価値だけの世界
この世界では、全てのものにそれ相応の値段が付く。
それは、人も例外ではない。年齢を重ねるたびに価値は上がり、老いるごとに価値は下がる。
そして、この世界ではその価値だけがすべてを決めた。結婚、就職活動、才能。
野球の監督が人の価値を見れば、ポテンシャルを見ることができる。先生になれば、生徒の学力が分かる。そのため、価値が下がるごとに補習を受けさせられる。
そんなディストピアでも人は本当に恋をすることができるのだろうか。
僕は見た、彼女の価値の高さを……私は見た、彼の価値の高さを……。
日を追うごとに彼女の価値は上昇するのに、僕の価値は上がらない。
初めて見た時、電流が体中を駆け巡ったような感覚を覚えた。学校の授業中でも時折彼女を見つめてしまう。
未だにちゃんと話したことがない。見ているだけで彼女の価値は高まり続ける。
日を追うごとに彼の価値は増え続ける。けれど、私の勝ちは上がらない。
初めて見た時、花が咲いたような感覚があった。けれど、彼とは接点がなく話しかけることができない。一度も目線を合わすことができない、一度でいいから目線を合わせてみたい。
そんな願望だけで彼の価値は上がり続ける。
一度でいいから、彼と……一度でいいから彼女と
話してみたい。
どうして君はそんなに価値が高いのか、それが知りたい。
どうしてあなたはそんなに価値が高いのか、聞いてみたい。
けれど、釣り合わない価値では、同じクラスにいたとしても話すことすらできない。そんな世界だ。