騎士団長とまで呼ばれていたが1人の命を助けるために全て名声、地位を捨てた。正に、騎士を絵に描いた様な老人であった。」



先程の男も、召喚師してよりも経営者としては有能そうである。支援金としての援助金だけでなく、王家からとなれば他の貴族からの横槍が入らないと考えたのだろう…。



王国近衛騎士団(ロイヤルナイツ)に伝えよ、黄昏の称号は一時的に凍結せよ。余の代ではあの男以外、その称号が相応しい者は現れんであろう。それと召喚災害(スタンピード)を発生さした勢力の監視を強めよ、どこの国が黒幕かはっきりするまで泳がせておけ…。」



ここ何十年の平穏は絶妙なパワーバランスで保っているのである。



「戦力を増やさねば戦争が起こりえる…。」





※村長宅の執務室、兼書斎、兼趣味室

「父ちゃん、話って何?」


「お前の将来について話がしたい。15歳になったのだから、もう考えなきゃならんだろう?」


父ちゃんの真剣な顔は普段から想像もつかないぐらい凛々しく威厳がある。



「そう……、だよな。」


「お前も、このままでは中途半端ではいけないだろうからな。」



同年代の子供たちの大半が結婚して独立している。話があるとは、そう言う事なのだろう。



「わかったよ。ノームと結婚すればいいんだろ?」


「はぁ?お前は何言ってんだ?」


「えっ!村長を継げとか、ノームと結婚しろって話じゃないのかよ?」


「違ぇーよ。何でそんな話になるんだよ?まだ、15歳だろ…結婚なんて18歳以上になるまで俺は許さないからな!ルーク、お前は祖父(ちちうえ)みたな召喚師に成りたいんだろ?」


「何で知ってるんだよ…。まだ誰にも言ってないのに。」


「ルーク、良く頑張ったな…。」



ポンっと載せられた大きな硬い手のひらが俺の頭部触れる。



「毎日、お前が必死になって鍛練してるのを、ずっと見てたぞ。雨日も雪日も、誰に何と言われても諦めず頑張てたの知ってるんだ。でも、父ちゃんは召喚師の才能は何一つ持ってないからルークに何も教えてやれなくて本当にゴメンな…。」



俺の中で何かが溢れる、それが涙だと気が付くのに時間がかかった。



「あれ、何だ、何で涙が…。」



父ちゃんの優しい笑顔が涙で滲み見えなくなる。



祖父(ちちうえ)が言っていた…。努力した者は報われなければならない。頑張った者には褒めて上げろって、今になって思いだしたよ。」


「うっぐ…くっ」


「だから、父親としてルークに俺は道を示したい。祖父(ちちうえ)は昔、王都にある召喚師養成所(アカデミー)を卒業後に王国近衛騎士団(ロイヤルナイツ)に入団したって話ていたのを聞いた事がある。」


召喚師養成所(アカデミー)…。」


「まずはそこを卒業しろ!失敗したら戻って村長やればいいさっ?後、ノームだけは絶対に嫁に貰えよ?」


嘘とも本気ともとれる父ちゃんの冗談でお開きなった、俺は父ちゃんの子供になれて良ったと再確認したのだ。





※半年後 定期便の停車駅

「ルーク、忘れものはないか?」


「あー。着替えと護身用のナイフと、白銀一角(これ)ぐらいだしな。」


「相変わらず荷物少ないなー。そんなんじゃ、モテないぞー。」



父ちゃんのジョークに反応する様に女性陣が見送りに来る。



「いいのですよ、ルーク様にはノームがいるので浮気したらどうなるかわかっておいでですよね。」

「そうよ、ルーくんにはノームちゃんがいるのだから十分でしょう。女の子を泣かす様な事はママ許しません。」



厳しい口調に寂しさを浮かばせたクレアと泣くのを必死に我慢している母様と順番に抱擁する。



「それに次に戻ってくるのは何年後になるかわからない。手紙は毎年、必ず出します。」



ノームの姿が見えない。

あいつの事だから荷物に紛れているのだろうか…。



「あれ?ノームがいないんだが?」



母様とクレアの間から貴族の令嬢と見間違うお洒落したノームの姿が現れる。



「にっ兄様、似合いますか?」


「おう、貴族の令嬢と言われても驚かないよ。似合ってるな、どうしてその服を選んだんだい?」


「この服は、今年の生誕祭(おまつり)で兄様と一緒に回るために用意して貰った服なのです。 次、いつ一緒に回れるかわからないから今日着て来たです。」


「似合ってる可愛いいよ。でも、ノームの事だから一緒に行きたいとだだっ捏ねると思ってたよ。」


「本当はノームも一緒に行きたいです。でも、兄様が召喚師になるための勉強を邪魔をしたくないです。奥様から良き妻は夫を家で待っているものだって教わったのです。」


「そっそうか、ありがとうなノーム。」



外堀がドンドンと埋められている。



「兄様、屈んで目を瞑って欲しいです。」

「わかったよ。」



ちゅっ…


頬に来ると思った感触は見事に裏切られ、唇に唇を押し付ける様な接吻(キッス)が触れる。



「なっ何するんだよ、ノームっ?」


「続きは帰って来たらです。にっしし…。」



後ろでは、母様、クレアが良くやったと叫んでいる、父ちゃんに至っては今夜は赤飯だな~と言っている。



定期便の馬車道が動き出す。



「じゃぁ、父ちゃん、母様、クレア、ノーム行ってくる。次、会う時は召喚師になってるはずだから楽しみにしててくれ!」


「行って来いっ、自慢の息子よ!」

「ルーくん、身体には気を付けて、変な人には着いて行ってはダメよ。」

「ルーク様、ノームも私も無事でのお帰りをお待ちしてます。」

「兄様、手紙を楽しみにしてるです。」


「必ず戻って来る、待っててくれ!」



こうして15年間過ごした村から王都に向け出発する。





※始まり街へ向かう街道

まるで大理石から切り出した様な白真珠(ホワイトパール)色の馬車には金で彫られた細工が至るところに施され、一目で見る者に高貴な身分の者が乗車していると知らしめる。


馬車の周りに騎士たちが数十人も護衛をしているので、只の貴族がお忍び移動している様には見えない。



「目的地までは後、どれくらいかしら?」



美しい金髪を腰まで伸ばし、窓から入るそよ風を嬉しそうに浴びて無邪気にほほ笑む様は年相応の淑女である。



「後、半日もせず到着するでしょう。始まりの街には各都市と主要陸路が集中していて人口だけなら王都とひけをとらないので絶対に私や護衛からはぐれないで下さいね。」


「わっわかってるわ!でも、行ってみたい観光スポットがあるの?ゼッペロンの丘、生誕の噴水でしょう。後、流星飴を食べたいわね。」


「食べものなら、職人を王都まで呼びつければいいではないですか?観光に来たのではないのですよ…。」


「サラリオーシャっ。あなたは、なーんにもわかってないわ。名物はその場所でしか食べられないから価値があるの、そんな事もわからないの?」



今にも飛び掛かりそうな勢いで熱弁するも、自身の立場が立場だけに観光をする余裕などないとそう結論付けられると悔しそうに拗ねてしまった。



「いいわよ。景色だけでも味わうわ、これぞ旅行の醍醐味だものね。」


付け加えるなら旅行ではなく慰問なのだとは言えなかった、これ以上にへそを曲げられてしまうと公務に支障を与えかねない。


そんな少女は王国の第三王女である。

名をルルタイエ・ガイーシャといい、私が仕える姫君だ。


幼少の頃より御友人としてお側勤(そばづと)めしている。

野菜が苦手で肉ばかり好み、紅茶には牛乳(ミルク)を入れなければ飲めない上に夜抱き枕がなければ寝れないなど……。



(んっ、仕える値するか?っと感じてしまうぐらいにダメな所が目立つが、こんなダメな王族が世の中に1人くらいいても良いだろうと感じてるくらいには忠義(あいじょう)がある。)



「ねぇ~、見て見て!大きなお腕が路を作っているわ。」


「ルル様、もしかしたら不埒な輩かも知れないので中にお隠れ下さい。」


「そんな訳ないわ、この国で働く者に無礼を働くのが王族の務めではないはずよ?場所に止めて労いだけ伝えましょう。」



近づくにつれ、仮想神機(レンタルマギナ)の全長が露になる。高さ3メートルは在ろうか、丸太ぐらいの太さの腕の召喚義手(オートハンド)の大型版であろう。器用に地面に人間が持つのがやっとな大きさの煉瓦を押し込め、人間がローラで地面を整地している。



「凄いスピードで整備が進むものなのね、素晴らしいわ。流石は、始まりの街ね。」


「はい、私も召喚師を目指すものとして感動を禁じ得ません。」



まだ、導入したばかりの仮想神機(レンタルマギナ)が稼働しているのにも驚きはしたが、それを使役している労働者が私と変わらないぐらいの青年なのにも興味を持った。


労働者の責任者に形式ばかりの挨拶と差し入れをして私たちの馬車は始まりの街に到着するのである。

読んで頂いてありがとうございます。


召喚義手のイメージはド○クエのマドハンド

大型召喚義手は大型の関節が肩まであるマドハンドみたいなイメージです。

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